2022

04/15

原発のお膝元の地方病院で起きていること

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
岩内協会病院 院長代理

~岩内協会病院の院長代理となって~

2021年の3月から小樽協会病院の常勤外科医と岩内協会病院の非常勤副院長を兼務していましたが、岩内協会病院の院長の退職に伴い、2022年1月1日より、小樽協会病院の常勤医ではなく、岩内協会病院院長代理として岩内協会病院の常勤医となりました。反対に、小樽協会病院では非常勤として勤務継続しています。以前は、週に1回の岩内勤務でしたが、現在は岩内にアパートを構え、岩内町をホームとして働き始めています。

海あり、山あり、地形的なバランスの良い岩内町

まずは、僕のホームとなった岩内町の紹介です。岩内町は北海道後志振興局内にある町です。岩内郡に属しています。後志振興局内でも西後志にあり、人口1万1千人程度の自治体です。ちなみに、観光地として有名な小樽市は北後志でニセコは南後志です。札幌市からは車で2時間程度、小樽市からは車で1時間10分程度の距離にあります。数年後には高速道路がすぐ近くまで延伸する予定で、札幌市からのアクセスは車で1時間程度になる可能性があります。東京なら札幌~岩内間は通勤圏です。岩内町は大型フェリーの港であった岩内港のある日本海、すぐ裏には、スキー場もある岩内岳を中心とした山があり、非常に地理的にバランスが取れています。僕の勤務している病院からであれば、朝4時に港へ釣りに行き、朝釣り後に通常勤務することや、半日勤務後に、車で10分程のスキー場で半日スキーを楽しんだ後、そのまま岩内温泉で汗を流して夕方には帰ってくることも容易です。全国的に有名なニセコ地区には車で30分、最近、ワイナリーやレストランなどで知名度が高くなってきている余市町と仁木町も車で30分の距離です。

働き方改革は医療現場の人手不足を招く!?

前回もコラムでも書きましましたが、岩内病院は北海道西後志(人口3万人)を医療圏とする172床の地方病院であり、急性期の患者を受け入れ入院加療する唯一の病院です。また、北海道唯一の泊原子力発電所が位置する泊村のいわゆる圏内唯一の急性期病院です。つまり、地方の急性期を担い、さらに、原子力災害にも対応しなければならない病院ということです。しかし、現実は厳しく、4月からは、常勤医4人 (外科1、内科2、小児科1)で診療をしなければなりません。また、看護師を含めた、医療職も慢性的に不足しています。例えば、去年1年で、リハビリ職員は3分の2の人数となっています。医師に関しては、周辺医師会の先生方の協力と、北海道大学消化器外科IIの医局の協力、同じ社会福祉法人の小樽協会病院の協力により、主に、当直業務をバックアップしてもらっています。ただし、今後は働き方改革により勤務時間の規則の厳格化が進めば、当直後の連続勤務などができなくなり、医師を含めた常勤の医療職の人数の確保が必須となってきます。つまり、このままの人数では、今後、業務の縮小を考えなくてはなりません。それは、働き方改革により、365日24時間地方の急性期治療を担うのが不可能になることを意味します。

今現在も、通常診療で、整形疾患を含めた外傷を常に診療できる体制ではありません。今年の1月から院長代理となり、泊原子力災害に対する会議に複数回参加しています。また、原子力発電所の産業医でもあり、産業医としても、労災の範疇である原子力災害についてもいろいろ相談を受けています。災害発生後の病院搬送までのシステムは、いろいろ構築されていることが分かってきました。しかし、搬送された病院(岩内協会病院)では、通常でも外傷に対する診療体制が整っていません。通常診療で出来ていないことを災害発生時に行うことはもちろん不可能です。原子力災害の医療を担う病院の医療体制をしっかり担保することなしに、原子力災害医療のシステム構築はあり得ません。運ぶことばかり頑張って、搬送先の病院が医療を提供できないことには目をつぶっているのが、今の厳しい現実です。

今後の課題

北海道電力と北海道の自治体(北海道、周辺市町村)、そして電力供給される側の北海道産業界は、エネルギー政策の大事なピースとして、原子力災害医療の要である岩内協会病院の医療資源の確保をしていかなければならないと考えます。電気を作るなら、電気を使うなら、原子力災害の医療を提供できるようにしなければなりません。人的な医療資源の充実には、常勤の医療職を増やすしかありません。お金はもちろんですが、お金を積んでも(給料を高く設定しても)、医療職は集まってきません。そういう中で、どうにかして、常勤の医療職の確保を早急にしなければなりません。電力会社、自治体(北海道や周辺市町村)、北海道産業界にはその責務があると考えます。