2018
06/10
医療機関の開設の手続き
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医療法
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行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。
ドクターズプラザ2018年5月号掲載
医療法(7)
本シリーズでは、医療法が定める開設の許可・届出等の手続きや、医療機関が運営していく上での留意点、法人化の際の認可基準について、全3回でご紹介します。シリーズ初回の今回は、医療機関の開設について見ていきましょう。ご開業時には、様々な書類を諸官庁に提出する必要があります。大きく分けて、①保健所への届出・申請(医療法7、8条)、②厚生局への申請(健康保険法65条1項)、③税務署への届出・申請があります。また、従業員を雇用する場合には、社会保険事務所、労働基準監督署及び公共職業安定所への届出も必要となります。本稿では、このうち①及び②を取り上げます。
Contents
①保健所への届出・申請
開設に当たっては、開設した日から10日以内に、医療機関の所在地を所管する保健所に開設届の提出を行います(医療法8条)。ここでの開設した日とは、実際に診療を開始できる状態を指します。開設する医療機関が病院の場合や医療法人の場合には、これに先立って、開設許可申請を取得しておかなければなりません(医療法7条1項)。なお、臨床研修修了の登録を受けた者でなければ、医療機関の管理者となることができません(医療法7条1項、10条)。
この開設届を提出する前に、事前の相談が必要となります。特に、医療施設を新たに建築する場合には、施工の前に相談し、構造設備上の不備がないかを確認しておくことが重要です。既に工事が終わってしまっている段階で、構造設備上の不備が指摘された場合には改修が必要となり、その分の負担を負うだけでなく、予定の開業日に開設ができなくなります。建設会社と相談の上、進めていくと良いでしょう。
開設に当たっては、実地検査が行われます。検査日は事前に決定し、指定した日時に、検査担当官が2名1組で検査に訪れます。検査の際には、開設者又は管理者の立ち合いが必要となります。このとき、法律上の要件を満たしているかどうかを確認し、質問を求めることがあります。実地検査が終了すると、数日後に開設届の副本が交付されます。交付された副本は大切に保管しましょう。なお、エックス線装置を使用する場合には、別途、診療用エックス線装置備付届とエックス線の実地検査が必要となります。
②厚生局への申請
保険診療を行うためには、医療機関の所在する地域を管轄する地方厚生局都道府県事務所に、保健医療機関指定申請をする必要があります。
例えば、東京都に医療機関を開設する場合は、関東甲信越厚生局東京事務所に提出します。この指定がなされると、指定医療機関コードが発行されます。当該コードは、保険診療の際に使用するものです。
この指定申請は、毎月1回、1日に指定が行われることになっています。申請書の提出は、各事務所によって異なります。例えば、愛知県の場合には毎月15日、石川県の場合には毎月20日です。注意したいのは、この指定申請は、前述した保健所への開設届を提出した後でないと申請できない点です。指定申請書には、開設届の副本の写しを添付する必要があるためです。できれば、保健所の開設届の際の事前相談と併せて、地方厚生局への事前相談も行っておくとよいでしょう。
また、基本診療科の施設基準等に係る届出書・特掲診療料の施設基準に係る届出書の提出も必要となります。診療行為の中には、保険医療機関が一定の人員や設備を満たす必要があり、その旨を地方厚生局に届け出て初めて、点数を算定できるものが存在します。全ての診療に関して所定の点数を算定できるようにするために、指定申請と併せて、事前相談した上で提出するとよいでしょう。
開設時に必要な申請