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生産性からみた病院組織の違和感

地域医療

北海道

横山 和之
社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院 外科
ドクターズプラザ2020年1月号掲載

地域医療・北海道(37)

病院にとっての生産性向上とは

普通の会社では、生産性を上げ社会に貢献することが仕事であると思います。そのためにその組織で働き、その対価として給料をもらっていると思います。例えば商品Aを売っているとします。生産性が上がるというのは、Aがたくさん売れることです。ですから、会社のスタッフは対時間当たりにAがたくさん売れるように仕事をします。

次に、生産性を上げるには、Aの価値と値段を上げて売ることです。すると、同じ個数を売り上げても生産性は向上します。ただし、高くても売れるように顧客の購買意欲を惹起するようにしなければなりません。さらに、生産性を上げるには少数の人数でAを売ることです。少数で同じことができると、人件費の分だけ生産性は上がります。つまり、対時間で商品がたくさん売れる、商品がより高値で売れる、少ない勤務人数(少ない人件費)で商品が売れると生産性が上がります。

では、病院ではどうでしょう。商品がたくさん売れるというのは、病院では、患者さんにたくさん外来にかかってもらう、たくさん入院治療を受けてもらうということです。商品の価値を上げるというのはどうでしょう。病院では医療の質を上げることだと思いますよね。でもそれは、ここが問題でもあり、日本の良いところでもありますが、医療の質が上がっても、患者様と健康保険組合からいただけるお金は変わりません。ただし、医療の質が上がることで、病院の評判が良くなる、治る時間が早くなって退院が早くなる、手術の合併症が少なくなるなど、間接的に患者さんが増え、それが生産性の向上につながることはあると思います。

最後に少ない人件費で商品が売れるというのはどうでしょう。業務改善をして、対人数対時間当たりの仕事量を多くすることが必要だと思います。また、事務職を含めコメディカルができることは医者にさせないようにすることです。医者に楽をさせるのではありません。逆に医者としての仕事量を増やすのが目的です。つまり、 医者として対時間当たり一人でも多く患者さんを診るのです。例えば、外来業務ならば、医師が診察して患者さんと話すこと以外は全て医師じゃなくてもいいですよね。質を落とさずに、受付から医師の前に患者さんが座るまでの時間を、一分一秒でも早くすること、それが外来では生産性を上げることにつながると思います。

常識なことが病院では非常識!?

僕は、病院の生産性を上げることを考えながら20年以上医療組織で仕事をしていますが、やっぱり違和感があるんです。病院って特別ですか? 通常の利潤を生む組織で働く人にとって常識なことが病院では非常識なんです。例えば商店のスタッフは一つでも多く商品を売ろうとするのではないでしょうか? 病院ではどうでしょう。

では一例目。終業時間ギリギリに患者さんが来ました。普通の商店なら、ギリギリまでお買い物OKですよね。ギリギリに来てたくさん買い物をしてくれたら最高ですよね。でも病院は医者から看護師、事務職に至るまで、「受付は午前で終わっています」 「医者に聞いてみますが、診れるか分かりませんよ」と眉間にしわを寄せて対応します。患者さんに「来るな」と言っているのと同じです。

二例目。昼過ぎに発熱咽頭痛の若者が病院の受付に来ています。内科に看護師が電話をし、診れるけどすごく時間がかかると言って暗にみんな断る。

三例目。病院平日時間内。
患者さん
「○○内科の外来受付は何時までですか?」
医事課
「11時30分でもう終わっています」
終了。

いやいや、先ずは、「どうなさいましたか?」でしょ。純粋に外来の受付時間を知りたいわけじゃないんです。多くの人はかかりたいから受付時間を聞いたんです。

病院は医療サービスを提供して利潤を得る組織です。病院職員の仕事は病院の生産性を上げることです。そこが、医療サービスの質を上げ、そのサービスをたくさんの人に受けてもらうことになると思います。患者さんには気持ちよく来てもらってなんぼです。患者さんにまた来たいねって思われないとダメですよね。

ドクターズプラザ2020年1月号掲載

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