2017

07/20

病理医の業務と体制

  • 病理診断

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末松 直美
社会福祉法人 聖隷福祉事業団
聖隷横浜病院病理診断科

ドクターズプラザ2017年7月号掲載

病理診断科の紹介(2)

病理医の過去と現在

前回「病理診断科」を紹介する中で、“標榜科となって10年が経たとうとしているにもかかわらずまだまだ認知度が低い”と書きましたが、「病理診断科」で働く「病理医」は存外知られ始めているようです。それというのも、「病理医」を主人公にした漫画とこれがドラマ化されてテレビで放映されたことなどがその一因です。その極めつけは、天才子役といわれる芦田愛菜さんが、先頃、将来の夢を尋ねられ「病理医」になること、と答えたとか……。

「病理医」は、かつて病院病理医と呼ばれていました。この呼称は、大学で病理学の研究に研鑽を積んでおられる病理学者との間に一線を画するという印象があります。病理学が病気の診断という領域に足を踏み入れた当初は、大学の基礎病理学教室に病理診断を仰ぐという形を取っていました。しかし、次第に病理学教室の病理学者が病院へ派遣されようになり、病院で病理診断をする医師、すなわち病院病理医として業務に携わるようになったのです。

病理医育成の新体制

現在では、2004年に制度化された初期臨床研修制度と来年度から実際に動き出すといわれている新専門医制度により、医師の卒後研修が整備されつつあります。医学部を卒業し医師免許を取得した医師は、2年間の初期臨床研修を受けることが義務付けられています。研修先の病院は本人の意思で選択され、病院側が行う選考の過程を経て本人とのマッチングにより決定されます。全ての医師は、この2年間で、医師としての人格を涵養し、プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得します。将来「病理医」を目指す医師も例外ではありません。

かつてのように、医学部を卒業後直ちに大学の基礎病理学教室に入るという選択肢はなくなりました。この初期臨床研修を経験することで、将来「病理医」となる医師が、さまざまな職種の協力で成り立っている複雑な医療という現場を見知っていること、また患者さんとそのご家族の気持ちに思いをはせることができるようになることは、病院医療にとっても患者さんにとってもたいへん歓迎すべきことと思います。

さて、初期臨床研修を終えた医師が「病理医」になるためには、さらに新専門医制度のもと日本病理学会が定めた4年間の外科病理の研修プログラムを消化し、その後資格試験を通過して病理専門医の認定を受けます。専門医の認定は、この後も5年ごとに更新する必要があります。新専門医制度は、種々の学会ごとに任されていた専門医の認定方法に対し、日本専門医機構という第三者が介入することで、専門医の育成・認定・評価方法に標準化と客観性を持たせようとしたものと、私なりに捉えています。この制度により、医療の現場である病院に質の高い専門医の資格を持つ内科医や外科医、そして「病理医」がいることで、患者さんから信頼される標準的な医療が、いかなる病院でも提供される時代が来ることを願っております。

標榜科の医師として「病理医」の自覚とその姿勢

前回「病理医」の診断業務として、細胞診断・組織診断・術中迅速診断・病理解剖診断を挙げました。しかし「病理医」は病理診断をしているだけではありません。病院内での「病理医」の大事な仕事のもう一つは、臨床科とのカンファレンスです。このカンファレンスを通して、報告書の字面だけでは伝えきれない病理診断の内容を、肉眼や組織の写真を用いて臨床医に説明し、病気や医学用語に対する理解を相互に深め、共有する努力をしています。カンファレンスという形が取れない場合であっても、必要に応じて、病理検査を依頼した医師に直接報告内容を伝えディスカッションすることも大切なことです。

また、院内の医師だけではなく、患者さんに対しても病理診断の結果を直接お話しし、病気の本質を理解してもらうことも必要です。当院ではまだ始まっていませんが、このための「病理外来」を開設している病院も既にあり、患者さんが病気の本質を具体的に理解することで治療に対する姿勢が良い方向に向かう、といわれています。私どもも今後「病理外来」の開設に積極的に取り組むよう努力したいと考えております。

そしてもう一つ、「病理医」は、医療に関わる人々が持ち続けなければならない姿勢、すなわち症例から学びこれを学会発表や臨床研究といった形でまとめ、広く医療の現場にフィードバックし貢献しようとする姿勢に対しても支援します。そしてまた、「病理医」自らも忙しい仕事の中に埋もれることなく、この姿勢を持ち続けることが肝要です。

ところで、病理専門医の資格を持つ「病理医」は全国に2362名(2016年現在)で、全医師の1%に足りません。「病理医」が絶対的に不足している現状にあっては、大学の附属病院であっても病理学教室のスタッフが病理診断業務を掛け持ちしているというのが現状です。また市中病院でも「病理医」が常勤している病院は少なく、常勤しているとしてもほとんどが一人「病理医」です。少なくとも2から3名の「病理医」がいる体制にしたいと願う毎日です。