2019

12/10

薬を服用するときの飲み物に注意!? 牛乳やお茶、コーヒー等々……。

小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2013年8月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(17)

コップ一杯の水で薬を飲む理由

Q1 薬はなぜコップ1杯の水で飲まなければいけないのですか?

A1

薬は、体の中に入ってから溶けて吸収され、様々な部位に分布して効果を現し、分解されたのちに体外に排泄されます。つまり内服薬では溶けなければ吸収されず、効果も現れないということです。服用する時の水の量が少なかったり水無しで服用した場合、薬は溶けにくくなるので吸収の速度が遅くなり、効果も充分に発揮されません。それだけでなく食道に引っかかったり、くっついたりして、そこで溶けてしまい、食道潰瘍を起こすことがあります。

内服薬はコップ一杯の水またはぬるま湯で効果があらわれるように設計されています。内服薬の効果試験も同様に行われており、効果が発現するまでの時間もそれをもとに計算されています。なお、薬の成分によっては熱いものでは分解されてしまうものもありますので、温度にも注意しましょう。

水以外の飲み物での服用

Q2 薬は牛乳やお茶など、水以外の飲み物で服用してもいいですか?

A2

毎朝牛乳を飲むという人は多いと思いますが、薬を服用するときには注意が必要な場合があります。牛乳にはカルシウムが含まれており、薬の成分と結びついて吸収が弱まることがあります。テトラサイクリン系の抗生物質やニューキノロン系の抗菌剤がこれにあたります。

また、牛乳は腸で溶けるようにつくられた薬の吸収に影響します。腸で溶ける薬は、胃酸では影響を受けずに腸で溶けるように設計されています。牛乳のpHは5~7のため、腸で溶けるためのコーティングが胃の中で溶けてしまい、効果が減弱されたり、無くなったりしてしまうのです。いずれも、牛乳と2時間くらいずらして薬を服用するようにしてください。

お茶での服用は、鉄剤の吸収が悪くなると一般的に知られておりますが、これはお茶に含まれるタンニンが影響するためです。タンニンと鉄が結合してしまい、吸収が悪くなるという理由ですが、一般に家庭で飲まれている程度の緑茶の場合、鉄の必要量は吸収されるので気にされる必要は無いでしょう。気になる場合には牛乳同様時間をずらして服用すれば心配ありません。

他にもコーヒーは、カフェインによる胃酸の分泌促進が薬の吸収に影響したり、胃腸障害の増加、風邪薬等カフェインを含む薬との成分重複による副作がでることがあります。睡眠導入剤や安定剤では、カフェイン自体の興奮作用による作用減弱が考えられます。

最近流行している炭酸飲料の液性は、清涼感を求めるメーカーによって幅があるようですが、一般的には酸性に近いため、消炎鎮痛剤等の胃腸障害が出やすくなると思われます。また、制酸剤を含む胃薬では、薬が炭酸飲料と反応してしまうので効果が減弱してしまいます。薬は水で服用するように作られておりますので、基本的には水で服用するのがよいのですが、食後の飲み物を同時に取ることで、それらの影響を受けることがあります。注意しましょう。

グレープフルーツジュースが薬に与える影響

Q3 よくグレープフルーツジュースが薬に影響するといいますが、どのような理由からですか?

A3

薬を代謝する酵素としてチトクロームP450がありますが、そのなかの分子種のひとつであるCYP3A4の働きをグレープフルーツが阻害することから、薬の代謝が阻害され、薬の効果が強く出たり、副作用が発現しやすくなります。注射薬の場合には影響を受けないことから、消化管に存在するCYP3A4がグレープフルーツの影響を受けると考えられています。

CYP3A4によって代謝される医薬品として、降圧剤のカルシウム拮抗薬が良く知られておりますが、他にも多くの医薬品があります。その都度、薬剤師にご相談ください。

 

 

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