2023

01/16

~地域医療“最前線”で思ったこと~

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
北海道社会事業協会 岩内病院 院長代理

医師のニーズと患者様のニーズ。どちらを優先しますか⁉

地方病院の現状

私は2022年の1月1日に急遽、北海道社会事業協会岩内病院に常勤医として赴任しました。その10カ月前から非常勤で、岩内病院の副院長でしたが、あくまでも非常勤として、岩内協会病院を補佐する立場でした。ところが2021年の12月に、当時の岩内病院の病院長が辞職され、病院施設長が不在になるため、急遽、常勤で副院長兼院長代行として、赴任しました。 赴任時から、本当の常勤医、いわゆる正職員である医師は私1人だけです。他は、常勤医ではありますが、年契約の嘱託医のみです。赴任時は、外来だけをこなす小児科嘱託医が1人、 外来・入院ともに診る消化器内科の嘱託医が1人、外来・入院を診る内科の嘱託医が1人でした。現在は、消化器内科の嘱託医が辞めたので、外科医である正職員の医師(私)1名と、小児科嘱託医1名、内科嘱託医1名で業務を行っています。つまり、岩内病院の医療圏の住民ニーズに応えるための体制が充分ではないのです。

一般的に、地方で常勤として働く嘱託医(当院の嘱託医や全ての嘱託医のことではありません)は、求められていることではなく、自分がやりたいことややれることだけをする医師が多いようです。地域のニーズに自分を合わせるのではなく、自分のニーズに合った場所を探すのです。要するに、「自分のニーズに合わなくなったら」、「自分のニーズ以外のことを病院が要求したら」ということ等があると辞めてしまいます。もしくは、そういう要求が出ないように、仕事が増えないように、自分が変化しなくてもいいように、「僕がいなくなったら、医師不足の地方病院は困るよね~」「僕はこの仕事しかしないからね~」「僕の言うことを聞かないと辞めちゃうよ~」というようなことをチラつかせて、医師不足の地方病院の足元を見ながら要領良く、日々を過ごします。時々、わがまま放題し過ぎる医師もいますが、数年ごとに地方の病院を渡り歩く要領の良い嘱託医は、「地方の病院は都会に比べ破格の給料でかつ楽な仕事内容で雇ってくれる」ことも知っています。彼らは、地方病院の足元を見つつ、要求はほどほどに、そして、他に良い条件の病院がないかと常に地方病院のリサーチを行っています。医師不足で悩む地方病院は、突然、医師に辞められると病院長や理事長、運営する行政の首長が焦って破格の条件を提示することもあります。彼らはそういった情報を待っているのです。

医療業界の在り方

地方における多くの嘱託医の場合は、自分のニーズに合わせて仕事をしています。いわゆるフリーランスの地方嘱託医は、サービスを受ける側である顧客(患者様)のニーズではなく、サービスを提供する医師のニーズで仕事をします。このようなことは、実は、地域に関係なく現在の医療業界で起きています。医師としての基本的な医療サービスを提供しつつ専門性の高い医療サービスを提供するということが、医師の専門性であると思います(私だけがそう思っているかもしれません)。しかし、自分の専門のことだけをしたい医師が増加し、自分がしたい医療サービスだけを提供し、自分のニーズに合わないことは患者様が求めても拒否したり、そもそも、そういう患者様が来ないように患者様を限定したりすることが年々多くなってきていると思います。医療業界全般で、多くの場面で、医師のニーズが患者様のニーズより優先されるようになっています。

例えば「俺はこの形の椅子しか作らねえし、この椅子を買ってくれる客しか相手にしねえよ」。そんな頑固な職人がやっている家具メーカーは、熱烈な、ごく一部の顧客だけが相手で成り立っているのではないでしょうか。医療サービスは、地方であっても都会であっても、ごく一部の顧客(患者様)が相手ではありません。全ての住民に広く十分なサービスを提供するのが、私が考える医療業界の在り方です。現在は院長代行として施設長の立場で、地方病院の病院経営と地域医療最前線での治療を両輪で行っています。病院経営としては、やはり、行政とどうやってしっかりタッグを組んでやっていくかが、地方病院として最も大事なことだと分かってきました。また、地域医療の最前線では、広く浅くではなく、広くそして十分な深さで(専門医並の深さではなく)医療を提供することが求められます。

今後は行政とともに1人でも多く患者様のニーズを優先して、業務を行える医療者を育て、またそういう人材を集められるような地域医療をやっていく予定です。