2022

04/10

微生物と感染症

  • 感染症

内藤 博敬
静岡県立農林環境専門職大学 生産環境経営学部 准教授
日本医療・環境オゾン学会 副会長
日本機能水学会 理事

新微生物・感染症講座(1)

はじめに

COVID-19がパンデミックを起こしてから2年がたちました。科学の進んだ現代社会においても、感染症に対して私たち人間はあまりにも脆く、目に見えぬ病原体への驕りを感じずにはいられません。人類と感染症との闘いは、人類の誕生から続いていると考えられ、文明や開発によって日々新たな病原体との接触機会が増え、結果として感染症が増え続けています。利便性や快適性と自然とのバランスを保ち、微生物とも共存共栄を図ることが、近未来の人類の課題といえるでしょう。

私は大学で身体や健康について教鞭を取りながら、私たちの身体の主成分である「水」について、さらには殺菌・消毒といった衛生・微生物関連の研究を行っています。微生物と聞くと、バイキンのイメージが強い昨今ですが、一方でヨーグルトや調味料、抗生物質を作るのに欠かせない友達でもあります。善にも悪にもなる微生物、そして感染症について、今分かっていることを、これから少しずつ紹介していきたいと思います。

感染症の原因は微生物⁉

私たちを苦しめる病気の一つに感染症があります。感染症はそれだけで私たちの健康を脅かすこともありますが、ケガ、手術後、糖尿病の合併症としてなど、他の疾患に付随して起こることも少なくありません。感染症の原因は、微生物が病原体として私たちを襲うことです。とはいえ、私たちの身体には「免疫」と呼ばれる生体防御システムが備わっているので、微生物が身体の中に入ったからといって、簡単に襲われるわけではありません。微生物が侵入を試みたところで、私たちが健康であれば免疫が正常に働いて排除します。不規則な生活でこの防御システムが正常に働かなかったり、強毒あるいは大量の微生物が侵入してきたりすると、微生物は私たちの身体に住み着いて増殖を始め、病気や死につながります。この現象が感染症なのです。

微生物とは?

私たちにとって、呼吸や食事は生きるために必要不可欠な事です。私たちが無意識に吸っている空気は窒素や酸素などの原子から構成されていますが、そこには目に見えない小さな生き物が含まれている事があります。食べ物にも、空気に触れている部分だけでなく、小さな生き物がもともとの食材と共存していたり付着していることがあります。また、空気や食品を必要としている私たち自身も、身体中に小さな生き物をまとって生きています。この目に見えない小さな生き物を「微生物」と呼んでいます。

微生物と聞くと、ミドリムシ、ゾウリムシ、ミジンコやアメーバを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。これらは原生動物と呼ばれる微生物の一つです。動物に鳥類、哺乳類、魚類などがあるように、微生物にもさまざまな種類があります。感染症の病原体として微生物を分類すると、原虫、真菌、細菌、ウイルス、プリオンなどが代表的なグループです。感染症対策の第一歩として、この原因となる病原体それぞれの特徴を学びましょう。

本当は微生物ではないウイルス

そもそも生物・生命体とは、細胞構造を持って分裂や代謝活動を行う有機物です。動物や植物の多くはこの細胞の集合体で多細胞生物と呼ばれますが、微生物は細胞1個から成る単細胞生物が多くを占めます。「多くを占める」と書いたのには理由があります。複数の細胞から成る多細胞の病原体がいることもその一つですが、もっと大きな理由があります。微生物も生物なので細胞構造を持っていることが前提ですが、病原体の中には細胞構造を持たないモノがいくつかいるのです。その代表が、皆さんよく御存知の「ウイルス」です。ウイルスは遺伝子とそれを保護するタンパク質で構成されてはいるものの、生物が生きるのに必要な器官、つまりは細胞構造を持たないので、自分で分裂したり、栄養を取ったりできません。他にも、核酸であるRNAのみで構成されるウイロイドや、タンパク質のみで構成されている異常プリオンなど、こうした細胞構造を持たない病原体も感染症の病原体として、微生物学の中に含んでいます。

また、前述した原生動物の中で病原体となるものを原虫と呼びますが、原虫は単細胞の寄生虫です。寄生虫として感染症を考える時には線虫などの多細胞寄生虫(蠕虫)も考慮する必要があるため、蠕虫は目に見えるモノが多いですが、病原体の一つとして紹介したいと思います。

おわりに

今回は病原体としての微生物全体の紹介を簡単にしました。寄生虫(原虫・蠕虫)、真菌、細菌、生物ではない微生物(ウイルス、ウイロイド、プリオン)と、病原体・微生物にも種類があることが分かってもらえたでしょうか。鳥と魚では捕獲する網が違うように、また、害虫によって殺虫剤を変えるように、原因となる微生物によって感染症対策を変える必要があることを感じてもらえたら幸いです。