2022

01/12

年代によって睡眠の悩みは異なる!

  • 睡眠

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岡島 義
東京家政大学人文学部 心理カウンセリング学科 准教授

DRP Healthcare magazine2022年1月号掲載

睡眠と健康03

「最近なかなか寝つけなくて困っています」
「朝、どうしても起きられないんです」
「夜中に何回も目が覚めてしまうんです」

青春真っ盛りの高校生や大学生、働き世代の労働者、退職後の高齢者と、年代に関係なく、同じ悩みを持って私のところに相談にやってくる。この3つの症状は、いわゆる「不眠症状」なのだが、その原因は年代によって大きく異なる。

若者の睡眠の悩み

青春時代の眠りの問題は、ずばり、「寝つけないこと」と「朝、起きられないこと」が中心である。これは、夜更かししていることが原因なのだが、必ずしも生活習慣だけが問題になるわけではなく、睡眠―覚醒リズムの後退化現象も大きく関係してくる。つまり、日をまたぐ前に眠りにつきたくても、できない体になってしまったのだ。しかし、学校には行かなければならないので何とか起きて登校する。睡眠不足がたまっていき、朝起きづらくなっている。

成人になると、睡眠時間は短くなっていくが、それでも新入社員は、中堅、ベテランの先輩よりも睡眠時間を多く必要とする。すると、青春時代と同じように、睡眠不足状態となり、仕事中の居眠りなどの問題が出てくる。寝不足解消のために休日に「寝だめ」をするが、これはソーシャルジェットラグという別の問題を引き起こす( 第1回連載参照)。

中・高齢者の睡眠の悩み

働き世代も中盤になると、「寝ても疲れが取れない」といった悩みが中心になってくる。仕事にも脂がのってきて、就寝時刻ぎりぎりまで仕事をして過ごすこともあるだろう。また、育児によって自分の思い通りに睡眠が取れないことも出てくると思う。運動不足が続いたり、ダイエットも兼ねて朝食が軽めになったり。帰宅中の通勤電車内での居眠り。いろんな習慣の積み重ねによって「なかなか寝つけない」とか「途中で何度も目が覚める」といった悩みが出現している可能性が高くなる。

働き世代後半から退職後には、「よく寝た感じがしない」という悩みがより顕著になってくる。また、この世代の方からよく聞くのは、「やることがないから寝る」という言葉だ。つまり、寝床で過ごす時間が増えていく。ところが、それに比例して睡眠時間が延びるわけではないので、最初に挙げた相談が多くなる。さらに、「朝早く目が覚めてしまう」という相談が増えるのも、この世代の特徴である。

このように、「悩み」は同じでも、年代によってその原因は異なる。どうしてそのようなことが起こるのか? 答えは、①睡眠時間の変化と②睡眠―覚醒リズムの変化である。

睡眠時間の変化:睡眠時間はどんどん減っていく

そもそも、皆さんはどの時代でも「7、8時間は眠れる」とか「7、8時間眠らないといけない」と思い込んではいないだろうか? でもよく考えてみると、赤ちゃんの時はもっと寝ていたはずである。実は、睡眠時間は、加齢と共にどんどん減っていくのだ(図1)。一方で、「よく寝た感じがしない」時にどうするかというと、寝床にいる時間が増えいく。図1を見ていただくと、睡眠時間は減っていくのに、臥床時間はまるで「赤ちゃん返り」のように徐々に増えている。ポイントは、どんなに寝床で過ごしても客観的な睡眠時間を増やすことはできないということである。

「睡眠時間 < 寝床にいる時間」になるとどうなるだろうか? 実は、睡眠時間が分断してしまう。例えば、6時間の睡眠時間の方が、10時間寝床にいたとしよう。すると、10時間の間に合計6時間を取るので、寝つきが悪い日、途中で目が覚める日、朝早く目が覚める日が現れる。

睡眠―覚醒リズムの変化:年代によって生体リズムが変わっていく

睡眠―覚醒リズムは、年齢とともに変化していく。睡眠―覚醒リズムとは、眠りに落ちて、目が覚めるという生体リズムのことで、自分の意思とは関係がない( 第2回連載を参照)。

生まれて間もない新生児は、2、3時間おきの睡眠を繰り返す。その後徐々にまとまった睡眠が取れるようになり、1歳くらいになると、まとまった睡眠が安定して取れるようになっていき、4歳頃にはお昼寝回数も減っていく。

小学生の頃には、睡眠―覚醒リズムがもっとも安定するので、早寝早起きができるようになるが、青春時代に入ると睡眠―覚醒リズムが後退し、眠れる時刻が遅くなっていくという現象が起きる。これによって、「最近なかなか寝つけない」という訴えにつながるとともに、比較的長い睡眠時間が必要なことから寝不足がたまると「朝、起きられない」という状態になる。

働き世代(成人)では、就寝時刻が遅いことに加えて、そもそもの睡眠時間が減っていく。働き世代前半から後半にかけて、睡眠時間は減少していくため、前半の若年成人は、睡眠不足の問題が顕著だが、だんだんと起床困難が減ってくる。

高齢者では、青春時代とは反対に、睡眠―覚醒リズムが前進する。それに加えて睡眠時間が短くなるため、「早寝―超早起き」になる。そのため、「朝早く目が覚めてしまう」ことが気になってしまうが、身体に必要な睡眠時間は確保できていることがほとんどである。また、睡眠自体が浅くなるため、青春時代以降、影を潜めていた日中の昼寝も再び出現する。

このように見てみると、加齢に伴う睡眠状態の変化が、睡眠の悩みに大きく影響していることがお分かりかと思う。もちろん、それだけではなく、生活習慣の問題(運動、食事、仕事など)も大きく関わってくるため、日頃の取り組みが大切である。