2020

02/28

~漢方薬~「医療用漢方製剤」は保険適応の漢方薬

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小黒 佳世子
『薬剤師のお仕事』『小黒先生の薬の話Q&A』連載
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2012年9月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(6)

漢方薬と西洋薬の違い

Q1)漢方薬を処方してくれる病院があるようですが、漢方薬と西洋薬の違い(効果・効能など)や特徴は何ですか?

A1

中国の伝統医学は5~6世紀頃に日本でも行われるようになったといわれておりますが、その後日本の風土・気候や日本人の体質に合わせて独自の発展を遂げ、わが国の伝統医学となったのが漢方です。「漢方」は西洋医学の「蘭方」と区別するために付けられた名称であり、中国の伝統的な医学である「中医学」とも異なる日本独自の医学なのです。

漢方薬は2つ以上の薬草を混合し、患者様それぞれの体質や体型、抵抗力、自覚症状などを「証」というものさしで判断して処方します。身体の弱った機能を活性化させ、自らの力で本来の健康な身体に治癒させます。

西洋薬は有効成分が単一で、ある一つの症状をターゲットとし、その症状を抑えるために強力な力を発揮しますが、漢方薬は組み合わせたそれぞれの生薬に多くの有効成分が含まれているので、さまざまな作用を持っています。ですから、複数の病気や症状に対する治療に有効で、慢性的な病気や全身的な病気の治療など複雑多彩な症状に効果を発揮します。漢方では、患者の体質やその時の状態によって、その人に合った漢方薬が処方されるので、違う病気に対しても、体質や症状が似ていれば同じ漢方薬が用いられることがあるのです。

病院で処方される保険が適応される漢方薬は「医療用漢方製剤」といわれ、生薬を煎じて抽出した濃縮液を顆粒や錠剤の形にしたものです。漢方薬本来の煎じる手間がなく、すぐに服用できる便利さがありますが、専門の漢方薬局や漢方専門医で処方される、煎じて服用する漢方薬のように、患者様個々に応じた生薬の配合や分量の調節はできません。漢方薬局等では医療保険も適用されませんが、漢方の専門家にアドバイスを受けることができることが大きなメリットといえるでしょう。

漢方薬の服用(1)

Q2)漢方薬と西洋薬は一緒に服用してもいいですか?

A2

インターフェロンと小柴胡湯との組み合わせが禁忌ということは良く知られておりますが、他にも甘草を含む漢方薬の場合には、利尿剤との併用や、むくみや血圧上昇にも注意が必要です。漢方薬を希望される方のほとんどは、何かしらの西洋薬を服用されていることが多いので、併用は大切な問題です。

一般的に漢方薬は食前もしくは食間(食事と食事の中間)に服用するようにいわれています。漢方薬は複数の生薬が組み合わされることによって効果が現れますので、食べ物や他の薬の影響で予想しない作用が出てしまうことを避けるため、空腹時に服用するのです。西洋薬は食後に服用する場合が多く、両方を併用しても差し支えありません。食前に服用する薬とは1~2時間ほどずらして服用すれば心配ないでしょう。

漢方薬の服用(2)

Q3)病院で処方された同じ漢方薬を長く服用していますが、なかなか症状が改善しません。どれくらい服用すればいいですか?

A3

一般的に漢方薬は長く服用しなければいけないと言われますが、その人の体質や年齢、病気そのものの性質、病気になってからの期間などにより異なります。また、風邪や痛みなどに対して、1回の服用で効果のある漢方薬もあります。基本的には、服用し始めてから1~2週間で何らかの変化が現れると考えます。一番困っている症状が変わらなくても、少しでも他の良い反応があれば継続して服用するようにしますが、全く変わらない上に他の悪い反応が出るような場合には薬を変更します。また、症状が良くなったからと言ってすぐに止めていい場合と、徐々に減らした方が良い場合があります。花粉症など症状が出る時期が分かっているものであれば、その時期の少し前から服用してもらうなど、服用時期を工夫する場合もあります。大切なのは、ご自身の体調変化をよく察知することです。漢方薬にも副作用がありますので、漫然と長期間服用することはお勧めできません。また、長期間服用することや環境によって症状が変化していることがありますので、定期的に診察を受けることが必要です。

 

 

 

 

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