2018

06/15

食事療養の費用に係る評価の変遷

  • 病院給食

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池田 直人
株式会社LEOC 専務執行役員

病院給食(1)

社会情勢と共に変わる食事療養費

 

健康保険法の規定に基づき昭和25年に始まった完全給食制度(後の基準給食制度※昭和33年)は、制度創設から社会情勢の変化と共に大きく変わってきました。医療機関での食事提供は治療の一環であるとの考えから、昭和47年に入院時基本診療料の一部としての評価(給食加算:30点)だったものが廃止、入院基本診療料とは別に給食料:40点と基準給食加算:15点が新設され、診療費と同様に医療費として賄われるようになりました。以後、昭和53年に給食料:100点、基準給食加算:31点となり、医療食加算(*1:10点が新設され、より必要栄養量確保に重点を置いた食事提供に評価が付くようになりました。また、昭和62年病院給食業務の外部委託が認められ、アウトソーシングが進む事となります。

平成4年に給食料:142点、基準給食加算:47点になり、特別管理給食加算(*2):10点も新設され、病院食は量の確保から質の改善へと変化していきました。最大の変革となったのが、平成6年10月の入院時食事療養費制度の導入です。この制度導入理由は、入院時の食費が、保険給付の対象としつつも、在宅と入院の費用負担の公平化を図る観点から、在宅と入院双方に掛かる費用として、食材料費相当額を自己負担化することで、患者側のコスト負担意識を高めることによる、食事の質向上も期待したものでした。入院時食事療養費は、従来の基準給食加算の要件を満たす保険医療機関においては入院時食事療養(Ⅰ)を、その他の保険医療機関においては、入院時食事療養(Ⅱ)を算定することとし、当時の給食料:143点と基準給食加算:47点の計の190点をそのまま1900円に置きかえたものとなりました。併せて、食堂加算、選択メニュー加算が新設され、栄養管理だけでなくサービス向上につながる施策が次々と導入されました。

平成8年に医療法施工規則改正によって院外調理が解禁され、経営改善策の一環としてのセンター化に道が拓かれた背景には、HACCP(ハサップ)などによる衛生管理の向上があり、平成9年には消費税率引き上げへの対応のため、入院時食事療養費(Ⅰ・Ⅱ)に20円を加算されました。

平成12年、介護保険施行後、医療と介護の一体的な改革の中で、平成17年、介護保険における食費・居住費(光熱水費相当)の見直しがなされた事を踏まえ、療養病床については、介護病床と同様に「住まい」としての機能を有していることに着目し、平成18年には入院時生活療養費制度が導入され、食費・居住費(光熱水費相当)の自己負担化がされました。一方、平成18年4月の入院時食事療養費の改定により、食事療養費の算定が1日単位から1食単位へと改定されたことに加え、適時適温等に対する特別管理加算の廃止、特別食加算の減額が行われ、栄養部門の収支に大きな影響を与え、苦しい運営を余議なくされる要因となっていきます。他方、栄養管理実施加算(現在はありません)、NST加算(栄養サポートチーム加算)が相次いで新設され、患者個々の栄養状態の把握と細やかな対応が求められることとなりました。

食事療養費の移り変わり

*1 指定された検査機関において調理加工後の栄養成分が分析、保証された加工食品が提供された場合に算定できる。
*2 常勤の管理栄養士を配置し、適時・適温の食事を提供した場合に算定できた。

 

平成29年に薬価適用の場合との均衡を図る観点から、市販の経腸栄養用製品(以下「流動食」)のみを経管栄養法で提供する場合の入院時食事療養費等の額について、1割程度引き下げることになりましたが、平成30年の見直しにより自己負担が入院時食事療養費の額を上回るとして、入院時食事療養費(Ⅱ)の流動食のみを提供する場合について改定されました。

栄養価、色彩、形態を含めた食の研究が必要

以上のように、診療報酬は二年に一度、介護報酬は三年に一度、改定をされてきました。食事は日常生活を営む上で、健康増進や病気の治療、予防においても大切な役割を果たしております。食事を通じて、認知症の予防や病気の重症化予防にも大きく貢献できること、そして、摂食嚥下障害の領域においても、咀嚼嚥下能力に応じた嚥下調整食の個人対応などが求められるようになってきました。その背景には、日本人の死因別第一位が癌、第二位が心臓病、そして第三位に肺炎が上がったことの影響もあります。誤嚥性肺炎の予防、口腔ケアなども含め、食事管理が如何に大切であるのか……個食対応が求められてきますので、今後の改定におかれましては、管理栄養士が具体的にどのような取り組みをされてきたのか? 更にチーム医療の質や専門性を問われてくることになってきます。

