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家族介護を言い出しやすい雰囲気をつくるためには?

川内 潤
NPO法人となりのかいご代表理事
ドクターズプラザ2021年9月号掲載

隣(となり)の介護(15)

●家族の介護をするようになったら……

「育児」と比べて「介護」は、気軽には話しづらい内容もあるため、介護をしていることが表に出にくいと私は考えています。ただ、介護を一人で抱え込み追い込まれてしまうと、以下のようなプロセスをたどり、取り返しがつかなくなってしまうケースが少なくありません。

⒈追い込まれてから声を上げても、すぐに介護サービスを活用しづらい
⒉仕事をしている場合、仕事を休まざるを得なくなって会社に迷惑を掛ける(そのことを後悔する)
⒊迷惑を掛けられないと介護離職をした結果、一人で抱え込み共倒れになる

そこでお伝えしたいのは「人に話すことがソリューション」ということ。「少し心配」という段階から周りや介護のプロに話しをしてほしいのです。それにより、以下のような結果が得られます。

⒈仕事をしている場合は、周囲の理解が得られやすく、介護のための仕事が調整しやすくなる
⒉早い段階で対処していけば、さまざまな介護サービスのトライアンドエラーができ、最適な介護サービスにたどりつける
⒊プロの力を借りることで、一人で抱え込まず共倒れせずに済む早い段階から介護の愚痴も含めて

自分の気持ちを人に話すことができれば、結果的に、周りに迷惑を掛けず、社会との疎外感も抱かぬまま、介護生活を乗り越えられるのではないでしょうか。

●周りに介護をしている人がいたら……

「相談がないから大丈夫」ではありません。実は 「“隠れ介護”状態の方が労働人口の5人に1人も存在している」(日経ビジネス2014年9月22日号『隠れ介護1300 万人の激震』より)といわれています。そこで、「自分の親の時も大変だったから、何かあったら、話しを聞くよ」「実は、自分も親の将来が不安なんだよね」とこちら側から歩み寄ることで、介護をしている人が声を上げやすくなるのです。

●聞き役に徹するだけで効果大!

家族介護に悩む方のサポートで、誰にでもできる非常に効果的な手法は「聞き役に徹する」こと。当事者たちも、人に話すことで自分の考えが整理でき、介護の話がしやすい雰囲気づくりにもつながります。私が行っている企業での個別介護相談でも「話しを聞いてもらえただけで、気持ちが軽くなりました」といった感想を頂くことが少なくありません。

●介護の話を聞くときの注意点

話を聞く際の注意点として、親切心から「何か解決策や役立つアドバイスをしなければ!」と考えてしまうかもしれません。でも、介護に関しては、たとえ介護経験があっても、解決策やアドバイスの提案は控えてください。介護は家族関係や要介護者の病状などによって千差万別で、あなたに有効な手法でも他の方に当てはまるとは限りません。まずは、当事者たちの話を聞き、地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談を勧めるなど、介護のプロにつなげてください。匿名でもいいので、あなたが地域包括支援センターに相談して対応してもらうこともできます。

●コロナ禍のテレワークにより、介護を抱え込む人が増えている

良かれと思いアドバイスをする例として、今、私が危惧しているものがあります。それは、コロナ禍でテレワーク利用のハードルが下がり、「介護が大変なら、テレワークを活用してはどうか?」というものです。しかし、その結果、仕事も介護も上手くいかなくなったという状況が多く発生しているのです(東京新聞2021年5月26日号『介護とテレワーク 難しい両立 負担感と不安増し疲弊 職場は孤立させない配慮を』参照)。「介護休暇を取って、介護をしたら?」という提案も、直接的に介護へ関わってしまったことで、仕事に戻れなくなり、介護離職につながったケースをたくさん見てきました。

いずれもその人を思う優しさだということは、十分に理解しています。ただ、テレワークや介護休暇・休業を活用して、直接の介護に関わった方は、仕事と介護の両立がより困難な状況に追い込まれているのも事実なのです。

●働きながらの家族介護は、誰にでも起こり得る問題

今の日本の人口構造から考えると、定年までにほとんどの人が、何らかの形で家族の介護に関わること
になります。「プライベートなことを周りや、職場で言う必要はない」という方もいます。ですが、プライベートなことも言える職場環境や周りの雰囲気づくりで、介護をしている人は救われ、介護が原因の悲しい事件などを減らしていけるのではないでしょうか。

ドクターズプラザ2021年9月号掲載

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