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感染症拡大を阻止する医療政策

医療法

竹内 千佳
『医療法』
行政書士。成城大学非常勤講師。
スピカ総合法務事務所・所長。
医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。
ドクターズプラザ2020年5月号掲載

医療法(13)

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、新型インフルエンザ対策特別措置法が改正されました。感染症対策に関する法律は、特措法に限らずさまざまな観点から多数のものが定められ、各法が相まって効果を発することが求められています。今回は、そのうち医療従事者にとって重要な「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症法)を取り上げて、ご紹介したいと思います。

感染症法に基づく予防措置

1.感染症法とは

感染症法は、1998年に「伝染病予防法」を引き継いで成立しました。その後、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生や、鳥インフルエンザ(H5N1)の発生などを受けて、幾度かの改正が行われています。
感染症法は、感染症の発生を予防し、その蔓延防止を図り、もって公衆衛生の向上および増進を図ることを目的としています(法1条)。そのために、法は対象疾患となる感染症を定めて、常時監視し情報提供を行うこと(感染症サーベイランス)を規定しています(法12条〜16条)。

⒉感染症法が定めること

対象疾患は、感染力や罹患した際の重篤性、公衆衛生上の重要性等から、5つに分類されます。さらに新たな感染症が発生した場合の分類として新感染症や、既存の分類に該当しないもので対応が必要な場合に、1年間に限定して指定する指定感染症等を定めています(法7条)。対象疾患に該当すると診断した場合には、第5類の一部疾患と新型インフルエンザ等感染症を除いて、全ての医師が保健所を経由して、都道府県知事への届出をする義務があります(12条1項)。

⒊届出義務の違い ―全数把握と定点把握―

感染症予防の観点から、全数把握のために全ての医師に届出義務を課すものと、一定の指定届出期間で定点把握するものと分けられています。全数把握が義務付けられている疾患は、発生数が希少、あるいは周囲への感染拡大の恐れが強いものが対象です。そのため、対象疾患を診療した全ての医師に、届出義務があります。一方、定点把握が必要とされている疾患は、発生動向の把握が必要なもののうち、患者数が多数で、全数把握の必要がないものが対象とされています。この場合、指定医療機関のみが届出義務を負うことになります。
定点疾患については、各都道府県が独自に報告を求める場合もあります。例えば、東京都の場合、川崎病と不明発しん症等がその対象とされています。定点医療機関からの患者報告数が一定数を超えると、注意喚起のために注意報や警報が発信されます。

⒋感染症法に基づく措置

法が定める分類により、感染予防のための措置が定められています。患者の人権に配慮しつつ、感染拡大を未然に防ぐため、患者の隔離や入院の勧告や措置処分、就業制限や交通の制限等が行われます。これらの措置が適宜行われることで、感染拡大を防ぐことが求められています。

感染症法における届出の必要な疾患

 

(参考)

厚生労働省ウェブサイト

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html
東京都感染症情報センターウェブサイト

http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/survey/

ドクターズプラザ2020年5月号掲載

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