介護保険におかれては、1食当たりの食事自己負担が460円であり、診療報酬においても、平成30年4月より360円の自己負担から460円に改定されました。この460円は、材料費と調理費(技術料)であることを提言されておりますが、原点は、「美味しい食事」を作り、100%喫食していただいて初めて栄養になること……栄養価、色彩、形態を含めた、食べやすさなど……「食」においては、まだまだ、研究をしていかなければならないこともたくさんあります。

平成30年4月の改定において、給食管理に関連する部分のまとめ

①入退院支援の推進

(新)入院時支援加算:200点(退院時1回)

②関係機関の連携強化に向けた退院時共同指導料の見直し

退院時共同指導料Ⅰ・Ⅱの要件に管理栄養士が入った。

③回復期リハビリテーション病棟入院料の評価体系の見直し

算定要件として、(1)リハビリテーション実施計画又はリハビリテーション総合実施計画の作成に当たっては、管理栄養士も参画し、患者の栄養状態を十分に踏まえた計画を作成すること。なおその際、リハビリテーション実施計画書又はリハビリテーション総合実施計画書における栄養関連項目については、必ず記載すること。

(1)リハビリテーション実施計画書及びリハビリテーション総合実施計画書に、栄養状態等の記入欄を追加。

(2)管理栄養士を含む医師、看護師その他医療従事者が、入棟時の患者の栄養状態の確認、当該患者の栄養状態の定期的な評価及び計画の見直しを、共同して行うこと。

(3)栄養障害の状態にある患者、栄養管理をしなければ栄養障害の状態になることが見込まれる患者その他の重点的な栄養管理が必要な患者については、栄養状態に関する再評価を週1回以上行うこと。

【私見】

業務量増加可能性及びリハビリ時間や強度に合わせた栄養価変更対応が増える見込み。

④訪問指導料における居住場所に応じた評価

【在宅患者訪問栄養食事指導料】

⒈ 単一建物診療患者が1人の場合:530点
⒉ 単一建物診療患者が2〜9人の場合:480点
⒊ 1及び2以外の場合:440点

【私見】

単一建物の診療患者の場合は収入減

 

⑤緩和ケア診療加算等の要件の見直し

緩和ケア診療加算について、管理栄養士が緩和ケアチームに参加し、がん患者の緩和ケアを行った場合の評価として、個別栄養食事管理加算を新設する。

(新)個別栄養食事管理加算:70点(1日につき)

[施設基準]

緩和ケアチームに、緩和ケア病棟において悪性腫瘍患者の栄養食事管理に従事した経験又は緩和ケア診療を行う医療機関において3年以上栄養食事管理(悪性腫瘍患者に対するものを含む)に従事した経験を有する管理栄養士が参加していること。なお、当該管理栄養士については、緩和ケアチームに係る業務に関し専任であって差し支えない。

 

⑥医師等の従事者の常勤配置に関する要件の緩和

管理栄養士については、在宅患者訪問褥瘡管理指導料は、診療所の場合、非常勤職員でも算定可能となっており、この取り扱いを病院にも適用する。

 

⑦ 専従要件の緩和

チームで診療を提供する項目については、チームのいずれか1人が専従であればよいこととし、併せて、評価についても見直しを行う。また、担当する患者数が一定程度以下の場合は専任であっても差し支えないこととする。

 

【栄養サポートチーム加算】

栄養管理に係る所定の研修を修了した専任の常勤管理栄養士

 

⑧入院時食事療養費(Ⅱ)の見直し

入院時食事療養(Ⅱ)(1食につき)流動食のみを提供する場合:460円

 

【私見】

市販品の経管栄養剤のみ使用の場合の金額5円増だが、対象者が少ないため大きな影響はないと考える。

 

※「平成30年4月の改訂において、給食に関連する部分のまとめ」は、「2018年開催の中央社会保険医療協議会総会資料」の一部を抜粋

 

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