2025
08/04
セカンドオピニオンは受けるべき?
2002年4月に法人化したNPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの専務理事兼事務局長を経て、2011年8月理事長に就任。社会保障審議会医療部会をはじめとする数多くの厚生労働省審議会・検討会の委員を務めている。2018年6月20日に『賢い患者』(岩波新書)刊行。広島大学歯学部客員教授。ラジオNIKKEI「賢い患者になろう!」パーソナリティ(毎月第4金曜17:20~17:40)。
賢い患者の知識と心構え(2)
Contents
日本での広がり
「セカンドオピニオン」という言葉を聞いたことがあると思います。セカンド=2番目の、オピニオン=意見、です。最初に病気を診断してくれた医師を「ファーストオピニオン」とするなら、もう一人別の専門家の意見を聞いてみようというのがセカンドオピニオンなのです。
セカンドオピニオンという言葉が生まれたのは、1980年代の米国です。国民皆保険ではない米国では、医療を受ける際に多くの人が民間保険を利用しています。その民間保険会社で「最近どうやら過剰な手術が行われているのではないか」ということが問題になり、手術を受ける際は最低2人の医師が「手術が必要」と判断しなければ保険金を支払わないと決めたのです。そして、2人目の医師の意見をセカンドオピニオンと称して、義務化したのです。手術を受ける患者も、2人の医師から手術が必要と言われれば納得して手術を受けることができると患者側にも好評で、セカンドオピニオンは一気に広がりました。
その後、日本に「セカンドオピニオン」という用語が浸透し始めたのは1990年前後でした。では、それまでセカンドオピニオンを求めるという行為を日本人がしていなかったかというと、用語がなかっただけで、こっそり水面下で求めていました。それが表面化したのが、1980年(昭和55年)に起きた埼玉県所沢市の富士見産婦人科事件です。1,000人もの健康な女性から子宮や卵巣を摘出したとされる事件ですが、そのときに難を逃れたのがセカンドオピニオンを求めていた女性たちだったのです。
しかし、セカンドオピニオンという用語が紹介されるようになると、公然とセカンドオピニオンを求める人が増えてきました。セカンドオピニオンを求める人は質問したいことがたくさんあります。そのため、最低でも1人30分は必要になります。通常の外来にセカンドオピニオン目的の患者が5人も紛れ込むと、2時間半も外来診療がずれ込む。それによって医師が疲弊するという問題が生じました。
そこで、2002年の医療法改正の際にセカンドオピニオン外来が認められるようになりました。初め、都内の3つの私立大学病院で一般の依頼とは別に自費によるセカンドオピニオン外来がモデルケースとして設置されたのですが、すぐに軌道に乗り、全国のがん診療連携拠点病院などを中心にセカンドオピニオン外来を設置する病院が増えていきました。
診察・検査・治療は対象にしていない
あまり一般的に知られていないのですが、セカンドオピニオン外来には大きな特徴があります。それは、診察や検査、治療を対象にしていないということです。ファーストオピニオンの医師にセカンドオピニオンのための紹介状(診療情報提供書)を書いてほしいと依頼すると、診療情報提供料(Ⅱ)500点(1点=10円で患者は1~3割負担。ちなみに一般的な紹介状は診療情報提供料(1)250点)が請求され、検査データも付けてくれます。それをセカンドオピニオンを求めたい医療機関に持って行き、指定された日に意見を聞きに行くのです。意見は口頭だけの医療機関もあれば、サマリーといって要点をまとめた文書をくれる場合もあります。
セカンドオピニオン外来では、医師とトラブルになっている場合の治療への意見や亡くなった家族の治療についての意見は対象外にしているところが多く、主治医の了解がない――紹介状がない場合も対象外にしています。
セカンドオピニオン外来の費用は医療機関ごとに定められていますが、30分20,000~30,000円などと高額な場合が多く、制限時間を過ぎると追加料金も請求されるので、あらかじめ制限時間や費用の確認をしておくことが大切です。
また、「診断までに紆余曲折があり、ほかの医師でも同じ診断になるのか確認したい」「病気の診断はファーストオピニオンの医師にしてもらったけれど、治療は別の病院で受けたい」といった場合は、セカンドオピニオン外来では目的が達成できません。その場合は、一般外来を初診で受診することをお勧めします。
それに、セカンドオピニオンは日本では義務ではありません。まずはファーストオピニオンの意見をしっかりと求め、患者さん自身が「もう一人専門家の意見を聞きたい」と望むかどうかです。ファーストオピニオンの医師の説明で理解、納得したという場合は無理に求める必要がないことも理解しておく必要があると思います。