2025
10/06
おねしょを治そう
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小児の病気
社会福祉法人聖隷福祉事業団聖隷佐倉市民病院
小児科副部長兼臨床研修センター長
小児の病気⑥
高年齢になると自然軽快が難しくなる
「おねしょ=夜尿」とは、5歳を超えても眠っている間に失禁する(おしっこがでてしまう)状態です。一般的に3歳から5歳くらいまでに夜尿頻度はかなり低くなりますが、6歳で13%程度の児に夜尿が残ってしまい、以降は年に10%程度が自然治癒するといわれています。夜尿は自然に治るとお考えの保護者の方も多いですが、小学1年生で夜尿のある児が10人いたとしますと、2年生で治っているのはその中の1人のみであり、実は高年齢になると自然軽快が難しくなります。治療介入すると50%が治癒するといわれていますが、治療により全員がすぐに良くなるわけではありません。
まず生活習慣の見直しから始める
夜尿治療は本人の治したい気持ちも考慮しながら、排泄機能が大人並みに成熟する6歳ころから開始する場合が多いと思います。すぐに薬物などの治療を行うことはせず、まずは生活習慣の見直しから始めます。私たちの身体は食べたり飲んだりした物は3~4時間で尿となりますので、夕食後から就寝までなるべく時間をあけて夕食の水分を排尿してから就寝することが理想ですとお話をします。特に寝る前3時間程度は水分摂取を控えること、尿量が増える原因となる塩分や甘味は夜のみ控えることは大事です(朝昼に水分や塩分、甘味を少なくする必要はありません)。また首や肩が冷えることも夜尿の原因となります。早寝早起きも大切で、遅く寝て早く起きる児(睡眠時間は短い)は夜尿がなかなか治らない印象があります。便秘傾向が強い児は便秘を治す(排便コントロールを行う)だけで夜尿が落ち着く場合もあります。それでも夜尿が改善しない場合は尿量を減らす薬の内服やアラーム治療を検討します。
夜尿の根本原因は?
夜尿のある児は寝ている間の尿意や排尿刺激で起きることができず、夜尿が続く根本原因ともいわれています(尿意で起きられれば、トイレに行って排尿できるので夜尿にはなりません)。パンツで寝ることとおむつを継続することを比べると、実は夜尿改善には差はありません。パンツやトレーニングパンツで濡れた時の嫌な感じを体感させるわけですが、それが分かって起きられる児は夜尿はしないのです。このような背景の中で、排尿刺激で覚醒できるように訓練していく方法がアラーム治療です。アラーム治療は有効な治療ではありますが、家族や兄弟、ペットが起きてしまうなどの問題もあり、しっかり環境を整え開始する必要があります。
眠りの質を高める
眠りの質を悪化させてしまう原因についても治療を行うことがあります。例えばアトピー性皮膚炎で寝ている間ずっと体を掻いている、いびきや無呼吸、激しい寝言があるなどの場合は、それらの治療も並行して行い睡眠の質を高めることで夜尿が改善する児もいます。眠りが深過ぎても浅過ぎても、尿意や排尿刺激で起きられないため、ある程度の刺激で覚醒できるちょうどよい深さの眠りが必要なのです。
別の疾患が関係していることも
夜尿に加えて昼間にパンツが濡れてしまう場合は少し早めに介入します。昼夜問わず勝手に膀胱が収縮してしまう過活動膀胱といわれる状態が隠れていることがありますし、その過活動膀胱の原因として尿道病変など泌尿器科的な疾患が判明することもあります。失禁のたびに意識が朦朧とするような時は、てんかん発作による意識低下が原因となることもあります。
原因を治療することで改善する夜尿もありますので、お困りの方は近くの小児科や泌尿器科で相談してください。