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医療機関の信頼に関わる医療安全管理体制

医療法

竹 内 千 佳
行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。
ドクターズプラザ2020年9月号掲載

医療法(14)

はじめに

病院等の管理者は、医療法上、医療安全管理体制の構築が義務付けられています。管理体制が不十分な場合、医療機関の信頼低下による患者数減少が生じ、最終的に医療訴訟を提起されることにもなりかねません。今回は、医院経営の上でも重要となる医療安全管理体制について見ていきます。

それぞれの医療機関に適した体制づくりで医院経営を円滑に

⒈医療法の規定

医療法は、病院等の管理者に、医療事故の報告、医療事故調査の実施、医療安全確保指針の策定、従業者に対する研修の実施をはじめとする医療安全確保措置を求めています(6条の12)。これを受けて、医療法施行規則が、医療安全確保措置について、下記のように定めています(1条の11第1項)。

①医療に係る安全管理のための指針を整備すること
②医療に係る安全管理のための委員会を開催すること
③医療に係る安全管理のための職員研修を実施すること
④医療機関内における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策を講ずること

※特定機能病院、臨床研究中核病院には、別途規定あり(施行規則9条の23、9条の25)。
※なお、入院基本料の算定に当たっては、医療安全管理体制の整備が義務付けられています。

以下では、主だった事項について、規則および通達(「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について」医政発第033001号)による規定の概要をまとめておきます。

⒉安全管理委員会の設置(無床診療所は適用除外)

①安全管理委員会の管理および運営に関する規定が定められていること
②各部門の安全管理のための責任者等で構成すること
③重要な検討内容について、管理者への報告をすること
④重大な問題発生時には、速やかに発生原因を分析し、改善策の立案および実施並びに従業者への周知を図ること
⑤安全管理委員会で立案された改善策の実施状況について、必要に応じて調査、見直しを行うこと
⑥安全管理委員会を月1回程度開催し、重大な問題が発生した場合には適宜開催すること

⒊安全研修会の義務化(無床診療所は、他施設の研修受講で代用可)

①当該病院等の具体的事例等を取り上げ、職種横断的に行うものであることが望ましい
②当該病院等全体に共通する安全管理に関する内容について、年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催する
③研修の実施内容について記録する

⒋院内感染防止対策

院内感染対策のための指針は、次の事項を文書化したものであり、院内感染対策委員会の議を経て策定および変更するものであるとともに、従業者へ周知徹底することとされています。

•院内感染対策に関する基本的考え方
•院内感染対策のための委員会その他の当該病院等の組織に関する基本的事項
•院内感染対策のための従業者に対する研修に関する基本方針
•感染症の発生状況の報告に関する基本指針
•院内感染発生時の対応に関する基本指針
•患者等に対する当該指針の閲覧に関する基本指針
•その他の当該病院における院内感染対策の推進のために必要な基本方針

なお、院内感染対策のための委員会の設置は、無床診療所の場合、適用除外となります。また、従業者に対する院内感染対策のための研修は、無床診療所の場合には、他施設の研修を受講することで代用ができます。いずれも年2回程度の定期的な開催が求められています。

⒌医療安全管理体制不備のリスク

近年、医療過誤に加えて、院内感染をはじめとする医療安全管理体制の不備が重大な医療事故として認識されてきています。医療事故や院内感染が発生した場合、保健所からの改善命令や行政処分がされます。また、患者からの医療訴訟が提起されるおそれがあります。こうした状況になってしまうと、悪評判による患者数の減少や従業者の退職等、医院経営に大きな影響を与えます。患者や従業者の身体を守るためにも、医院経営を円滑に行うためにも、医療安全管理体制の構築は、とても重要なものです。それぞれの医療機関に適した安全管理体制をつくり、従業者への周知徹底や適宜の見直しを行うことで、よりよい医療体制の充実を図ってください。

 

ドクターズプラザ2020年9月号掲載

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