2017

07/15

地方の中小病院の立ち位置

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
『地域医療・北海道』
社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院

ドクターズプラザ2017年7月号掲載

地域医療・北海道(27)

患者は中小病院に何を求め、中小病院は何を提供できるのか

私は、今年の4月に余市町の余市協会病院から小樽市の小樽協会病院へ異動となりました。この二つの病院は、大きく分類すると地方病院という括りになりますが病院の機能としてはまるっきり違う病院です。余市協会病院は約3万人の医療圏に存在するたった一つの入院機能と救急外来機能を持った急性期と慢性期を共に治療する病院です。しかし、小樽協会病院は違います。小樽市の人口約12万人という医療圏には三次救急を担う大きな市立病院が存在し、小樽協会病院は、二次救急を輪番で数日に一回担当しています。赴任して二カ月ほど経ちましたが小樽協会病院は他の全国の中小病院と同様に医療も経営ももがいている状態というのが僕の印象です。

それでは、現在の地方都市において病院同士の関係は、どのように構築されているのでしょうか。多くの場合は、一つの地方都市で一つの医療圏となっていることが多いと思います。そこには三次救急を担う公的病院が何カ所か存在しています。その下に当院のような二次救急を輪番でするような中小病院が、数カ所存在しています。そのほかに脳神経外科病院、循環器科病院、消化器科病院、整形外科病院、精神科病院などの単科もしくは、ごく少ない科に絞った病院が数カ所存在し、さらにリハビリ科などのいわゆる老人病院が数カ所存在するというのが一般的だと思います。

しかし、日本人は、三次救急を担っているような大きな病院にどんな病気であっても初診で受診する傾向にあります。大きな病院がレベルの高い良い病院という“大病院信仰”があるようです。そういう大きな病院を受診する多くの患者さんは、長距離の通院もOK、長く待たされてもOK、3分診療ももちろんOKなんていうことが結構あります。大きな病院の外来で若い医者(研修医含む)に「これが最新のやり方ですから」と言われると、遠くから来た患者さんは自分たちの言いたいことを言わず、今の医療のやり方をしっかり分かっている素直な患者や家族を演じ、具合が悪くて遠くから大きな病院に来たにも関わらず、入院させてもらえなくてもすごすごと帰ります。また、開業医の先生も大きな病院に紹介した方が患者から文句が出にくい、患者さんも希望するので自分はそう思っていなくても大きな病院を紹介してしまうことがあります。そうしたこと等も、大きな病院に患者さんが集まる要因だと思います。

地方の中小病院のできること

しかし、そこには大きな問題があると思います。大きな病院が提供できなかったり、提供するのが苦手とする医療サービス、そして開業医の先生が提供できなかったり苦手とする医療サービスは、誰が患者さんに提供するのでしょう。大きな病院と開業医の間を行き来するだけの患者さんはそのような医療サービスの存在すらも知らないということになります。患者さんにとって有用で提供されるのが可能である医療サービスを、患者さんは受けられないということになります。そして、その受けられなかった医療サービスが存在することに患者さんは少しも気付きません。

このことは患者さんや開業医、そして大きな病院の三者のせいだけではありません。我々のような中小病院もこのことに気付いていないことが、さらに問題だと思います。中小病院の経営者や職員は“大病院信仰”ではなく、“いつかは自分たちが大病院になりたい信仰”とでもいうべき行動をし、迷走しているのが現実ではないかと思います。地方の中小病院は大きな病院が提供不可能だったり苦手としたりする医療サービスを自分で探し出し、それを中小病院自ら患者さんに提示し、その医療サービスを提供する。そして、患者さんにとって必要で有用であるけれども気が付いていない医療サービスを、患者さんに提示し、それを受けてもらう。経済学的な言い方だと「顧客を創造する」ということが必要だと思っています。

中小病院としての立ち位置を確立して、医療と経営の両方ともに成功を収めている病院は少ないですが、地方の中小病院でしかできない独自の医療サービスを患者さんに提示し、提供できるように今回の赴任先である小樽協会病院で模索し、良い方法を見つけ行動していこうと考えています。

次回からは、各論的な具体的な話を書こうと思います。