2015

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薬育

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2015年11月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(34)

始まったばかりの「薬育」とは!?

医薬品に関する正しい理解と健康管理

Q1 最近「薬育」という言葉を聞きますが、薬のことを勉強することですか?

A1

「薬育」とは文字どおり薬に関する教育のことです。一生涯のうちに薬を服用したことがない方はいらっしゃらないでしょう。それほど身近な薬ですが、薬の効果はともかく、副作用、さらに薬の害について意識して服用されている方は少ないのではないでしょうか。

薬育は薬の正しい服用の仕方や副作用について、子供のうちから教育しようとする試みです。背景の一つに、覚せい剤やシンナー、危険ドラックの乱用の問題があります。これらは健康を害するだけでなく、人間としての生活、社会を崩壊させてしまいます。小さなうちからその危険性を理解して、興味本位で使用することにならないように教育する必要があります。友人などから誘われても、断ることができるようになることも大切です。未成年の飲酒や喫煙も同様です。

平成24年からの中学校学習要領にも「個人生活における健康・安全に関する理解を通して、生涯を通じて自らの健康を適切に管理し、改善していく資質や能力を育てる」という目標が掲げられ、具体的には「健康の保持増進や疾病の予防には、保健・医療機関を有効に利用することがあること。また、医薬品は正しく使用すること」と盛り込まれました。これらの啓発活動にも薬剤師の働きは重要で、特に学校薬剤師は大きく関わっています。

薬育は薬のことだけでなく、社会的に問題となる行為に対する自己の強さを育てる教育とも言えるのではないかと個人的には考えます。

薬育とセルフメディケーション

Q2 「薬育」はセルフメディケーションについて学ぶことも含まれますか?

A2

薬育が重要視されているもう一つの背景に、セルフメディケーションの推進があります。平成26年6月に薬事法が改正され、医薬品のインターネット販売が合法的となり、セルフメディケーションは大きく進みました。また、薬事法という名前も「医薬品・医療機器等の品質、有効性および安全性の確保に関する法律」と変わりました。インターネット販売が許可されているのは、薬剤師による対面販売が義務付けられている要指導薬品や薬局医薬品以外の第1類、第2類、第3類の医薬品です。それぞれのリスクによって分類されており、第1類はインターネットでも質問事項に答えなければ購入することができませんが、第2類、第3類の医薬品については、患者自身の判断で自分の症状に合わせて購入しているのが実情です。医薬品に関する正しい知識を身に付けることが大切なのは言うまでもありません。

しかし、大切なのは薬の選び方だけではありません。そもそもセルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関(WHO)は定義しています。つまり、日頃から体調管理をして予防することも含まれているのです。バランス良い食事を取り、適度な運動を行い、休養を取って健康管理をすること、病気になったら早めに手当てをし、必要に応じて医師に受診することがセルフメディケーションです。薬育はまさしくセルフメディケーションの教育といっても良いでしょう。

薬剤師はセルフメディケーションの推進においても大切な存在です。日本国内には5万7千軒を超える薬局があり、コンビニエンスストアよりも多く、その全ての薬局に薬剤師が居ます。薬育の試みはまだ始まったばかりですが、高齢化社会が進んで社会保障費が不足する現代において、重要な教育だと考えます。教育内容についても幅広く、様々な内容が盛り込まれていくことも予想されます。現在、かかりつけ医師とともに、かかりつけ薬剤師を持つことが重要だと言われておりますが、薬育によって薬剤師が国民にとってさらに身近な存在となり、健康な生活の維持に寄与できることを期待します。