2025

06/02

安心できる老人ホームに入所するには⁉

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣(となり)の介護(37)

団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」で、不安視されている一つに「介護難民」があります。特に、老人ホームに入居したくても空きやその費用がないといった心配をされる方も多いようです。

そこで今回は、老人ホームの種類と老人ホーム選びのコツなどをご紹介します。

老人ホームには2つの種類がある

老人ホームとは、高齢者が入居する施設の一般的な総称です。老人ホームには大きく分けて、「公的な老人ホーム(特別養護老人ホームなど)」と「民間の老人ホーム(民間企業が運営する老人ホーム=有料老人ホーム)」の2種類があります。

「公的な老人ホーム(特別養護老人ホームなど)」とは

社会福祉法人や地方自治体が介護度の高い人や低所得者を支援するために運営し、在宅介護が困難な人を受け入れる傾向があります。年金収入だけで入れる仕組みになっており、身寄りがなかったり、経済的に困難な状況(非課税世帯や生活保護受給など)にあったりしても入居可能です。金額の安さから待機者が多いのは事実ですが、工夫次第では、長く待つことなく入居可能なケースもあります。

「公的な老人ホーム」に入居するまでの心構え

特別養護老人ホームの入居条件は、要介護3以上が原則となっています。要介護3とは「日常生活動作及び手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態」(※1)と分類されています。 要介護3になるまで支える家族は過度な負担とならぬように、自宅での生活を無理なく継続していく必要があります。そのためには、家族で介護を抱え込まず、適度な距離を確保し、在宅介護サービスを活用してできる範囲での介護体制とすることが必要不可欠です。それさえできれば、たとえ申請から半年待ったとしても入居を急ぐ必要はないでしょう。

お金がないからと家族で介護をして過度な負担により共倒れとなり、高額な民間の老人ホームを選択せざるを得ない状況に陥ることがあります。そうなると金銭的な負担も大きくのしかかってしまいます。お金の不安があるのなら、無理のない自宅での介護体制づくりなど、公的な老人ホームに入所するための準備を早い段階から進めておくことが大切です。

「公的な老人ホーム」に無理なく入居するコツ

介護が必要な家族が施設へ入居する想像がまだつかない、といった段階から準備を進めることが重要です。

地域で評判の良い公的な老人ホームなど(特別養護老人ホーム)を見つけて、その施設が提供しているサービス(ケアマネジャー、ホームヘルプ、デイサービス、ショートスティなど)を利用しておきましょう。事前に施設とのコミュニケーションを重ねることで信頼関係が生まれ、入居申し込みだけをするよりも早く確実に入居できる可能性が高くなります。

「民間の老人ホーム(民間企業が運営する=有料老人ホーム)」とは

インターネットや新聞広告で目にするものは、民間の老人ホームがほとんどです。施設の数も多くあるため、ある程度金銭的な余裕があれば、比較的入居がしやすいのが特徴的です。

家賃や食費など施設ごとに料金が異なり、高齢者個人の様々なニーズを満たすために、多種多様なサービスを受けることができます。ただし高いお金を払ったからといって、必ずしもその金額に見合うサービスを受けられるとは限りません。

「民間の老人ホーム」選びで失敗しないコツ

昨今メディアでも取り上げられていますが、入居してすぐに施設が閉鎖したり、運営会社が変わったりしたことで料金が引き上げられてしまうケースもあります。急速に事業が拡大している民間の老人ホームも、後に運営面で課題を抱えたケースが多々あり注意が必要です。

できるだけ費用を抑えるために地方の施設を選ぶ方もいらっしゃいますが、そこで質の良いケアが受けられるかということも慎重に見極めなければなりません。

空き室があり簡単に入れる施設には注意が必要です。空室があるということは、入居者募集に困っている人気がない施設かもしれません。入居後に思ったサービスが受けられなかった、などのトラブルに発展するリスクも高いかもしれません。

新規オープンキャンペーンで値引きを謳う施設も注意してください。値引きをする必要があるのは、入居者募集に困っているということであり、事業計画に軌道修正が必要となっている可能性があります。建物が新しく入居もしやすいので魅力的に見えますが、働くスタッフの連携が上手に取れていないことがあります。施設で行う介護はチームで実施するケアなので、1人のスタッフのスキルが高くても良いサービスにつながるとは限りません。

民間の老人ホーム紹介所などの無料相談でお勧めされた情報のみで良し悪しを判断するのもお勧めできません。無料相談窓口はホーム側から紹介手数料を徴収する仕組みとなっているため、紹介先である老人ホームのマイナス情報は伝えてくれないこともあります。ただしさまざまな施設情報が集まっているので、鵜呑みにせず情報収集の手段の一つとして活用しましょう。

安心できる老人ホームに入所するには

一番望ましくない施設選びは、家族だけで介護を抱え込み頑張り続けた結果、家族介護に限界が来てしまい、急きょ受け入れてもらえるところを探すというケースです。

このような場合、すぐに受け入れてもらえるところを探さなければならず、民間の老人ホームであれば、高額な入居費用が必要となった場合に家族やきょうだい間でお金を分担することになったり、入所者が納得していないのに急な環境変化を強いられたりすることにもなります。施設サービスの質に納得ができない、費用負担が継続できずきょうだい間の揉め事に発展する、といったその後大きなトラブルとなるリスクがあります。 たくさんの選択肢から探すことは労力のかかることですが、冷静な目を持つことが必要です。ぜひ、親や自身の“終の住処”になると考えて施設を選んでください。金額や設備だけでなく、施設のスタッフの様子やサービスの質も含め慎重に選びましょう。施設の質を見極めるには、当法人の「よりよい老人ホームの選び方5か条」(※2)をご参照ください。

気持ちに余裕があるときの方が冷静な判断ができます。親や自身が要介護状態になっても、家族の負担が少ない体制作りや心構えを今から考えておくことで、選択肢を増やすことにつながります。

 

※1 要介護認定の仕組み・厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/sankou3.html

※2 「よりよい老人ホームの選び方5か条」作成:となりのかいご

https://www.tonarino-kaigo.org/wp/wp-content/uploads/2020/10/0f4fa8f4816ad968be28f1c02869c4e2.pdf

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