2013
01/20
薬の服用
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薬
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株式会社メディカル・プロフィックス 取締役、株式会社ファーマ・プラス 取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長
ドクターズプラザ2013年1月号掲載
小黒先生の薬の話Q&A(10)
妊娠中の薬の服用が胎児に与える影響
Contents
妊娠中の薬の影響
Q1 風邪を引いて薬を服用していましたが、妊娠していたことが分かりました。大丈夫ですか?
A1
妊娠中の薬の服用を避けた方がよいのは、胎児に対する影響を最小限にしたいからです。そのような影響のある薬は妊婦に禁忌となっていますが、服用した時期と服用量によって危険度が異なってきます。妊娠中に薬を服用した際には、奇形が起こる「催奇形性」を心配されるお母様が多いようです。催奇形性は妊娠初期の胎児の大切な器官が出来る頃(妊娠2~4カ月)が最も危険とされており、今回のご質問のように妊娠に気が付かないうちに風邪薬を服用してしまい、不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、市販されている風邪薬等を、通常の服用量、短期間服用したことが原因で起きる奇形の可能性は極めて低く、自然発生的に起きた奇形との判別が難しいところです。
妊娠中の薬の影響としては催奇形性の他に「胎児毒性」があります。妊婦が服用した薬は胎盤を通じで赤ちゃんの体内にも入っていきますが、胎児の薬に対する代謝機能等が未発達のために、薬の影響が強く出てしまうことです。胎児毒性は妊娠後期に現れやすく、妊娠中は妊娠初期だけでなく薬の服用に注意が必要ということになります。一方、子宮の収縮や弛緩に影響を与える薬も、早産を招いたり逆に妊娠期間を長引かせたりします。妊娠を希望される方は、日頃から基礎体温を測定して妊娠をいち早くチェックし、体調を整えることが大切です。また男性が服用している薬の中にも、胎児に影響を与えるものがありますので、事前にご相談ください。
妊娠中の薬の服用は注意が必要ですが、風邪を引いた時などは薬を服用して体を休めた方が、胎児に与える影響を考えた時には良い場合もあります。また、慢性的に薬を服用している患者様は妊娠時に薬の服用を減らす等、医師の指示の基で服用する必要があります。自己判断せずに、医師や薬剤師にご相談ください。
高齢者は薬の服用量にも注意
Q2 高齢者はたくさんの薬を服用していることが多いですが、大丈夫なのでしょうか?
A2
高齢になると顔や身体のしわが増えたり、姿勢が悪くなる、外見的に老化するのと同様に、身体の中の機能も老化してゆきます。薬を服用するときの飲み込む力、吸収力の低下、血液の流れが悪くなることによる分布の遅延、肝臓や腎臓の機能低下による代謝、排泄機能の低下など、薬物動態の全ての段階で老化による影響が出てきます。つまり高齢者では、薬の効果が現れにくく、効果が出てきた後は、身体の中に長く留まり、なかなか排泄されないということです。ですから、高齢者は薬の服用量にも注意しなければなりません。
さらに高齢者では、生理機能の低下によってさまざまな症状が現れ、結果的に複数の医師への受診が増え、服用している薬の種類も知らず知らずのうちに増えていってしまうことが多く見受けられます。薬局にいらっしゃる高齢の方の薬を拝見すると、同じような薬が複数の医療機関で処方されていたり、薬の相互作用が問題となっていることもあります。また、一般的に薬の副作用は服用している薬の種類が多くなるほど、起こりやすくなります。お薬手帳を携行し、医師や薬局で必ず見せるようにしましょう。