2022

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安価な老人ホーム 「特養」に潜む誤解

  • 介護

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川内 潤
NPO法人となりのかいご 代表理事

ドクターズプラザ2022年1月号掲載

隣(となり)の介護(17)

一口に老人ホームと言っても、さまざまな種類があります。公立で比較的安価な費用で入居ができる「特別養護老人ホーム(以下、特養)」ですが、介護相談でお話を伺っていると、「待機者が多くて入居できない」「空きが少ないから選べない」「新規オープンの施設がねらい目」といった誤解が多く、選択肢を狭めてしまっている方が少なくありません。

●特養は待機者が多くて入居できない?

厚生労働省によると、特養待機者は全国で29.2万人(2019年)となっています。2015年に「原則要介護3以上」と入居申請資格が厳しくなったことで、52.4万人(2013年)から大幅に減少したものの、待機者数は高止まりしています。ただ、この待機者数は、一人の方が複数の施設に申請していたり、今は必要ないが先々のために申請している数も含まれています。そのため、居室に空きが出そうになったところで特養側が待機者に声を掛けても「もう別の施設に入居しました」「すでに逝去しました」「現在病気で入院中です」「まだ入居は必要ありません」などの返答があり、なかなか入居していただける方が見つからない、という事態が多発しております。「どうせ入居できないだろう」と申請を諦めるのは、非常にもったいない状況です。「将来的に入居するか分からないが、要介護3以上になったら申請しておこう」という姿勢が重要です。

●空きが少ないから選べない?

待機者が多くて入居ができない、という誤解から派生して「特養を選ぶ」という発想になりにくいと思いますが、施設によってケア品質に差があるため、しっかり選んでいただく必要があります。選び方については「よりよい老人ホームの選び方5か条」(※1)をご参照ください。特に、介護職員の離職率は重要なポイントです。職員の離職によって、ケアの品質が低下するだけでなく、せっかく入居した特養なのに離職が相次ぎ閉鎖、というケースも起きておりますので、しっかり調べてください。特養選びの実例については、私と岡崎杏里氏が連載(不定期更新)している日経ビジネス電子版『介護生活敗戦記/実録・父のために介護施設7 カ所を一気に見学(2019.9.18)』をご参照ください。

●新規オープンの施設がねらい目?

団塊の世代が要介護状態となりやすい年齢となることに備えて、全国的に特養整備が急がれており、新規オープンの特養が増えております。建物や設備が新しく、入居しやすいことから、新規オープン施設を狙って入居申請をされるケースが少なくありませんが、ここにも注意が必要です。新規オープン施設は新たに介護職員を募集する形となります。施設ケアは24時間・365日、複数の職員で切れ目のないケアを提供し続けるため、職員同士のチームワークが必要不可欠となります。もちろん、チームづくりにはどうしても時間がかかります。国家資格である介護福祉士などを所持して、これまで十分な経験をしてきた介護職であっても、それぞれのやり方が衝突してしまうことがあります。そこで、新規オープンの施設を選ぶ際は「最初は研修も含めて入居者を制限してオープンする」などの対応策を確認いただく必要があります。家族関係の悪化を防ぐためにも、介護は親のお金で行っていただくことが重要です。その意味で、本人の経済状況に合わせて減免が受けられる特養は重要な選択肢となります。

ぜひ、早い段階で誤解を解消し、上手に活用してください。また、特養に対する疑問やその実態については、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しながら、情報収集していただくことも重要です。まずは、早めの情報収集から始めてみてください。