2018

04/12

病院は災害時に機能するか? 当院を含めた病院の現状

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
『地域医療・北海道』
社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院

ドクターズプラザ2018年3月号掲載

地域医療・北海道(31)

はじめに

震災が重なり、災害時の準備は急務と言われながらも、実際は公的なところからの支援などはほとんどなく、病院での災害に対する準備は十分に進んでいないのが現状です。災害時、病院には何が求められるのでしょうか。災害発生時にまず求められるものとして、「入院中の患者の治療」、「新規の患者の治療」、「被災者の避難場所としての機能」、「人的・施設的な限界、医療資源」等があります。今号では、これらについて考えてみたいと思います。

「入院中の患者の治療」等、四つの問題

1. 入院中の患者の治療は継続できるか?

①人的な問題

徒歩圏内に職員のほとんどが住んでいるような病院なら可能ですが、車や公共交通機関で通勤している職員が多くを占める病院なら、災害時に治療を継続可能な十分な、数の職員が集まるかは不確定であり、集まらない可能性の方が高いと考えられます。例えば、災害時に日勤帯ならそのまま不眠不休で働けば取りあえず継続可能ですが、夜勤帯ならそのまま日中の業務を継続するのは不可能です。どうやって災害時に人を確保するのかは何も決まっていません。病院に職員が自主的に集まるのを期待するしかないというのが現状です。非常に危うい状態です。

 

②施設の問題

電気・ガス・水道・重油というものを大量に継続的に消費するのが病院という施設です。電気が止まり、自家発電が限界を越えれば、生命維持装置である人工呼吸器、透析機器、持続の点滴などは止まりそれを必要とする患者さんは死を迎えることとなります。大抵の病院では飲料水は3日間程度持つように備蓄していますが、それは治療用ではありません。透析などさらに多量の水を消費する治療は、電気があっても水不足では継続できません。また、北海道で冬であれば暖房が止まることは、体温調節がままならない入院患者の死に直結します。

 

③医療資源の問題

点滴や経口薬などを備蓄することは不良在庫を常に抱えることとなります。実際、月末には在庫を少なくするような病院もあり、治療に必要な医療資源の備蓄は病院の義務ではありません。あくまでも医療倫理が根底にあるボランティアで、不良在庫を抱えることになります。災害の起きたタイミングによっては投薬加療の中止を余儀なくされ、状態が悪くなる患者が発生する可能性は多くあります。

2. 新規の患者の治療は可能か?

病院に来た患者は診療せざるを得ないし、多くの医療従事者は診療してしまうと思います。人員や医療資源が十分確保できない状況で入院患者の治療を継続しながら、さらに外来患者にも対応するのは限界があると考えます。情熱と体力の続く限り、ギリギリまで現場で頑張って人的・医療資源的な助けを待つというのは仕方がないところと考えます。

3. 被災者の避難場所として機能するのか?

一般の被災者の方々も大きくて丈夫な建物である病院が近くにあれば助けを求めるのが当然です。実際、ロビーや廊下は解放可能だと思います。さらに何かあっても病院なら安心という気持ちから、病院を避難場所に選んでしまう方も少なくないと考えます。特に、小樽市は高齢者の割合が全国的に著しく高いため、移動距離が短い近くの病院に高齢者が身を寄せる可能性は十分予想されます。

4. 人的・施設的な限界、医療資源の枯渇が起きたら?

どの患者の医療を継続し、どの患者の医療を中止するのか、選別が迫られます。災害時のトリアージは、災害が起きた瞬間だけしなければならないわけではありません。さらに過酷なのは途中でトリアージを迫られる可能性が十分あるということです。二人の軽症者を助けるために一人の重症患者を助けないということが起き得るということです。災害時には治療を中止される可能性がどの患者、どの被災者にも起こり得るということが、一般の方々にはほぼ知らされていません。病院に来たのに治療をされないという事実を突きつけられた時、一般の方はそしてその家族は受け入れられるのでしょうか? 多分、分かっていても受け入れられないことだと思います。ましてやそういうことが起こり得ることを知らないならなおさらです。そこを納得してもらうため、さらに医療従事者のエネルギーが使われるわけです。

このように災害時の病院に必要なマンパワー、施設、医療資源は十分に用意されていませんし、どれぐらい必要かも議論されていません。さらにそこには公的な補助もほとんどありません。“人”と“施設”と“物”が十分に準備されなければ災害時に頼ることができないと思いますが、皆さんはどう思いますか? 病院のボランティア精神だけでは、用意できないと思いますがどうでしょうか。