2017

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地域に根ざした育成重視の雇用体制 中小病院の役割その2

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
『地域医療・北海道』
社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院

ドクターズプラザ2017年11月号掲載

地域医療・北海道(29)

人材の流出という問題

地方では若い働き手が都会に流出しており、当院のような地方都市にある中小病院でも、人材が都会に流出しています。昔は田舎の病院の方が、給料が高かったり福利厚生が良かったりしました。また、地方と都会の教育に今ほどの格差がなく、田舎の中学から都会の高校に進学し、医療者になることも多かったので、近郊の町村出身の医療者を多く雇用できました。しかし、最近は教育の格差があり、都会の方が給料も高く福利厚生も充実しているため、田舎出身の医療者を雇用するのが難しくなってきています。

そして、現在の多くの地方中小病院は赤字で、給料は上がらず福利厚生のレベルも低く、人材が都会に流出し、さらに経営も悪化するという負の連鎖が起きています。多くの人にとって、生活環境、給料、福利厚生などが都会の病院の方が良いのですから、都会へ人材が流出していくのは当然です。高い資金力をバックに優秀な人材を集めるようなことは、地方の中小病院ではできません。また、ヘッドハンティングした病院職員が、成果をすぐに出せないこともあり、そのような場合はもともと勤めていた優秀な職員のモチベーションを著しく下げる諸刃の剣なのです。結果として新規に集めた人材、以前から勤めている優秀な人材、病院運営資金の三つを失うことになります。

地方中小病院でのあるべき人材確保とは

1. 青田買い。

地元の小中高大学と連携し、職業体験などを積極的に受け入れ、早いうちから医療職に興味を持ってもらいます。どうすれば医療者になれるか説明することも大事です。学校での感染対策、救急蘇生法の講習、学校職員に対する産業医的な関わり、PTAなど親御さん向けの健康相談や座談会などを通して、病院と学校の距離を短くすることが大切です。僕は、余市協会病院時代は幼稚園でも感染対策講習を行っていました。園児さんだって10年たてば中高生ですから、病院職員が身近な存在となって目指す職業の一つになることもあるかなという思いがありました。

 

2. 育成

都会と比べ、家庭の収入格差があるので、病院独自で奨学金を出すという考え方もあります。しかし、奨学金だけでは、釣った魚に餌をやらないのと同じで、仕事を続ける旨味がなければ都会に人材は流出します。そのためには育成が重要です。育成の柱は二つあります。

まずは人材全体の底上げです。職員に対し、成長できる環境をどう提供するのかを病院は具体的に示すことが大切です。例えば、都会よりも腰を据えて勉強できる環境を提供することです。地方の中小病院に都会から入職してくる職員は、都会の病院の競争から逃げて来た人材である可能性もあります。その新人を手厚く教育し、都会にいる彼らの同期に負けないような人材になってもらうことが必要です。自分をしっかり育ててくれる病院だという実感を職員が持てるようにします。

さらに、トップパフォーマーの育成を戦略的に行うことです。地方の中小病院の職員は、多くの場合最初からトップパフォーマーであるというわけではありません。仕事をしていく中で、病院が提供した教育成長環境では物足りないトップパフォーマーになる可能性のある職員が出てきます。その職員に対しては、横並びの教育や成長環境は不要です。さらに勉強できる環境、高度なことを経験できる環境をどんどん提供し、個別に手厚く戦略的で高度なレベルの育成をすることが必要です。詰め込み促成栽培的な教育も、トップパフォーマーにとっては有用な成長環境です。病院という組織は、特に最近は横並びの教育が大事だという傾向にあります。しかし、一般の会社組織ではそのような教育成長戦略だけでなく、トップパフォーマーの育成も重要な柱となっています。

 

3. ワークライフバランス

長く勤めてもらうにはどうしたら良いか。ワークライフバランスも重要です。長く勤めるには、その時々の職員が置かれている環境に合わせたワークライフバランスを考えなければなりません。例えば、バリバリ勤務できる時には急性期病棟で三交代勤務をしてもらい、子どもができたら一時的に常日勤や時短勤務にするなど、働き方を選択できるようにすることです。実際、そのような先輩方の働き方を見て、新人さんたちは将来の人生設計を今いる病院で描けるのか、考えています。

地方中小病院で大切なのは、完成された人材を確保するのではなく、育成重視の雇用体制だと考えます。手厚く育成されると病院に対する愛情が生まれると思います。僕としては都会の病院にはない育成をし、人材確保を重視する「育成の小樽協会病院」を目標としています。