2024

07/04

新学期の保健室

  • 保健

内山 有子 
東洋大学健康スポーツ科学部健康スポーツ科学科

保健室ってどんな場所(5)

新学期の学校

2024(令和6)年度が始まり3カ月がたちました。学校では新入生や新任教員を迎え、クラス替えを行い新学期がスタートしました。子どもたちは今までとは違う教室に通い、新しい友達や先生にドキドキしながら学校活動を始めたと思います。

4月の学校は教職員にとっても非常に忙しい季節です。始業式、入学式に始まり、小学校では登下校指導や給食指導、中学校や高校では部活の希望調査や進路相談の準備など、通常の授業以外に行うべき活動が山積みです。

6月を迎え、新しい環境に慣れてきて少しずつ学校生活が落ち着いてきましたので、この3カ月で学校ではどのようなことが行われていたか、学校保健活動を中心に振り返ってみたいと思います。

新学期の保健活動

養護教諭にとって4~6月は1年で一番忙しい時期です。なぜならこの3カ月間で「学校健康診断」が行われるからです。学校健康診断は学校保健安全法および同施行規則で毎学年6月30日に実施することが決められており、学習指導要領では特別活動の「健康安全・体育的行事」として位置づけられています。

【学校保健安全法第13条】

1.学校においては、毎学年定期に、児童生徒等(通信による教育を受ける学生を除く)の健康診断を行わなければならない。

2.学校においては、必要があるときは、臨時に、児童生徒等の健康診断を行うものとする。

【学校保健安全法第14条】

学校においては、前条の健康診断の結果に基づき、疾病の予防処置を行い、又は治療を指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとらなければならない。

学校健康診断は学校保健において「健康管理」の中心に位置づけられる教育活動の一環で、疾病や異常の可能性がある児童・生徒を早期に発見するのはもちろんのこと、自分の健康状態を振り返り、健康的な生活を送れるように調整する力を育むために役立てるものです。

しかし、現在、健康である子どもたちにとって健康診断は時として「面倒くさい学校行事」であり、教員にとっては「授業時間をつぶされる活動」として捉えられることがあります。そこで、養護教諭は健康診断がもつ教育的側面を有効に機能させるために、その意義や目的、各検診・検査項目についても充分な事前指導を行い、実施しています。

学校健康診断の結果は21日以内に本人や保護者に通知し、結果に応じて「疾病の予防処置」「必要な医療を受ける」「必要な検査、予防接種等を受ける」「学習や運動・作業の軽減、停止、変更」などの対応を行い、結果を学校に報告することになっています(学校保健安全法施行規則第九条)。学校健康診断は子どもたちが学校生活を送るために支障がある健康問題を見つけるというスクリーニングです。そのため病院で行う検査とは違って、確定診断ではありません。「むし歯が見つかった」「視力低下が見られた」「耳の聞こえが良くない」など学校から健康診断結果に関する通知を受け取った保護者は、再検査や専門医の受診などを行って子どもの健康をより良い状態へ改善してください。

また、健康診断結果に基づいて子どもたちが受診して来た病院では、今後の学校生活がより良いものとなるような助言を行っていただけると有難いです。

学校三師とは

学校には必ず「医師」、「歯科医師」、「薬剤師」がいます。これは「学校医、学校歯科医及び学校薬剤師を置くものとする(学校保健安全法第二十三条)」という法律に基づくもので、学校医は内科検診や感染症流行時の学校対応への助言など、学校歯科医は歯科検診や歯磨き指導など、学校薬剤師は水道水やプールの水質検査、教室の照度や騒音などの学校環境衛生検査を担当しています。学校三師は非常勤職員で、それぞれ開業していたり、勤務先があったりするため、学校健康診断や学校環境衛生検査時には養護教諭が事前に連絡を取り日程調整などを行っています。

健康診断を有意義な活動にするため、学校三師との連携は大切なのですが、地域によっては学校医を引き受けてくれる医師数が足りず、1人の医師が複数の学校を担当していて十分な時間が取れないことがあります。学校三師の安定した確保は、子どもの健康管理には必要不可欠な課題です。

まとめ

新学期の学校は子どもにとっても、保護者にとっても、教職員にとっても緊張する時期です。この時期に行われる学校健康診断は、学校と家庭、教職員と保護者、そして学校三師が子どもの健康問題を一緒に考える貴重な機会なのですが、近年、検査項目や実施方法、結果の伝え方などがニュースになっています。学校生活を健康で楽しいものにするために学校健康診断に基づく健康管理は重要ですが、時代に応じた学校健康診断の在り方を考える必要があるかもしれません。

スキルラダー研究会の概要

ウェブサイト https://skill-ladder.com/

・団体名:SLIPER(すりっぱ)
Skill Ladder for Improvement and Evaluation Running of School Health Nursing
・理念:養護教諭の能力育成を追及すると同時に、子どもやその家族、さらにその地域で暮らす人々の健康に貢献すること
・メンバー:
荒木田美香子 [ 川崎市立看護大学 ]
内山 有子 [ 東洋大学]
加藤 恵美 [ 静岡県静岡市立清水庵原小学校 ]
齋藤 朱美 [ 東京都立深川高等学校]
芝 裕介 [ 宮崎県立延岡しろやま支援学校 高千穂校 ]
高橋 佐和子 [ 神奈川県立保健福祉大学 ]
中村 富美子 [ 静岡県沼津市立大岡中学校 ]

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