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医療法人化のメリット・デメリット

医療法

竹内 千佳
行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。
ドクターズプラザ2019年1月号掲載

医療法(9)

法人化にあたり気を付けるべき点とは

個人で診療所を開設していたドクターが法人化する場合、一般的には節税効果が大きいといわれています。しかし、いわゆる「法人なり」に関して、医療法人は株式会社等と異なり、法人化したことでこれまでより厳しい行政監督に服することとなります。そこで、第3回では、法人化に当たってのメリット、デメリットや認可基準について見ていきます。

⒈医療法人化のメリット

医療法人という個人とは別の法主体が、医療機関の開設者となるので、診療所経営に必要な債務関係は医療法人に帰属することになります。つまり、経営に関する負債等の責任を個人が負う必要がなくなります。そのため、これまでより積極的な設備投資や資金調達をすることが可能となります。また、ドクターへの診療報酬を法人からの給与として計上することで、給与所得控除を受けることができます。さらに、家族を法人の理事に加えることで、家族への役員報酬を支払うことも可能です。個人課税から法人課税に変わることで最高税率が下がるので、大きな節税効果が図れます。

加えて、世代交代を行う場合には、法人化しておくことで容易に医療機関を引き継ぐことが可能となります。最近は、このような承継目的で法人化するケースも増えています。その他法人化によって、全国に分院を展開したり、介護事業所を開設する等の事業拡大に利用することも広く用いられています。

⒉医療法人化のデメリット

法人化のデメリットとして、管理運営上の煩雑さが挙げられます。医療法人は非営利法人であり、また、医療制度が国民の保健衛生を担うため、常に行政庁の監督権限に服しています。例えば、設立をする際には、主たる事務所の所在地の都道府県知事から、設立認可を受けることが必要です。また、運営の場面では、年に一度の事業報告の提出が義務付けられています。他にも理事長の変更や開設する施設の変更等がある場合には、定款変更の認可を受けることが必要となります。これまで、保健所から保健衛生上の監督を受けるだけだったのに対して、法人化するとそれに加えて都道府県から法人運営上の監督が入ることになります。また、法人であるため、社会保険や厚生年金への加入義務が生じることが挙げられます。

最後に、現在の医療法では持分なし医療法人の設立しかできません。法人の社員は持分を持っていないため、解散時や退社時に、法人から持分を返還してもらうことはできません。この点、基金拠出型医療法人の場合には、基金として出資した額のみは返還されます。

⒊医療法人化の認可基準

医療法人の認可基準は、大きく人的基準と財産的基準に分かれています。

まず、人的基準として、社員は原則3名以上で、社員の中から理事を選任します。出資をしなくても社員となることができ、一人一議決権を持ちます。社員となる者は、自然人に限られ、18歳以上であることが必要です。理事は、理事長を含めて3名以上(認可を受ければ例外可)、理事長は医師又は歯科医師であることが必要です。理事長が他の医療法人と兼務することは、不適当だとされています。また、医療法人が開設する医療機関の管理者は、必ず理事に就任しなくてはなりません。監事は1人以上必要で、医療法人の理事や職員と兼任することはできません。また、理事の親族や出資社員、顧問税理士、顧問弁護士等は就任できません。

次に、財産的基準として、拠出(出資)財産の確定、運転資金の確保、医療機関不動産の永続的な確保、債務の引き継ぎが必要です。個人診療所で使用してきた医療機器等は、原則として資産として承継されます。運転資金は原則、年間支出予算の2カ月分の運転資金が必要となり、現預金や預貯金、医業未収金等の換金性が高いもので算出されます。また、安定した医療提供のため、医療機関の土地・建物は原則法人所有であるか、もしくは長期かつ確実な賃貸借契約に基づくことが必要となります。債務の引き継ぎについては、個人診療所を開設する際、金融機関から借り受けた債務や医療機器のリース契約等は、債権者の承諾の下で法人に承継されます。しかし、運転資金や消耗品等の取得費は負債として承継できません。

以上が基本的な認可基準となりますが、各都道府県によって異なる指導がされることがあります。法人化の際は、予め管轄の都道府県にご相談ください。

 

ドクターズプラザ2019年1月号掲載

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