2015

03/16

KYの人たちのこと?

  • メンタルヘルス

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西松 能子
立正大学心理学部教授・博士(医学)、大阪医科大学医学部卒業後、公徳会佐藤病院精神科医長、日本医科大学附属千葉北総病院神経科部長、コーネル大学医学部ウェストチェスター部門客員教授を経て現職日本総合病院精神科医学会評議員、日本サイコセラピー学会理事、日本カウンセリング学会理事、現在あいクリニック神田にて臨床を行う。

ドクターズプラザ2015年3月号掲載

よしこ先生のメンタルヘルス(30)

自閉症スペクトラムの症状と特徴

お世辞や皮肉を理解できない人たち

約10年ぶりのDSMの大きな改訂の中で、最も大きな変化の一つは発達障害に関わる領域です。従来、広汎性発達障害、アスペルガー障害などと分類されていたものが、自閉症スペクトラムとして一つつながりの発達上の問題として捉えられるようになりました。「自閉症」という言葉は、時に自閉的という意味と間違えられてしまい、内気だとか引きこもりだとか誤解されてしまいますが、大きな誤りです。自閉症スペクトラムは、引きこもりや後天的な病気、本人のわがまま、愛情不足から来る閉じこもりではありません。原因は、まだ不明ですが、脳の障害であろうと言われています。世界中どの国でも同じ程度の発症率で、文化や環境によるものではないということが、そこからも分かります。「スペクトラム」というのは、連続体という意味です。例えば、光のスペクトラムである虹の色は、どこからが赤で、どこからが黄色かとい境界線を引くことができず、赤から紫まで連続して色が変化していきます。自閉症スペクトラムにおいても、重症から軽症まで境界線が引かれることなく連続して変化していきます。自閉症スペクトラムという診断がついた場合も、10人いれば10人とも違った症状ということもあるのです。

自閉症スペクトラムとは、どのような特徴を持っているのでしょうか。仲間の中で「あの人はKYだよ」などと言われている人はいませんか? 「何だか察しの悪い人だなぁ」等と言われる人はいませんか? いわゆる察しの悪い人でも、専門職として機能している場合には、むしろ周囲に流されない人として尊敬を得ているかもしれません。

自閉症スペクトラムでは、まず社会的・対人的コミュニケーションの障害として、人との関わりや人の考えや感情を共有する力が、平均よりはるかに少ないことが挙げられます。言葉が遅れているわけではないのに、会話に参加するタイミングが分からなかったり、いつも間の悪いことを言ってしまったり、人を傷つけたりしても気づかなかったりします。「うちの旦那ったら、『お風呂、見てきて』と言うと『見てきた』と言ってそれだけよ」とか「うちの旦那は本当に何もできないの、靴下も反対に履いて平気なのよ」などという話を聞いたことはありませんか? 笑い話ですが、実際にお風呂を見てきてと言うと湯加減のことだと思いつかない人がいます。視線を合わせることやボディランゲージが不自然な人はいませんか? 不自然に無表情であったり、大げさであったりします。対人関係の中で、お世辞はいわば人間関係の円滑油、皮肉はいわば人間関係のスパイスとも言えるものですが、お世辞や皮肉を理解できない一群の人たちがいます。子供ならば、ごっこ遊びができなかったり、大人ならば、人間関係を推論するのが苦手だったりします。変化を好まず、同じ道、同じやり方を好みます。匂いや音、感触に過敏な人たちもいます。

ちょっとした知識や理解が「KYさん」を援(たす)ける

これらの個性は、日常生活に支障のある程度になると、自閉症スペクトラムと診断されます。これらの個性に合わせた工夫が必要となるのです。すべての自閉症スペクトラムの人において、曖昧、暗黙の了解の理解が苦手であることは共通した特徴です。この群の人たちは、アレッと思ったら、聞き返して明確にする練習をすることで、この苦手感は軽くなります。例えば、「今日の会議はどうだったか簡単に話して」と聞かれた場合、自閉症スペクトラムの人は、今日の会議が聞いた人が関わっている会議のことと即座に理解はできません。今日あった会議全てのことを話し始めるかもしれません。また、「どうだったか」もさらに難しい質問です。「簡単に」と言われてもどの程度話せばいいのか迷ってしまいます。初対面の人に事細かに質問するわけにはいきませんから、自閉症スペクトラムを理解してくれているご家族や友人相手に練習しましょう。「どうだったか」は会議の時間や枠組みではなく、要約をすることであったりすることや、「簡単に」は1分で話せることを話すことであったりすることを学んでいきます。会話の時には相手の方を向く、いきなり本題には入らず「いいですか?」など注目を向けるようなワンクッションを入れる、急いでいる時には「行かないといけないのですみません」など、一言付け加えるなど、具体的な会話のルールやコツを増やしていくことが必要です。

あなたの周りの「KYさん」の苦労が伝わりましたか? 春は新人が入ってくる季節です。これらの特徴を持つ人たちは新しい環境に慣れるのが苦手です。ちょっとした知識や理解が「KYさん」を援(たす)けることでしょう。