2020
11/04
情報発信ツールとしての広報誌
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広報室のお仕事
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社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会東京都済生会中央病院 広報室 室長
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広報室のお仕事(4)
Contents
広報誌のあるべき形
広報誌とひと言で言っても、病院が発行する広報誌にはいったいどんな内容の誌面が求められているのでしょうか……? 今回は情報発信ツールとして活用する広報誌について私の経験を基にあるべき形と現実についてお話ししたいと思います。
病院の広報誌にはいくつか種類があります。一つは患者さん向けの広報誌、もう一つは医療機関向けの広報誌。そして職員向けの広報誌。大体この3つの方向(ステークホルダー)に向かって、同じ事柄でも内容や伝え方に変化を持たせた媒体を発行します。そもそも広報誌は一体何のために作るのかについて改めて考えてみました。当院が提供できる最新医療や病院、職員の紹介などを行うための情報発信ツールの一つが広報誌です。ツールですので、本来であればあらゆるところへ出向いて行って、対面でお話しをしながら病院について説明する際に役立てるための資料が広報誌であるとでも言ったらいいでしょうか。ただ、配布して読み物として扱っていただくだけで満足していてはダメだと思うのですが、現実は発行するので精一杯な状況です。
対象に合わせた誌面作りと課題
当院では私が広報室へ異動する前は、季刊誌として患者さん向け広報誌は年4回だけ発行していました。しかし4カ月に1回の発行だと「病院でこんなことがありました」という記録誌のような状況になり、古い情報がそのまま掲載されてしまうことも多々あり、広報活動としてこれでは病院側の自己満足にすぎず、まだ工夫が必要だなと感じました。そこで院内で検討し、患者向け、地域の医療機関向けの広報誌をA4サイズの両面1枚の形に一新しました。コンセプトは「パッと手に取って簡単に読んでもらえるちょっとお得な医療情報」でした。かなりコンパクトなので、伝えたい情報が全て伝えられるわけではありません。そのため病院のトピックスだけでなく、患者さんやご家族など病院へ来る方々にとって有益と思われる情報を厳選して掲載することを大事にしています。テーマはその都度変えますが、生活に絡めた健康情報や栄養情報、当院が得意とする診療や治療の情報、季節によって発症が増える病気の予防法や対処法などをさまざまな職種の職員と一緒に作っています。発行した広報誌を設置しているラックの在庫状況によって、患者さんの関心の高いテーマなどを知ることもできます。手に持って院内を歩いている患者さんを見掛けると、心の中でガッツポーズをしています。
一方、医療機関向けの広報誌は手応えがつかみにくい情報発信ツールです。当院が医療連携を取っている近隣の診療所やクリニックは500施設以上あります。この医療機関へ毎回さまざまな情報を広報誌として発送しているのですが、忙しい医療機関の医師たちにどれだけ見ていただいているかは正直不明です。当院の広報誌をA4両面のコンパクトサイズにしたのも、このように多忙極まる連携医療機関の医師の目に少しでも触れやすくして、他の医療機関が発行する広報誌との差別化を図るためでもありました。内容は当院が新しく始めた診療や検査、最新の治療体制を紹介しています。願いは興味や関心を持っていただけた医療機関から患者さんを当院へご紹介していただきたいということです。ただ、広報誌に掲載したからといって、患者さんの紹介数が目に見えて増加することはほぼありません。そこが難しいところです。おそらく医療機関向けの広報誌は配るだけではなく、手持ちで医療機関に伺って直接お話ししながら手渡しするなど、地道な営業活動も必要です。あくまで宣伝ツールの一つと捉えていますので、当院では営業活動の活性化がまだ課題といえます。
さて、最後に職員向け広報誌。当広報室では、今年の取り組み課題として「インターナルコミュニケーションの活性化」を挙げています。「インターナルコミュニケーション」とは「院内広報」ですね。これは紙媒体ではなく、イントラネット上で配信する「広報ニュース」として取り扱っています。インターナルコミュニケーションが活発な組織は、職員のモチベーションも高く、活動的で、生き生きと働く人が多い職場だと個人的には感じます。何より職場が楽しそう! 広報担当としては、まだまだそこに行きついていない現状に、その責任の一端を感じずにはいられません。新たに配信を始めた職員向け広報ニュースでは、病院イベント紹介や職場紹介、仕事紹介、グループネットワークの構築のきっかけ作りなどにも取り組んでいきたいと思っています。趣味の話や好きなペットや食べ物情報などでもつながっていくことで、知らない職員同士が顔見知りになるきっかけにもなればいいなと考えています。
まだまだやることが多くて目まいがする日もありますが、やるべきことがあるという状況が私の活力になっているのは、間違いない事実です。ひたすら自分の前向きさだけ信じて進む日々ですね。