2017

03/15

胃腸障害と薬の服用

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス 取締役、株式会社ファーマ・プラス 取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2017年3月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(42)

薬に胃腸障害はつきもの!?

胃腸薬に含まれる酸化マグネシウムとは

Q1 胃腸薬で下痢することがあると聞きました。本当ですか?

A1

総合胃腸薬には、酸化マグネシウムという成分が含まれているものが多くあります。酸化マグネシウムは胃酸を中和して胸焼けやゲップなどの症状を改善しますが、胃の中で胃酸(HCl)と反応することで塩化マグネシウム(MgCl2)になり、次に腸内に分泌される膵液中の重炭酸(NaHCO3)と反応して、炭酸水素マグネシウム(Mg(HCO3)2)となり、これが腸管内への水分滲出を誘導して便を軟らかくします。そのため酸化マグネシウムは副作用の少ない便秘薬としても広く使用されておりますが、制酸剤として総合胃腸薬にも1日量として500㎎以上の酸化マグネシウムが含まれているものもあり、それによって下痢をしてしまう場合があります。胃腸薬といってもさまざまな種類がありますので、症状を薬剤師に伝えて選んでもらいましょう。また、長期胃腸薬を服用しなければいられないような症状が続く場合には、病院に受診して検査してもらうようにしましょう。

痛み止めと胃炎の関係

Q2 痛み止めを服用すると胃が荒れるとよく言いますが、どうしてですか? 他の薬では胃は荒れないのですか?

A2

痛み止めとして使用されている消炎鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)は、痛みのもととなる物質を作り出す酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを妨げて、解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮します。COXにはCOX-1とCOX-2の二種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持のために定常的に作られ、胃粘膜を保護する物質を産生していますが、COX-2は主に炎症があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。消炎鎮痛剤はこのCOX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を表しますが、同時にCOX-1の働きも抑えるため、胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、胃炎や消化性潰瘍を起こす原因になるのです。最近では、COX-2のみに選択的に作用する消炎鎮痛剤もあり、リウマチなどで長期に消炎鎮痛剤を服用する必要がある患者さんに多く使われています。

また、脳梗塞や心筋梗塞の患者さんが血液を固まりにくくするために毎日服用している低用量のアスピリンも同様です。以前は、痛み止めとして服用するような高用量ではないので消化性潰瘍は起こりにくいと思われていましたが、現在では必ず胃薬と一緒に処方されています。痛み止めによる消化性潰瘍は、初期では胃痛として感じないこともあります。何となく胃が重い、胸焼けするというような症状がある場合には早めにご相談ください。

胃は、食べ物や薬が直接当たるところですから、薬には一般的に胃腸障害はつきもので、食後に服用するように言われているのはこのためです。消炎鎮痛剤は上記のような作用でさらに胃潰瘍が現れやすくなります。食後に服用する指示のある薬の空腹時の服用は避けて、コップ1杯の水で服用してください。

治療の継続と定期的な検査を

Q3 胃カメラ検査で胃潰瘍と言われて薬が処方されました。最近は薬をもらっているだけなのですが、いつまで続けなければならないのでしょうか?

A3

胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称して消化性潰瘍と言いますが、薬物治療は胃酸の分泌を抑えて、胃が自らの胃酸で荒れてしまうのを抑えます。特に胃壁細胞にあるプロトンポンプという胃酸の産生に関与しているところに作用する、プロトンポンプ阻害薬という分類の胃薬は胃酸抑制効果が強く、よく使用されています。プロトンポンプ阻害薬は初期6〜8週間の服用期間が決まっており、自覚症状は顕著に改善していきますが、重症度に応じてその後も薬を変更しながら治療を継続する必要があります。喫煙や飲酒、不眠などの生活習慣を改善しなければまたすぐに症状が悪化してしまうからです。

怪我をした時には傷は目に見えており、かさぶたなど治っていく経過も確認することができます。胃潰瘍は直接私たちには目に見えませんが、胃痛などの自覚症状が改善してもまだ傷ついた胃壁は完全に治っていないと思ってください。医師の指示があるまで継続して薬を服用し、治った後も胃潰瘍になりやすい生活環境にあると考えて、定期的に胃カメラ検査などを受けるようにしましょう。

 

 

 

 

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