2013

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睡眠薬(2)

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2013年12月号掲載

小黒先生の薬の話Q&A(21)

不眠症が改善したら、減量、休薬を

処方はなぜ30日分!?

Q1 睡眠薬を服用していますが、いつも30日分しか処方してもらえません。血圧の薬などは1カ月以上もらえるのにどうしてですか?

A1

睡眠薬や安定剤の多くは向精神薬に分類されます。そのため麻薬・向精神薬取締法により保管や譲渡等の管理について、乱用等を防ぐ目的で厳重に決められております。これをもとに、厚生労働省からの告示によって14日や30日の投与制限がされているものがほとんどです。以前は、全ての医薬品に投与制限が設けられておりましたが、平成14年に長期投与の制限は原則撤廃され、症状が安定している患者様については長期間の処方が認められるようになりました。その中で、新薬と向精神薬の投与制限だけが残ったのです。ご参考までに新薬の投与制限は、原則的に販売開始後1年間は14日間とされています。

睡眠薬は癖になりますか?

Q2 睡眠薬をどうしても眠れないときだけ服用していますが、癖になりますか? 睡眠導入剤だったら癖になりませんか?

A2

以前よく使用されていた睡眠薬の中には習慣性の強いものがあり、癖になるという印象を持たれている方も多いでしょう。しかし、現在医師から処方される睡眠薬は習慣性が少なく、不眠症が改善されれば癖になることはほとんどありません。

眠れないときのみに服用する方法(頓服)は比較的軽症の不眠症の場合には有効ですが、服用しない日に不眠が悪化するときには毎晩服用した方がよい場合もあります。また頓服に適した薬と、そうでない薬がありますので、診察、処方時に医師や薬剤師に確認するようにしましょう。また、睡眠導入剤と睡眠薬に本質的な違いはありません。作用時間の短い睡眠薬が「睡眠導入剤」と呼ばれているだけで、作用の強さや習慣性の有無を区別するものではなく、症状の強さや不眠症の特徴によって使い分けるために便宜的に付けられた俗称です。一方、安定剤は不安等を解消することを目的に使用される薬ですが、就寝前の不安や緊張をほぐすことによって眠りやすくすることで、睡眠薬代わりに使用されることもあります。

Q3 睡眠薬をやめたいのですが、服用しないと眠れません。どのようにやめたら良いですか?

A3

長期間継続していた睡眠薬を中止すると、再び不眠症状が出たり、昼間もイライラしたりすることがあります。これらの禁断症状や離脱症状は、不眠症が改善していれば通常は数日でなくなりますが、不安感や神経過敏な状態が長く続くこともありますので注意が必要です。その場合には不眠症が改善していないか、再び不眠症になってしまったと考えた方がよいでしょう。

睡眠薬を中止する場合には、徐々に減量することで禁断症状や離脱症状が起こりにくくなります。まずは4分の1の量を減らして1~2週間服用し、問題が無ければさらに4分の1減らすなどして徐々に減量してゆきます。2種類以上の睡眠薬を服用している時には、より緩やかに減量してゆく必要があり、減量する睡眠薬の順番も考慮しなければなりません。不眠症が改善したかどうかは、薬の服用によって夜間の不眠症状が改善し、また充分に睡眠をとることで、昼間の心身状態がよいことがポイントです。ご自身の判断で急に薬を中止するとかえって不眠症が悪化することがあるので、主治医に相談しながら減量するようにしてください。

不眠症の患者様の中には、長期間にわたって睡眠薬の服用を継続する必要のある方もいらっしゃいますが、基本的には睡眠薬は無期限に継続する薬ではありません。可能な限り減量、休止したりしながら、生活習慣の改善も試みた治療が必要ですし、不眠症が改善したら、適切に減量しながら薬をやめることを目的とするべきです。ご自身の睡眠の状態をみながら、医師や薬剤師に状態をご報告、ご相談ください。

 

 

 

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