2014

01/22

風邪とインフルエンザは違う病気!?

  • 感染症

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内藤 博敬
静岡県立大学環境科学研究所/大学院食品栄養環境科学研究院 助教。短期大学部看護学科 非常勤講師、静岡理工科大学 非常勤講師。専門は環境微生物学、病原微生物学、分子生物学、生化学。ウイルスや細菌の感染予防対策法とその効果について、幅広く研究を行っている。

ドクターズプラザ2014年1月号掲載

微生物・感染症講座(37)

くしゃみや鼻水といった初期症状は共通しているので、間違った自己判断をしないように

はじめに

冬の代表的な呼吸器感染症に、インフルエンザと風邪があります。インフルエンザはインフルエンザウイルスを原因とした感染症であることは御存知でしょう。では、「風邪」の原因は御存知でしょうか? ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルスなどの感染によって起こる急性の呼吸器疾患を、我々は「風邪」と呼んでいます。今回は、インフルエンザと風邪の違いをお話して、代表的な風邪の原因ウイルスを紹介しましょう。

流行性感冒と普通感冒

最近では一年を通じてインフルエンザの感染が報告されていますが、水に弱いインフルエンザは気温が下がり空気が乾燥する冬に大きな流行を起こします。インフルエンザ感染に特徴的な症状として、激しい悪寒から急な高熱(38~40℃)を発し、関節痛や筋肉痛などの全身症状が強く表れることが挙げられます。これらの症状は数日間続くことがほとんどで、体力の低下から気管支炎や肺炎を併発しやすくなります。また、重症化して脳炎や心不全などを起こすことがあるため、高齢者や小さい子供では、特に注意する必要があります。感染原因となるウイルスは、インフルエンザウイルスA型あるいはB型と決まっているので、検査法が確立されており、タミフルやリレンザといった治療薬も開発されています。

一方で、我々が『風邪』と呼んでいる感染症は、鼻水・鼻づまり、喉の痛みや微熱を主症状としたもので、インフルエンザのような筋肉痛や関節痛はありません。また、肺炎や合併症が起こることもインフルエンザに比べて極めて少ない感染症です。感染原因となるウイルスは前述のように複数種あるため、検査ができるのは一部のウイルスのみですし、治療も個々のウイルスに対するものではなく、熱には解熱剤、喉の痛みには抗炎症薬といった、症状に対する対処療法が主となります。抗生物質(抗菌剤)が処方されることもありますが、これはウイルスに対するものではなく、細菌感染による症状の悪化を防ぐための薬です。

インフルエンザが冬季に流行するのに対して、風邪は一年を通じて起こり、原因となるウイルスも多様なため、油断していると年に何度も罹ってしまうことがあります。また、インフルエンザは「流行性感冒」、風邪は「普通感冒」とも呼ばれ、どちらも急性の呼吸器疾患である『感冒』であることから、間違った自己判断することも少なくありません。くしゃみや鼻水といった初期症状は共通しているので、インフルエンザを風邪だと間違えて悪化させてしまうことのないよう、早めに医師に相談しましょう。

冬なのにプール熱!?

風邪の原因となるウイルスの中で、最も多いのは、「ライノウイルス」による感染です。ライノウイルスはヒトの体温(37℃)では活動が低下し、体温よりも少し温度の低い(約33℃)鼻腔で活発になることがわかっています。ライノウイルスによる風邪症候群は、冬~春にかけてよく報告され、血清型(*1)も114と豊富なため、年に数回罹るヒトもいます。ライノウイルス以外で、注意喚起されている風邪の原因ウイルスに、「アデノウイルス」があります。ヒトのアデノウイルスの血清型は、少なくとも51以上あり、主として咽頭、結膜(目)、小腸、泌尿生殖器の粘膜上皮へ局所感染します。症状を示さない場合も多いのですが、血清型によって咽頭結膜熱、急性熱性咽頭炎、流行性角結膜炎、乳児急性胃腸炎、急性出血性膀胱炎など引き起こす症状が異なります。この中で風邪と呼ばれるのは、「咽頭結膜熱」と「急性熱性咽頭炎」で、咽頭結膜熱は夏季にプールの水を介して感染を広げることから、「プール熱」とも呼ばれています。急性熱性咽頭炎は初冬に流行する風邪ですが、近年では温水プールの利用等によって咽頭結膜熱が冬に流行することも珍しくなくなってきました。このアデノウイルスは極めて感染力の強いウイルスで、プールの水で伝播するのは一例でしかありません。前述のようにアデノウイルスは、呼吸器、目、消化器の粘膜に感染しますから、感染者との直接あるいは間接的に接触した手指で、鼻をほじったり、目をこすったりすることで感染する可能性が高まります。感染予防は手洗いが第一です。日頃からウイルスの存在を意識して、習慣的な手洗いを心掛けましょう。

 

(*1)ヒトの血液型と同じように、同じウイルスにもグループがあるのです。我々の免疫機能は、侵入してきた微生物を異物と認識しますが、判断の基になるのは、ウイルスであれば粒子表面のタンパク質で、同じ種類のウイルスであっても少しずつ異なり、これを血清型として分類しています。