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多職種から構成される周術期管理チームを発足

地域医療

北海道

横 山 和 之
社会福祉法人 北海道社会事業協会小樽病院外科
ドクターズプラザ2020年5月号掲載

地域医療・北海道(38)

地方の手術患者の現状

当院の位置する小樽市の高齢化率は、2015年で37.2%であり、全国に先駆けて高齢化が進んでいます。また、周囲の町村はさらに高齢化と過疎化が進んでいます。つまり、当院の医療圏は、全国的にも高齢化が最も進んだ地域です。そのため、手術患者の多くが高齢者となるのは当然です。多くの地方病院と同様に、当院の高齢の手術患者は基礎疾患を有することが多く、それも、複数の疾患を有することもまれではありません。基礎疾患は心疾患、呼吸器疾患、糖尿病、認知症などが多く、年齢からと予想される嚥下機能の低下も多く認められます。高齢者はたくさんの薬を内服していることが多く、通院治療している医療機関も疾患別に複数であることも多々あります。患者本人や家族が何のために飲んでいる薬なのかも理解されていないこともよくあります。さらに、高齢者の手術患者には術前の診断の時点で栄養状態の低下も多くの患者で認められ、低栄養と運動不足から引き起こされるフレイルやサルコペニアとなっている症例も少なくありません。

地方の病院には周術期管理チーム(※1)が、必要周術期には手術そのもののリスクだけではなく、基礎疾患からくるリスクを含めさまざまなリスクに対し、事前に評価し準備しておくことが必要です。高齢者の手術患者には、複数の基礎疾患からくるリスク、認知力の低下からくるリスク、内服薬管理に対するリスク(抗凝固薬や糖尿病薬など)、低栄養筋肉量低下からくるリスク、嚥下機能口腔機能低下からくるリスク、社会的なリスク(独居、老々介護)など、さまざまなリスクがあります。手術患者の多くが高齢者である地方病院こそ、多くのリスクを抱えた患者さんに対してしっかりとした管理をするために、多職種から構成される周術期管理チームが必要だと考えます。

周術期管理チームの活動

当院では、2020年1月から周術期管理チームが発足しました。管理チームのメンバーは医師(外科医)、看護師(外来、手術室、病棟)、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、医療事務で構成されています。当院では麻酔科医は常勤一人のみで、非常勤麻酔科医とアルバイトの麻酔科医で麻酔管理を行っています。術中麻酔管理以外の業務を負担するのは事実上厳しく、麻酔科主導での周術期管理チーム運営は困難です。そのため、周術期管理チームはまず外科医主導で行うこととしました。

【周術期管理チームの活動内容1】

週1回、毎週金曜日の朝8時からモーニングカンファレンスを行っています。カンファレンスの流れは、「次週の手術内容の提示(主治医)」⇒「術前の患者情報の共有(外来看護師(以下、Ns)、入院病棟Ns)」⇒「術後の患者経過の共有(入院病棟Ns)」⇒「全体討議」となっています。術前の患者情報の主な項目例としては、身体的背景、社会的背景、現疾患の受け入れ、手術の受け入れ、合併している疾患、考えられる術後合併症(手術に特異的なもの、患者に特異的なもの)、嚥下機能評価、患者特異的な問題点、術後悪心嘔吐のリスク、術後疼痛管理の事前計画などです。

術後の患者経過の主な項目例は、術後経過、術後合併症の有無、現在の問題点、今後の治療方針 (通常の治療方針、合併症の治療方針、インフォームドコンセント(以下、IC)の日程、術後ICの内容、病理ICの内容)、今後の周術期管理チーム介入の有無などです。また、術後1、2週目は自動的に介入し、その後は必要があれば介入継続(術後合併症など) とし、さらに必要であれば他の委員会や職種への橋渡し(緩和ケアチーム、栄養サポートチーム、認知症ケアチーム、医療ソーシャルワーカーなど)も行います。

【周術期管理チームの活動内容2】

定例カンファレンスを月に1回、第2金曜日の1時より行っています。定例カンファレンスの議題は長期に介入している患者症例の検討、チームとしての啓発活動(勉強会、講演会など)などです。また、チーム全体での活動とは別に、それぞれの部署ごとに、重点的に取り組む内容を決めてメンバー個々で責任を持って活動しています。都会に比べ、マンパワーが不足しているにもかかわらず、多くのリスクを抱えた高齢の手術患者に対応しなければならないのが、地方病院の現状です。しかし、フットワークの軽さと互いに顔が見える関係がすでに構築されている小さな組織の強みを生かして、周術期管理チームとしての活動を広げていく予定です。

※1 周術期管理チームとは

日本麻酔科学会が周術期診療の質の向上を目指して、2007年より提唱した多職種からなる周術期を管理するチームです。その周術期管理チームのメンバーとして看護師、薬剤師、臨床工学技士の認定制度も開始されています。周術期の診療の質を向上させるには、術前から術中管理、手術後の管理に対して多職種からなる複数の医療スタッフによってリスクを共有し連携して周術期の診療に当たることが必要です。

ドクターズプラザ2020年5月号掲載

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