2018

04/12

院内の活動を院外に広げる活動 中小病院の役割その3

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
『地域医療・北海道』
社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院

ドクターズプラザ2018年1月号掲載

地域医療・北海道(30)

院外活動は医療で一番大切な予防につながる活動

病院には、診療とは別にやらなければならない院内の委員会活動があります。それは、医療安全対策委員会、感染対策委員会、栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)などです。患者さん集めに関係のある対外的な啓発活動にはどの病院も積極的ですが、委員会の院外での活動は、直接患者さんの増加につながるわけではありません。

例えば、乳がんの市民講座を行うと一時的に乳がん検診が多くなりますが、手洗い講習を介護施設で講習しても患者さんがすぐに増えるわけではありません。医療従事者ではない一般の方々は、委員会が具体的に何をやっているのか分からないと思います。それでも院内での活動に捉われず、院外に広げて活動することが必要と考えます。医療にとって一番大事な予防につながる活動だからです。

委員会はそれぞれ人員配置、会議の回数、活動内容、活動報告、必要な書類などが細かく決まっています。しかし、活動の成果は、診療報酬上は問われません。そのため活動が形だけのいわゆる形骸化となり、実際の活動の目標が委員会活動そのものとなり、活動した先の結果を重視しないことになりがちです。ただ、院外での活動は相手がいる活動なので形だけの活動とはなりません。活動の成果として相手の反応がすぐに伝わってくるからです。院内の活動ではイマイチ達成感のなかった委員会のメンバーも、大抵はやる気となりまたやりたくなるのが院外の活動です。院外の活動をすることがメンバーのモチベーションを上げ、形骸化していた院内の活動の質を上げることにもつながると思います。

三つの委員会と院外活動の実際

1.医療安全対策委員会

自分たちを訴訟などから守るためだけに委員会があるのではなく、患者さんの安全が目標でなければなりません。例えば、医療安全の院外活動としては、院外の施設職員や患者さんとその家族に対して安全面での質問に答えるコンサルトの窓口開設(メールや電話での対応)、先方の施設に手弁当で出向いての安全対策講習、入院前や退院後の医療安全面での施設との情報共有(転倒リスクなど)が挙げられると思います。

2.感染対策委員会

感染対策委員会の対外活動は、主に感染対策チーム(ICT)が中心となって行うことになります。医療安全と同じように外部からの質問などに答えるコンサルテーションはもちろんやらなければなりません。どんなことをコンサルテーションするのか具体的な例を挙げて、外部からコンサルテーションを求めやすいようにすることが必要です。感染対策のコンサルテーションの中心は感染対策認定看護師(ICN)が担います。院内で行っている手洗い講習も、院外で実施するとなると、施設職員対象、学校などの公共施設職員対象、学生対象、幼稚園保育園の職員や園児対象、家庭(父母など)対象などが考えられます。手洗い講習で啓発され、しっかり手洗いができるようになるだけでも、感染の予防には多大な効果があると思います。病院で職員が手洗いを繰り返しても、院外での感染症の流行は止められません。しかし、院外での手洗いの浸透は確実に流行を止める手段となります。

3.栄養サポートチーム(Nutrition Support Team : NST)

栄養サポートは慢性疾患の治療に関して、患者さんによっては薬物療法よりも効果のある重要な治療です。NSTは院内では低栄養の患者さんを中心に栄養面からサポートし、治療効果を最大限に発揮できるようにしています。活動の中心は管理栄養士です。慢性の心疾患や糖尿病の場合、薬物療法と同じくらい食事療法は重要です。毎月病院に来て薬剤師の薬事指導は受けるのに、管理栄養士の食事指導はそんなに頻回ではありません。そういうところも改善の余地があると思います。

また、訪問看護やヘルパーが介入している患者さんをリストアップして院外で栄養サポートができるようにしたり、訪問看護さんやグループホーム、ヘルパーさんを対象に手弁当でその施設に行って栄養サポートを行ったりすることも必要です。院外での栄養サポートは疾患が悪化するリスクを下げることにつながります。

このように、院内で義務付けられた委員会は、院内だけで活動するのはもったいないし、そこで得られる成果も限られます。成果を期待するなら、院外に活動を広げて、予防医療に一役買って出るのもフットワークの軽い中小病院の役割と考えます。