2025
04/02
知っておきたい! 4月からの「育児介護休業法」改正とその上手な活用の仕方
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介護
NPO法人となりのかいご・代表理事
隣(となり)の介護(36)
2024年5月末に育児介護休業法の改正案が衆議院本会議で可決され、2025年4月より順次施行されていきます。
また、2025年は団塊の世代(1947~1949年生まれ)が後期高齢者以上(75歳以上)になります。その結果、団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)以降の人たちにとって、仕事と介護の両立が今後は社会的に大きな課題になると考えられています。働きざかりの人たちの介護離職を防ぐために国も大きな危機感を抱き、動き出したというわけです。
そこで、改正のポイントと「育児介護休業(休暇)」の“介護における”上手な使い方とダメな使い方をお伝えできればと思います。
今回の改正で仕事と介護の両立に関係するのは主に下記の4点です。
①労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付ける。
②労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付ける。
③介護休暇について、勤続6カ月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する。
④家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。
Contents
事業主によるプッシュ型の事前周知の必要性
①のように家族介護に直面した従業者に対してのサポートだけでなく、②の介護に直面する前の従業者に事前周知や雇用環境整備をすることを義務化されたことが、今回の改正の注目するべき点だと考えています。
事業主への提言として、直面するまでは当事者意識を持つことが困難で、情報収集や心構えができないままに突入しがちなのが家族介護です。結果、家族で介護を抱え込んで介護離職を選択せざるを得ない状況に陥ります。そこで、公的介護保険の保険料が給与から天引きされる40歳になったタイミングでの事前周知などが、仕事と介護の両立につながる可能性が高くなると考えられています。
テレワークが「努力義務」となった理由
④の家族介護へのテレワークの活用ですが、従業者が選択できるよう義務化するのではなく、あえて努力義務となりました。一時的であればテレワークが有効な場面もあります。テレワークをしながらの介護が常態化すると、仕事か介護かで縛られることになり、過度な負担になる可能性があります。
「家族がいるから、デイサービスに行かない」となってしまったり、コロナ禍でのテレワークで、親を見守りながら仕事をしてきた結果、出勤要請があっても親の様子が心配で家を離れられないというケースもありました。親の介護にテレワークを活用する際は、本当に両立につながるのか慎重に判断していく必要があると考えています。
介護休暇・休業の拡充のリスク
今回の法改正では、5日間の介護休暇や93日間の介護休業の延伸などによる拡充も議論されていましたが見送る結果となりました。これらの制度は、あくまでも介護体制作りのために活用するものとされています。休む日数が増えると、結果として直接介護に使われてしまう可能性が高くなってしまうのです。
事前周知で「地域包括支援センター(公的な相談窓口)やケアマネジャーと、介護が始まったときや状況が変化したときのための体制作りを準備しておく」などのアドバイスを受けていれば、いざという時も焦らずに、体制作りの手続きをするための休暇と取ることができます。事前の準備により介護関係者とは書類の郵送や電話のやり取りを活用するだけで、仕事を休まずに体制作りに至ったケースもあります。こういった話からも、現時点では休暇休業の拡充よりも、事前周知が有効ではないかと考えています。
「育児」と「介護」はココが違う!
「育児介護休業法」は「育児」「介護」が並べられ、どちらも大切な家族のお世話という共通点があるものの私は以下のようにそれぞれは異なるものとして考えています。
―育児―
・出産時期や入園・入学など、ある程度のことは予測をして対策を立てられる
・子どもの成長により、親の手を離れることが増える
―介護―
・終わりが見えづらく、変化の予兆を見分けづらく、そのたびに対策を立てなければならない
・認知症など症状が進むと、サポート量を増やさなければならない
介護休暇(休業)の上手な使い方
★半日~2日の休暇(介護休暇など)の上手な使い方
〇緊急対応の時
(急に親が倒れて入院、道に迷って警察に保護されたときなどの駆け付け)
〇ケアマネジャー、要介護認定の申請、病院ソーシャルワーカーとの打ち合わせなど
(打ち合わせや必要な手続きを行う)
〇要介護認定の訪問調査に同席
(親が訪問調査員を追い返すのを防ぐ)
(親が「大丈夫だ」と言っても、困り事を書いたメモを調査員に渡して実態を伝える)
〇介護サービス関係者が集う「担当者会議(ケアカンファレンス)」へ参加
(実家が会社から近ければ半休か土曜日の開催を依頼)
〇病院の診察の付き添い・入院中の面会
(半休や土曜日の受診を検討)
(訪問診療を検討)
(医師の話や転院・退院の話し合いに同席)
★1週間以上の休暇(介護休業など)の上手な使い方
〇地域包括支援センター、ケアマネジャー、病院ソーシャルワーカーなどと打ち合わせ(1~2週間/働きながら介護をする体制づくり)
〇老人ホーム選びのための見学
(1~2週間/複数の老人ホームを見学して見極める)
〇看取り時期に入ったとき
(1週間~1カ月/最期の時間を一緒に過ごす)
介護休暇(休業)のダメな使い方
×親が他人に介護されることを嫌がり、おむつ交換などを直接的な介護のために休む(説得からプロに関わってもらう、他人だからこそスムーズにいくことも)
×外出すると迷子になるので、家の中で見守るために休む
(双方に過度なストレスがかかり、認知症ならば出掛けようとする行動がエスカレートすることも)
実は、厚生労働省も「自分が介護を行うだけでなく、仕事と介護を両立できる体制を整えることが大切です」と発信しています。上記を参考に自分が直接介護をするのではなく、プロの力を借りながら “働きながら介護をする体制づくり”のために「介護休暇(休業)」を利用してください。