2022

06/01

“親は言うことを聞いてくれないもの”と考える

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご代表理事

隣(となり)の介護(19)

「親が自分の言うことを聞いてくれない……」

私が企業で行っている個別の介護相談で、非常によく受ける相談です。先日も、下記のような相談がありました。

母親との将来が心配

【ケース1】

Aさんは、足の悪い母親が転倒でもしたら大変だと、「買い物は私がネットで注文するので、出歩かないでほしい」と提案。ところが、母親は「自分の目で確かめたいし、外出が気晴らしになる」と拒否。ほかにも、良かれと提案することを「私を監視するの?」と怒り、だんだん話しづらくなったといいます。

【ケース1の適切な対応】

母親を大切に想うからこそのAさんの提案。ただ、Aさんの提案を押し通したり、母親の意見を差し置いたりすると、対立関係となり親子関係が悪化することもあります。家族介護で一番大切な親子の信頼関係を崩さないためにも、まずは母親の意見を尊重して、無理のない範囲でのサポートを心掛けましょう。

父親を支えるために……

【ケース2】

テレワークが可能となり、認知症の母親の介護をする父親をサポートするために実家に戻ったBさん。認知症についてネットや書籍で学んだBさんは、常にイライラする父親へ「母さんに、優しく関わるべきだ」とアドバイスするも、父親はプライドもありBさんの指摘を素直に受け入れません。Bさんと険悪になりながら母親の介護を抱え込んだ父親は、ストレスで胃潰瘍になり入院。そのうちBさんも限界となり、母親はショートステイへ。父親から「なぜ母さんを家で介護しないのか!」と責められ、「親のために実家に戻ったのに……」と、顔を曇らすBさん。

【ケース2の適切な対応】

Bさんは1人で抱え込み過ぎて、状況を悪化させてしまいました。高齢の親の生活に不安があれば、「この機会に!」と地域包括支援センターや母親のケアマネジャーに、まずは相談するべきでした。家族介護で大切なことは、直接的な介護はプロの助けを借りるということを忘れないでください。

IT化が進んだ現在、次のような「親が言うことを聞いてくれない」という相談も増えてきました。

親にスマホを持たせたが……

【ケース3】

「気軽にメッセージをやり取りしたり、顔を見ながらビデオ通話ができるアプリがあるので、親にもスマホを持ってもらいたい」と父親を説得して、スマホを持ってもらったCさん。「ご飯食べてる?」「今日は運動した?」など、こまめに連絡をしていると、父親はスマホの電源を切り、しまい込んでしまいました。「一人暮らしを心配して、連絡をしているのに、なぜスマホを活用しないんだ」と、Cさんは腹を立てています。

【ケース3の適切な対応】

親が「スマホなんか必要ない!」と訴える中、子どもから無理やり持たせるのは難しいでしょう。悪いことは言いませんので、諦めてください。あくまでも本人が興味を持つことが大前提で、スマホの所持は親の意思に任せるべきです。

何とか親にスマホを持たせて、子どもの価値観で親を見守って“あげている”つもりでも、監視カメラで見張られているように煩わしく感じられてしまうことがあります。子どもの責任を強く受け止め、子ども側の安心を得るための手段としてスマホを持たせようとしていないか、もう一度、考え直してみてください。

機種変更で新たな問題が生じた

【ケース4】

「ガラケーのサービスが終了する前に、スマホに機種変更をしてあげたのに、親がスマホの使い方が分からず、電話すらできなくなった」とDさん。親にスマホを持ってもらうことで、新たな問題が生じてしまいました。

【ケース4の適切な対応】

固定電話やガラケーのままでも、親が使い慣れているのであれば、そのままでも問題ないのではないでしょうか(3G回線は終了しますが、4Gに対応するガラケー機種もあります)。私たちに便利でも、親が便利と感じるとは限りません。どんな手段であっても、親と気持ち良く“コミュニケーションを取ること”が大切です。

一方、携帯電話を持たせたことで「昼夜を問わず何十回も電話が掛かってくる」という相談もありました。仕事中に対応できずにいると、親は電話に出ない子どもに腹を立て、電話口でケンカに。親が携帯電話を持っていないときの方が、親子関係が上手くいっていたようです。

どのケースも「子どもが親を説得して、介護するのが親孝行」という考え方が、状況を悪化させ、親子関係が悪化する原因になってしまいます。親を大切に想う気持ちは分かりますが、そもそも「親は言うことを聞かせる対象なのだろうか?」と、考えられるような、心に余裕を持った関わり方が重要です。