2023

01/16

電子処方箋、2023年よりスタート ~紙の処方箋が無くなることによって薬局はどう変わる!?〜

小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス 取締役、株式会社ファーマ・プラス 取締役
一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長

薬剤師のお仕事(16)

電子化されるとどう変わるのか?

医療における DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について、これまでマイナンバーカードを保険証として利用できる資格確認やマイナポータルの医療における活用についてお伝えしてきましたが、今年から院外処方箋の電子化がいよいよスタート致します。すでに2022年秋よりモデル事業として特定の地域で試験運用がされてきましたが、処方箋が電子化されるとどのようになるのでしょうか。

私たち薬局薬剤師にとって院外処方箋は、業務の中で重要な位置を占めています。処方箋がなければ、医療用の医薬品を患者さんにお渡しすることはできません。処方箋によって医薬品を交付しなければならないことは、医師法、歯科医師法、薬剤師法、健康保険法などをはじめ、医療に関する多くの法律によって規定されています。現在も処方箋は多くの病院で事前にFAXされた上で事前に薬局で調剤され、患者さんが薬局に来たときに処方箋原本と引き換えに受け取ることができます。

このシステムは、平成元年に希少医薬品を事前に準備した上で受け入れることを可能にしたり、薬局での患者さんの待ち時間の減少など、患者サービスの向上を目的としてある地域の国立病院で開始が検討されました。そして、厚生労働省が処方箋原本と引き換えに処方箋による調剤として認めることを各都道府県に示したことで各地に広がっていきました。平成10年には、在宅医療においても、あらかじめ患者が希望する薬局にFAXしておき、患者さん宅に薬剤をお届けしたときに処方箋原本と相違がないことを確認した上で、調剤を実施したこととして良いという通知も厚生労働省から発出されています。

この通知では、処方箋原本を受け取った日がさかのぼって調剤日となることも示されており、処方箋をFAXで送ったにもかかわらず、処方箋の有効期限が切れてから来局されて薬を受け取ることができず、薬局でトラブルになるというケースもしばしば見受けられました。また、在宅医療では、医師は訪問診療時に患者さん宅に処方箋を置いておくことも多くなっておりますが、患者さんが処方箋をFAXできない場合には、薬局スタッフが一度患者さん宅に処方箋を取りに行ってから薬局に戻って調剤し、再度お届けするということも多々あります。医師が訪問診療後にクリニックに戻ってから処方箋を作成した場合には、医師からFAXが送られますが、薬剤師は患者さん宅に訪問する前に医療機関に立ち寄って処方箋原本を受け取らなければなりません。在宅医療では、医師は電話による再診が認められており、訪問看護師が状態を伝えて、緊急で解熱剤などが処方された際に、処方箋原本をどのように医師から受け取って薬を患者さん宅に届けるか、ということは常に私たち薬局薬剤師の課題でした。そのため、事前にそれぞれの患者さんの予測できる急変に備えて、患者さんの病態にあった薬をコンフォートセットとしてあらかじめ処方しておくことが多くなっておりますが、それでも予期できない症状に対しては、深夜に医師のところへ処方箋を受け取りに行くこともしばしばあります。医師から「薬局の負担が大き過ぎる」と労いの言葉を掛けていただいたこともあります。

便利さだけでなく、医療安全や医療費削減にもつながる

電子処方箋は、この処方箋原本がなければ患者さんにお薬をお渡しできないという私たちの業務の手間を大きく改善できるのではないかと期待しております。電子処方箋の場合には患者の同意を受けることによって医療機関から電子的に発行されます。医師から電子処方箋の引換番号が発行され、マイナンバーカードであれば引換番号はその中に含まれます。健康保険証の場合には医師から渡された引換番号によって、薬局で患者さんの同意を得た上で引換番号をもとに電子処方箋をダウンロードすることができます。FAXの代わりに患者さんの希望する薬局に事前に電子処方箋の引換番号を伝えることによって、薬局は患者さんの来局前に薬を準備することができますし、この仕組みはこれまで処方箋原本の改修によって迅速に対応することが難しかった在宅医療でも活用が望まれると思っております。現在は、処方箋を発行する医師や調剤する薬剤師の関わりを明確にするために、電子処方箋発行時や調剤時用の医師や薬剤師のオンライン資格システムの整備が急ピッチで進められています。

マイナンバーカードのマイナポータルによる患者さんそれぞれの薬や検査に関する情報を組み合わせることによって、便利さだけでなく医療安全や医療費削減の効果も期待されています。オンライン診療と組み合わせれば、自宅にいながらオンラインで診察を受けて、電子処方箋によって現在よりも迅速に薬が自宅に届くという時代がすぐ目の前にあります。そのような時代に、どの医師の診療を受けてどの薬剤師から薬を受けっとって相談を受けながら療養するか……、かかりつけ医、かかりつけ薬剤師の役割が重要になります。今から信頼できる医療者を決めておく必要があるでしょう。