2019

02/14

病院給食の変革

  • 病院給食

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池田 直人
株式会社LEOC 専務執行役員

ドクターズプラザ2019年1月号掲載

病院給食(最終回)

人材不足という壁

2018年度診療報酬改定は、2025年の超高齢社会を見据え大きな方向性を示す改定となりました。改定率は本体0.55%を確保されましたが、超高齢社会を乗り切るためには十分とは言えず、医療介護福祉に携わる人財確保などの厳しい状況下に直面しています。

2040年には高齢化のピークを迎えます。2025年から2040年にかけ、高齢者が増えること以上に、現役世代が減る問題が出てくるでしょう。今後を見据え、高齢者が適切に医療を受けられるように、地域包括ケアの構築に役立つ制度づくりを推進することや現役世代の減少に対しては、健康寿命を延ばして、年齢にかかわりなく元気に働ける人を増やすことが肝要です。そのような大きな変革の中、給付と負担の在り方や保険者機能の強化、高齢者医療制度の在り方、特に、在宅へのシフトなども含め、医療や介護の生産性を向上させていかなければなりません。少ない頭数で、国民にしっかりとサービスが届くような仕組みをつくり、健康寿命の延伸や生産性の向上を組み入れなければいけません。

そのような背景から、病院給食を取り巻く環境も著しく変化し、大変厳しい時代になることを懸念しております。これまでの給食委託事情は、直営から委託へ切り替わる条件として正社員比率を下げ、パート雇用を推進していく手法で直営よりもコスト削減が図れ、スケールメリットをもたらすことができました。その分、従業員教育や適材適所の配属など、人事異動を含め、各社対応されてきました。しかし昨今では、パート雇用も難しく、時給を大幅にアップしても応募者がゼロの地域もあり、止む無く正社員を人事異動で配属するケースも増えてきました。このように、パート雇用が不足していることから、人件費が高騰しており、これまでの管理費では賄いきれず、値上げ交渉に転じていかなければならない病院もあります。

給食に係る経費と作業工程

平成29年度病院会計(厚労省)では、患者一人一日当たりの給食部門の収支は、全面委託・一部委託・直営の全てで赤字となっております。これは、委託費には消費税が掛かること、人件費の高騰、パート雇用の減少、水光熱費および食材費の値上がりに加え、ノロウイルスによる感染拡大防止のための出勤停止による休業補償と応援要請などのためと考えられます。

病院給食の場合、医療関連サービスマーク、大量調理施設マニュアル、入院時食事療養費、HACCPなど、安全を担保するためのルールが数多くあります。特に衛生基準においては、食事提供のみではなく、環境衛生において、空調ダクト、フィルター、設備器機類、グリーストラップ、冷蔵・冷凍庫、天井、床、壁などの清掃業務も含まれており、食中毒防止対策として、前日調理の
禁止、翌日の野菜の切り込みも、加熱調理されるものに限定、野菜の洗浄消毒、特に生野菜の消毒対応などは、流水で何度もよく洗い、電解水や次亜塩素酸ナトリウム溶液での消毒対応など、腸管出血性食中毒予防のため、丁寧に消毒することが求められております。他にも、機器類の取り扱いの中で、自動野菜専用カッターなどの清掃消毒も、機械を分解して、対応しなければならず、労務削減が一筋縄ではいかない実状であります。

大型急性期病院での早番勤務は深夜勤務の時間帯に出勤しなければならない状況下にあり、業務範囲も広く、衛生システムなど、抜本的な改革が急務であると感じております。国内においては、清掃設備の導入が遅れており、床の清掃などにおいても、大半が未だにデッキブラシで擦る作業をしております。業務委託契約において、治療食や食形態の複雑な対応、献立技術などのスペシャリストの配属などを最優先に人員構成しておりますが、清掃面においては、重労働であり、労働時間数も費やされる中、そこの人員構成は比較的、軽視される傾向であったことから、契約時には、清掃担当者の確保と業務量を含め作業工程の見直しが肝要です。

今後の課題

今後、給食委託会社も人手不足は、大きな課題となります。そうした中、人財雇用や退職者の軽減など、いかに人を大切にし、働きやすい環境が整えられるか……。日本メディカル給食協会(以下、協会)の理事の一人として、協会と医療機関の皆さまと一緒に前向きな姿勢で考えたいと思います。

最後に、厚生労働省が推進している在宅においては、日本栄養士会と協会の連携で進めることを推奨します。そのメリットは、全国各地に協会加盟会社が存在していること。委託企業所属の管理栄養士と栄養士は、全員調理ができることです。今後、地域包括ケアに関わる専門チームの従事者が必要となります。また、老々介護から老若介護の時代に入り、地域連携包括ケアを推進するための専門チームの連携強化を図っていかなければ、家族への負担のみが大きく伸し掛かってしまうという懸念があります。

慢性的な人手不足の時代を避けて通れない中、本来の在宅ケアの原点に戻り、実務対応を誰が取り組むのか? 真剣に考え直さなければならないと痛切に思います。

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