2019
09/30
地方病院における緩和医療
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地域医療
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北海道
社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院 外科
隔月刊ドクターズプラザ2019年9月号掲載
地域医療・北海道(36)
Contents
緩和医療は専門家のもの?
小樽市は、高齢者の住民が多く、その割合は全国的に最も多い地域の一つとなっています。実際小樽市の高齢化率は、2015年で37.2%であり、小樽市という街は全国に先駆けて高齢化が進み、小樽市での超高齢社会で表面化してくるいろいろな問題は、今後、全国でも必ず起きてくると予想されます。超高齢社会となると、あらゆる病気で、死を迎える人の割合が著しく増加します。
超高齢社会では緩和医療を受ける患者の割合がどんどん多くなるということです。
当院は、超高齢社会である小樽市を医療圏の中心としています。そのため、患者は高齢者が多く、当院の入院患者の中には、常に死を迎える前の患者、いわゆる終末期の患者が多く存在します。終末期の患者の原疾患はさまざまです。進行再発癌、誤嚥性肺炎を含む肺炎、COPD、心不全、そして、老衰としか病名を付けられない原疾患不明の患者さんもいます。その全ての人が緩和医療の対象となることになります。全ての人は死を迎えるため、超高齢社会となった小樽市は、その状態の患者さん、つまり緩和医療の対象患者さんが著しく増加している医療圏であるといえます。
地方では緩和医療はどこで誰の手で行われているでしょう。小樽協会病院では、急性期病棟と地域包括病棟があり、病棟の役割としては、緩和医療を受ける入院患者は地域包括病棟に多くなるべきです。しかし実際は、緩和医療を主目的とした患者さんは、入院期間が長くなることが多く、退院の目処も立たないため、実際は急性期病棟で入院加療となることも多いのが現実です。また、緩和医療対象となる患者さんの原疾患が多岐にわたるため、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、外科、さらに整形外科も加えた当院のほぼ全ての診療科でそれぞれ担当しています。都会も今後そうなると思いますが、緩和医療は、全ての診療科で原疾患に合わせて、分担して行うべき医療だと考えます。緩和医療に専門病院・専門病棟・専門の医師がいらないとは言いませんが、 緩和医療を必要とする患者の数の増加と、さほど多くない緩和専門の医師の数はあまりにもバランスを欠いているのが現実です。今後の認知症患者さんの治療もそうですが、超高齢社会では、緩和医療はどの医師もやらなければならない医療であり、当院では、もうすでに、全ての診療科が、緩和医療の担い手となっています。
全ての医師が緩和医療を担う時代
都会では現在、それぞれの病院は役割があり、急性期病院で緩和医療をたくさん担うようにはなっていません。また急性期医療に携わっている、いわゆる各科の専門医も緩和医療を積極的に担っているとはいえない状況です。しかし、都会も必ず小樽市のような超高齢社会となり、それは急速にすぐ目の前に来ています。都会にいる緩和医療の専門家が急に増えるとは思えませんし、今の何十倍もの患者を診療できるようになるとは到底思えません。ホスピス病床が急に何十倍にも増床されることも不可能です。このままだと、緩和医療を担うマンパワー、緩和医療を実際に行う病院病床は著しく足りないまま、都会の病院は超高齢社会を迎えることとなります。現在も病院と在宅の狭間で介護難民となっている患者さんが多く存在しています。
超高齢社会は膨大な数の緩和医療対象患者さんを生み出します。このまま手をこまねいていると緩和医療対象患者さんはどこにも行く場所がなく、十分な緩和医療を受けられない、緩和医療難民となって、社会問題化することは明白です。緩和医療は専門家に任せる、専門病院で診る、そのような時代ではありません。超高齢社会となっている小樽市ですでに起きていること、各科専門医を含めて全ての診療科の医師が積極的に緩和医療を担わなければならないことをしっかり理解し、都会でも、各診療科が緩和医療の専門家に丸投げせずに、それぞれ自身の患者さんの緩和医療を全ての医師で行っていくことが必要だと思います。患者さんにも緩和医療が必要な状態は特別な状態ではなく、誰にでも必ず起きてくる状態であることを理解してもらい、どこの診療科でも治療ができる、普通の医療として、各々の通院している診療科で診てもらうように啓発活動していかなければならないと考えます。