2018

01/15

医療法人制度

  • 医療法

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竹内 千佳
『医療法』
行政書士。成城大学非常勤講師。
スピカ総合法務事務所・所長。
医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。

ドクターズプラザ2018年1月号掲載

連載 医療法(5)

はじめに

第5回は、医療法人制度についてご紹介します。現在、日本の医療法人は全国で53,000法人(※1)あります。医療法人とは、「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団」(医療法39条1項)のことです。社団とは人の集まりを、財団とは財産の集まりを指します。医療法人財団は、全国で375法人と全体の0.1%に満たないため、ここでは医療法人社団を中心にご説明します。

医療法人の特徴

医療法人の最大の特徴として非営利性が挙げられます。非営利とは、収益活動によって得た利益を社員に分配しないことを言います。医療法人は、剰余金の配当を禁止している(医療法54条)ので、非営利法人です。法律上「社員」とは、社団の構成員のことを指します。株式会社で言えば株主に該当します。日常用語における社員は、法人の従業員にすぎず、ここでの「社員」には該当しません。また、医療機関は当然、医療行為の提供によって診療収入を得ることができます(※2)。非営利性とは、法人が得た利益を法人の構成員である社員に分配しないことを言います。つまり、医療法人の社員は、株式会社の株主と異なり、法人に余剰金があってもその分配を請求することはできません。

医療法人の機関

法人は法的概念であるので、人の集まりである社団を実際に動かす人たち(=機関)が必要です。医療法人社団は、社員総会、理事、理事会、監事によって構成されています(医療法46条の2第1項)。まず、社員総会は、社員によって構成される合議体で、社団における最高意思決定機関です。社員は出資の有無に関係なく一人一議決権を持ち、社員総会において理事の選解任、定款変更、解散、合併、分割等、法人の重要な意思決定を行います。社員の員数について医療法上の規定はありませんが、社員は合議体の一員であることから、原則3名以上とされています。平成27年医療法の改正を受けて出された厚生労働省医政局長通知によれば、社団たる医療法人の社員には、自然人だけではなく営利を目的としない法人もなることができるとされました。

次に、理事会は医療法人社団における業務執行を執り行う意思決定機関であり、理事全員で構成されます。医療法人社団には、役員として原則3名以上の理事と1名以上の監事を置く必要があります(※3)。理事会の職務は、医療法人の業務執行の決定、理事の職務執行の監督、理事長の選出及び解職です。最後に、監事は、医療法人の業務、財産を監査し、毎会計年度監査報告をする等、主に法人の監査を行います。監事の選任は、社員総会によってなされます。

行政上の手続き

医療法人は非営利法人であり、また、医療制度が国民の保健衛生を担うため、常に行政庁の監督権限に服しています。例えば、設立をする際には、主務官庁から設立認可を受けることが必要ですし、運営の場面では年に一度事業報告の提出が義務付けられています。他にも理事長の変更等がある場合に定款変更認可や、解散する場合に解散認可が必要となります。認可とは、主務官庁の裁量はなく、法律の定める要件を具備している場合に与えられるものです。その意味で、主務官庁の裁量を前提とした許可よりも要件が緩やかであると考えられています。

しかし、実務上多くの通達行政が行われており、必ずしも容易に認可が出されるものではありません。医療法人を運営される際には、行政庁と協議の上、無理のない事業計画を設定することが大切です。また、認可申請は複雑で多くの提出資料の準備が必要となります。主務官庁によって、必要となる資料が異なることもありますので、適宜専門家のアドバイスを受けながら進めるとよいでしょう。

 

※1 厚生労働省「医療法人数の推移」(平成29年3月31日現在数)。
※2 ただし、社会医療法人を除く医療法人は収益事業を行うことはできない。医療行為による診療報酬は、医療法人の本来業務である。
※3 ただし、都道府県知事の認可を受けた場合には、一人又は二人の理事を置けば足りるとされている(医療法46条の5第1項但書)。

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