2018
01/16
一般用医薬品による副作用
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薬
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『小黒先生の薬の話Q&A』
株式会社メディカル・プロフィックス 取締役、株式会社ファーマ・プラス 取締役。
一般社団法人 保険薬局経営者連合会副会長
ドクターズプラザ2018年1月号掲載
小黒先生の薬の話Q&A(47)
インターネットでの医薬品の購入と安全性
<Q1>インターネットで買える薬は安全だと思っていいですか?
<A1>
医薬品のインターネット販売は、インターネットの普及とともに徐々に拡大してきましたが、副作用防止の観点から、平成21年6月の「薬事法(現在の薬機法「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)の一部を改正する法律」の施行とともに、ビタミン剤のような比較的副作用リスクの少ない第3類医薬品を除いて、省令で原則禁止されることとなりました。
しかし、インターネット販売業者や漢方薬、伝統薬業者からの反対も多く、医薬品のインターネット販売が制限されるのは、憲法第22条第1項に定められた営業の自由を何ら合理的な根拠なく侵害するものと主張し、提訴しました。東京地方裁判所では、インターネット販売は店舗での販売に比べて、健康被害防止の実効性の確認が困難であり、患者さんへの情報提供の機会も失われやすいことから、副作用による健康被害を防止する手段として規制には必要性と合理性が認められるとし、合憲だとの判決を出しましたが、平成24年には東京最高裁判所に控訴されました。東京最高裁判所では、省令において第1類・第2類医薬品のインターネット販売を一律全面的に禁止していることは、薬事法の委任の範囲内と認めることはできない、と一転して国が敗訴しました。
その後、厚生労働省で医薬品のインターネット販売のルールが見直され、現在では第1類医薬品と、要指導医薬品以外はインターネット販売が可能となっています。インターネットが急速に普及する中で、国民の健康や生命に関わる医薬品について何らかの規制を設けることは重要なことだと、私は考えています。
高齢化に伴って社会保障費が逼迫する現代において、自らの健康を守るセルフメディケーションは大変重要で有益な効果をもたらす一方、薬の服用は副作用のリスクを伴うものです。一般用医薬品による副作用は、毎年250件程度報告されており、インターネットの販売の可否が、安全性の確保や副作用の可否につながるものではありません。厚生労働省のホームページには、一般用医薬品の販売サイトの一覧が提示されています。インターネットで薬を購入するときには、薬局同様に許可を得たサイトから、決められた手順に沿って医薬品を購入するようにしてください。
風邪薬の乱用が依存性を引き起こすこともある
<Q2>風邪薬の副作用で死亡した人がいると聞きました。どのような副作用ですか?
<A2>
風邪薬の副作用として最も多いものに、総合感冒薬に含まれている抗ヒスタミン剤による眠気や口渇があります。また、前立腺肥大や緑内障の方は病状が悪化することもありますので、購入の際には薬剤師に必ず伝えなければなりません。
その他、薬に対するアレルギー症状があります。アレルギー症状としては、浮腫や薬疹、重症化すると呼吸困難、アナフィラキシーショックが起こることがあります。また、シェーグレン症候群という病気を発症することもあります。初めは目の乾きや口内炎など、風邪の時にもよく現れる症状であることが多く、発見が遅れて重症化すると死に至ることがあります。
厚生労働省の報告では、平成19年から23年までに一般用医薬品によると思われる副作用報告は1220件、そのうち死に至った副作用は24件あり、その半数がいわゆる風邪薬、総合感冒薬によるものとなっています。薬を服用しても改善せずに他の症状が出てきた時には、すぐに服用を中止し、薬を購入した薬局の薬剤師に相談するか、症状がひどい時には受診するようにしてください。
一方、風邪薬の乱用による依存性も問題になっています。総合感冒薬にはモルヒネに構造のよく似たコデインやジヒドロコデインが含まれています。用法や用量を守れば問題ありませんが、自己判断で増量したり目的をあやまって服用したりすると依存性が生じて、服用しなくてはいられないようになってしまいます。最近では、これらを予防するために1回の購入量を1包装単位にするよう薬局に指導されていますが、完全な防止策はありません。
風邪薬は必要な時に必要量服用するものですが、病気自体を治すものではなく、重症化を予防し、休養とともに早く治すのを助けるものです。正しく服用するようにしましょう。