2017

09/15

義務として課される必要情報の開示とは

  • 医療法

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竹内 千佳
『医療法』
行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。

ドクターズプラザ2017年9月号掲載

医療法(3)

医療機能情報提供制度

患者の医療機関選択に役立つ

今回は、医療機能情報提供制度についてご紹介します。診療所や病院にかかる際、かかりつけ医がいなければ、どこの医療機関を受診するかを自身で選択することになります。その場合、医療機関の開設場所、診療時間をはじめ、これまでの医療実績や治療方針等その医療機関の情報が分からないと選択できません。そこで、医療法では6条の2において医療機能情報提供制度を定めています。この医療機能情報提供制度は、平成18年第5次医療法改正により導入されました。この制度が導入される以前、私達が医療機関の情報を知る手段は、各医療機関が行う広告やウェブサイト等の自発的な情報発信に委ねられていました。これらの情報は、各医療機関に任されているため、情報の統一性がありませんでした。また、地域による格差も激しく、患者である私達が受診する医療機関を選択する上で不十分な状態でした。

そこで、医療法は医療機能情報提供制度を定めることによって、これらの格差をなくし、情報を統一して患者が必要な情報を取得することができるような制度を整えました。それが医療機能情報提供制度です。現在では、この医療機能情報提供制度によって、患者が医療機関選択の際に必要な情報が網羅的に取得できるようになっています。

この制度の根幹として、医療法は各医療機関に必要情報の開示を義務として課しています。医療機関は基本情報(診療科目、診療日、診療時間等)のほか、診察可能な疾患や治療内容等一定の情報を都道府県に報告すると共に、医療機関において閲覧できるようにする義務があります(医療法6条の3第1項)。一方、都道府県は、これら各医療機関から報告された事項について、情報を整理、集約して、都道府県のウェブサイトに掲載する等の方法によって、住民・患者が利用しやすいよう情報を公表する義務があります(同条第5項)。医療機関が都道府県に報告する情報としては、主に「医療機関が都道府県に報告する情報例(表1)」があります。

開かれた医療制度の実現に向けて

これらの医療機能情報は、各都道府県が情報提供の専用ページを作り、そこで公開されています。例えば東京都では、東京都医療機関案内サービス「ひまわり」(リンク)にて、情報を提供しています。全国の都道府県ごとの情報は厚生労働省のウェブサイト(リンク)からアクセスすることができます。

また、公表システムについては、利便性向上の観点から、検索に便利な機能を可能な限り追加するものとされています。例えば、自宅に近い医療機関の表示や現在診察中の診療機関のみの表示、土日祝日診察可能な医療機関の表示等利便性の高い検索機能があります。また、外国語による情報提供や、「もの忘れ外来」等のキーワード検索に対応する等、利便性の高い検索システムの追加が見込まれています。

患者である私達にとって、受診する医療機関がどのような施設であるのかを知ることはとても重要なことです。もちろんこれらの情報を民間の検索システムで取得することも可能ですが、民間の情報サイトは当該医療機能情報を元に作成していることも多く、これらの情報源ともなっています。医療法が義務として情報提供を課すことで、全国一律に医療機関の必要情報が開示されていることは、開かれた医療制度実現のために必要不可欠といえるでしょう。

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