2025
07/04
身長が低いのは病気なの?
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小児の病気
社会福祉法人聖隷福祉事業団聖隷佐倉市民病院
小児科副部長兼臨床研修センター長
小児の病気⑤
身長が低いことは、遺伝や個性がその大半を占めていますが、中には何らかの病気が隠れていて治療が可能または必要になることもあります。園や学校では誕生日が約1年違う子が同学年にいますので、学年による比較は困難なこともあります。周りの言動(下級生から、からかわれたり頭をなでられたりする、大人が子ども扱いする……)などにより、背が低いことで心を痛めている子がいるのも事実ですので、治療可能な低身長を早期発見し治療の選択肢を提示することも必要と考えています。
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身長の伸びに関わるもの
身長の伸びを左右するものは年齢によって異なります。1歳までは栄養、1歳から思春期までは成長ホルモン(Growth Hormone; GH)、思春期(二次性徴期)は性ホルモンが主体です。十分に性ホルモンが分泌されると成長軟骨といわれる部分が骨化し成長が止まります。そのため、極端に二次性徴が早くきてしまう思春期早発症(男児であれば9歳までに精巣が大きくなったり10歳前に陰毛が生える変化、女児は7歳半までに乳房が発達してくるなど)といって、その時は高身長になりますが、最終的に骨端閉鎖が早まり低身長になることがあります。また、二次性徴発来がゆっくり(いわゆる“おくて”)の場合、思春期に低身長だったとしても骨端閉鎖が遅れる分骨の成長期間が長くなり、将来高身長となる場合もあります。中学の時小さかったのに、成人式で会ったらみんなより背が高かったなんていうエピソードはよく聞きますね。その他低身長の原因疾患として、甲状腺機能異常や染色体疾患、脳腫瘍、心疾患や腎機能異常(腎不全や電解質異常)、心理社会的要因も考慮します。
お子さんの低身長が気になる場合
もし低身長が心配な時は母子手帳にも表はありますが、インターネットなどで成長曲線を印刷し、今までの身長・体重の変化をより細かくプロットし、①現在の身長が-2.0SDの線より上にあるか、②これまでの身長の伸びは同じ線上で推移しているか、を確認します。上記以外にも背の順が一番前で、次の子と5cm以上差があったり、成長曲線上で年間の成長の伸びが4~5cm以下であれば受診を考慮してください。血液検査や手のレントゲン検査などを実施し、詳しい検査が必要か判断します。
詳しい検査の代表は、GH分泌刺激試験という検査です。GHの分泌を促す薬剤を内服または注射し、GHがしっかり分泌されるかを調べます。2種類の分泌刺激試験をしてもある値までGHが上昇しない場合には「成長ホルモン分泌不全性低身長症」として、本人やご家族が希望されればGH製剤を自宅で注射する治療を開始することができます。週に6~7日自己注射を行う治療がメインでしたが、現在は週1回注射の薬も登場しています。骨年齢(手のレントゲンから計算します)が男子で17歳、女子で15歳に達したとき、年間成長が1cmを下回ったときなどは治療終了となります。しかしGH治療により身長が平均値に達するまで伸びることは少なく、治療をしないで予測された最終身長の+1SD程度改善する(最終身長予測が-2SDであれば、治療により-1SDくらいになる)といわれています。
また、出生週数の平均身長体重より極端に小さく生まれ、現在も-2.0SD以下の場合、SGA(Small for Gestational Age)性低身長を満たせばGH分泌刺激試験を実施しなくても保険適応でGH治療を行うことができます。
夜しっかり眠ることとバランスの取れた食事を摂取することは治療の有無によらず大切なことです。“寝る子は育つ”とはよく言ったもので、GHは睡眠数時間で上昇し、起きると低下しますので十分な睡眠は成長にも健康にも大変重要です。また現在は背が伸びるとうたっているサプリや食品を多く見かけるのですが、身長が伸びる医学的根拠がある物は残念ながらありませんので、ご注意をお願いします。