2025

11/05

薬剤師の役割を理解し、上手に薬局を活用する

認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 山口育子
2002年4月に法人化したNPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの専務理事兼事務局長を経て、2011年8月理事長に就任。社会保障審議会医療部会をはじめとする数多くの厚生労働省審議会・検討会の委員を務めている。2018年6月20日に『賢い患者』(岩波新書)刊行。広島大学歯学部客員教授。ラジオNIKKEI「賢い患者になろう!」パーソナリティ(毎月第4金曜17:20~17:40)。

賢い患者の知識と心構え(3)

「薬剤情報提供」など、5つの役割

医師や歯科医師は診断や治療を行い、薬の情報提供や管理は薬剤師が行うという役割分担で患者の薬物治療を行うことを「医薬分業」と言います。1974年を「医薬分業元年」として進められ、1990年には1割程度だった医薬分業率が、2024年度には82.1%に及んでいます。多くの患者は、医師が発行した処方箋を受け取り、薬局で薬を調剤してもらうわけです。この薬局薬剤師の役割について、あまり患者に理解されていません。その結果、複数の医療機関にかかっている人が、医療機関のすぐ近くの薬局を利用して、お薬手帳も複数冊持っている――という事態が起きているのです。

私は薬局薬剤師には基本的な5つの役割があると伝えています。まずは、「薬剤情報提供」です。これは薬剤師法の義務であり、特に2013年に薬剤師法が改正されてからは、単なる情報提供ではなく「薬学的知見に基づく指導」が求められるようになりました。より患者に向き合って、患者を理解した上での情報提供が求められているわけです。

次に大切な役割が「薬剤服用歴管理」「疑義照会」です。薬剤服用歴管理とは、患者がこれまで使用してきた医薬品の履歴や、副作用やアレルギーが生じた内容を記録保存しています。そして、患者が持参する処方箋と過去の記録をチェックし、以前アレルギーが生じた薬が出ていないか、別の医療機関で出されている薬と重複していないか目を光らせているのです。そして、何か問題を感じたら、処方した医師や医療機関に問い合わせをする――それを疑義照会と言います。

つまり、この重要な役割を薬剤師が果たすためには、複数の医療機関にかかっている場合、それらの医療機関で発行された処方箋を1カ所にまとめる(一元管理と言います)必要があるのです。どうしても事情があって、1カ所にまとめることが不可能な場合は、せめてお薬手帳を1冊にまとめ、行く先々の薬局で使用している薬を全て把握してもらうことが大切です。

次に「残薬整理」です。薬の飲み残し、使い残しがあると分かれば、叱られるんじゃないかと心配する人がいます。しかし、なぜ残ってしまっているのかを薬剤師に理解してもらうことが重要なのです。例えば粉薬が苦手で飲み残しが多いと分かれば、「この薬は錠剤もあるので、次回からは錠剤にと医師に提案しましょうか」と考えてくれるのが薬剤師の仕事なのです。

そして5つ目が「服用期間のフォローアップ」です。これは2019年に薬剤師法に盛り込まれました。全員ではありませんが、新しい薬や注意が必要な薬が出された場合、数日後に「服用を始めて症状は緩和されましたか? 何か副作用のような症状は出ていませんか」と薬剤師から連絡が入り確認してくれます。このような役割を果たしてくれる薬局、薬剤師を患者が選ぶ意識を持つことが今の時代には大切です。

今は入院治療よりも外来治療が中心になってきています。在宅に取り組む薬局も増えてきています。だとすれば、安心できる薬局を探すことも重要な視点の一つなのです。

ジェネリックに変えることは不安という人は……。

そのような薬局をうまく活用する方法があります。かかりつけ薬局を見つけて、薬の一元管理をすることはこれまでに述べたとおりです。次に、処方せんの有効期間は4日間ということを知っておきましょう。自宅近くにかかりつけ薬局を見つけておけば、買い物に行くときに立ち寄って、「今から買い物に行くので、帰りに寄ります」と言っておけば、待ち時間はゼロにすることができます。ただし、疑義照会の必要性が生じることもあるので、医療機関が休みの日は避けるという工夫は必要です。

また、最近は医療費を節約するために、ジェネリック(後発医薬品)の使用を推奨されます。一つの新薬につき、複数のジェネリックが発売されていることが多く、薬価も異なります。「私の薬にはジェネリックはありますか?」と聞いて、あると分かれば、「何種類のジェネリックが出ているのですか? こちらの薬局ではそのうちのどれを選んでいて、その選ぶ基準は何ですか?」と聞いてみましょう。明確な選定基準を伝えてくれれば、ポリシーを持って選んでいることが分かります。

また、例えば30日分処方された薬を一気にジェネリックに変えるのは不安を伴う人もいるでしょう。そのような場合“お試し調剤”のように、5日分や1週間分だけジェネリックを試してみて、問題なければ少し追加料金を払って残りの薬を調剤してもらうということが可能です。このような薬剤師の役割を理解し、うまく薬局を活用しましょう。

フォントサイズ-+=