2019

04/25

社会医療法人とは

  • 医療法

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竹内 千佳
『医療法』連載
行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。
実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。

ドクターズプラザ2019年5月号掲載

医療法(10)

はじめに

本シリーズでは、医療法人の種類をご紹介します。第1回は、社会医療法人を取り上げます。社会医療法人とは、主として公的医療機関が行う事業(救急医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)を担う医療法人です。これらの法人を社会医療法人として認定することで、継続的に良質かつ適切な医療を、効率的に提供する体制の確保を図ることを目的として創設されました(医療法42条の2)。制度の創設は、2006年医療法改正によって制定されましたが、実際に都道府県による認定がされたのは2008年からです。2019年現在、全国で302法人が認可を受けています。

⒈制度創設の趣旨

これまで、公益性の高い医療は、公的医療機関がその役割を担ってきました。しかし、長年の赤字経営による医療基盤の脆弱化や官民協働の観点から、その役割を公的医療機関に代わって民間の医療法人が担うように制度化されました。

【「公益性の高い医療」とされているもの】

•休日診療、夜間診療等の救急医療
•周産期医療を含む小児救急医療
•へき地医療、離島医療
•重症難病患者への継続的な医療
•感染症患者への医療
•筋萎縮性側索硬化症(ALS)など継続的な在宅医療を必要とする患者への医療や、当該患者の療養環境を向上する活動
•災害医療
•精神救急医療
•心神喪失等で重大な加害行為を犯した者への医療および観察等に関する法律にもとづく指定医療機関が実施する医療
•患者の早期社会復帰につながる医療連携
•先進的な医療安全や疾病予防に取り組んでおり、患者や地域の医療機関に対し無償で相談助言・普及啓発する活動
•質の高い医療従事者の確保・育成に関する活動
•高度な医療技術を利用した研究開発を実施しており、その研究結果情報を患者や地域の医療機関に無償で提供する活動
•治療との有機的連携による治験(活動)など

⒉メリットとデメリット

公益性の高い地域医療の担い手である社会医療法人には、一般的な医療法人には認められていないメリットが付与されています。公的医療機関に代わって、これらの役割を果たしていることから、その分の公費が投入され、さらに税制上の優遇措置が受けられます。具体的には、税法上公益法人の扱いとなるので法人税率は19%となり、本来事業は非課税となります。また、一般の医療法人には許されていない、収益事業を行うことができるようになります。この収益事業で得た利益を本来事業へ支出した場合、最大200万円まで寄付金として損金算入できます。さらに、円滑な資金調達のため、社会医療法人債の発行が認められています。

【厚生労働大臣の定める社会医療法人が行うことができる収益業務】

(収益業務の種類)

第二条 収益業務の種類は、日本標準産業分類(平成二十五年総務省告示第四百五号)に定めるもののうち、次に掲げるものとする。
一 農業、林業
二 漁業
三 製造業
四 情報通信業
五 運輸業、郵便業
六 卸売業、小売業
七 不動産業、物品賃貸業(建物売買業、土地売買業を除く。)
八 学術研究、専門・技術サービス業
九 宿泊業、飲食サービス業
十 生活関連サービス業、娯楽業
十一 教育、学習支援業
十二 医療、福祉(病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に係るもの及び医療法第四十二条各号に掲げるものを除く。)
十三 複合サービス事業
十四 サービス業

こうしたメリットを受ける反面、社会医療法人には組織としての中立性が強く求められており、その認定要件は厳しいものとなります。

【社会医療法人認定要件】

①同一親族等関係者の制限
役員や社員(評議員)の親族等の数が、総数の3分の1を超えないこと
②救急医療等確保事業に係る業務の実施と基準とその実績
③公的な運営に関する要件
理事6名以上、監事2名以上、報酬制限等
④解散時の残余財産の帰属先の制限
⑤その他
理事会機能の充実

とりわけ、①親族等の制限割合、②救急医療の実績とその継続、③役員の報酬の点が障害となる医療法人が多いようです。例えば、救急医療の場合、夜間休日の救急搬送が3年平均で750件以上であることが必要となり、恒常的な受け入れ体制の整備が求められています。

※厚生労働省「社会医療法人の認定状況(平成31年1月1日現在)」より