2015

07/16

医薬分業

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長

小黒先生の薬の話Q&A(32)

医療費が増大する中で重要視されるかかりつけ薬局

薬局の役割

Q1 病院にかかると薬局で薬をもらうように言われることが多いけれど、病院内で薬をもらえるところもあります。そもそもどうして調剤薬局ができたのでしょうか?

A1

病院や医院で診察を受けて処方箋をもらい、薬局で薬を調剤してもらうことを「医薬分業」と言います。現在のような医薬分業のかたちは1995年頃から制度化されて始まりました。当時は薬漬けの医療が問題となっていましたが、その原因の一つに、病院が医薬品の在庫を持つことがあるのではないかと言われていました。薬局が在庫負担をすることで、医師は在庫の有無を気にすることなく必要な薬剤を必要な数量だけ処方するようになれるのではないかということです。

分業の効果はそれだけではありません。薬局は処方箋に書かれている薬剤が個々の患者にとって適正であるか判断し、他に服用している薬との飲み合わせや、副作用歴などをチェックしながら、患者が安全に薬を服用できるように指導します。

薬剤師の仕事は、医師の処方が適正か判断する重要な役割を担っているのですが、患者から見ると非常に分かりにくく、ただ薬を渡しているだけのように見られがちです。最近では薬局に対するそのような批判も多く、分業の真価が問われていると言っても良いでしょう。薬剤師の仕事は薬という物を扱う仕事ですが、本当は物ではなく薬を使用する患者に対する仕事なのです。薬剤師自身もそのような仕事であることをもっと示してゆく必要があると言えるでしょう。

薬の値段

Q2 同じ薬でも薬局でもらう方が値段が高く、病院でもらう場合の2.5倍というのは本当ですか? また薬局よって値段が変わるというのも本当でしょうか?

A2

同じ薬でも、もらう場所によって値段が異なることがあります。様々な管理料から成り立っています。病院で薬をもらった場合、基本料や管理料は病院の医療費に含まれてきますので、調剤料のみとなります。また調剤料も薬局より安く設定されています。

調剤料や管理料はどこの薬局でも同じですが、基本料は薬局によって異なってきます。基本料は病院の初診料や再診料のようなもので、病院同様に薬局の機能によって異なっているのです。在庫している医薬品数、後発医薬品の使用状況、在宅医療に関わっているか、多くの医療機関からの処方箋を受けて地域に必要とされているか、24 時間対応をしているかなどが評価されて、基本料に加算されています。薬局の基本料は最も安いところと最も高いところでは、1割の自己負担では70円程度、3割負担の方で210円程度の差が出てきます。さらにジェネリック医薬品の使用の有無によって薬剤費が上下し、医療費が高いところや安いところが出てくるでしょう。

医薬品の値段は薬価基準という公定価格が決められておりますので、どこで薬をもらっても変わりません。高い薬の場合には、基本料などの差は小さく感じるかもしれませんが、風邪薬など安い薬の場合にはテレビなどで報道されているように、病院でもらうよりも薬局でもらう方が2倍以上になってしまうことがあるでしょう。

医療費は中央社会保険医療協議会で決められており、2年に一度見直されています。次回の改定は2017年4月ですが、現在はそれに向けて協議が行われております。高齢化が進み、医療費が増大する中で、医薬分業の効果も検証されるとともに、国民がかかりつけ薬局を持つことも重要視されて、薬局の役割はさらに大きくなって行くと思われます。

 

 

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