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医療廃棄物

医療法

竹内 千佳
行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。
ドクターズプラザ2021年1月号掲載

医療法(15)

はじめに

医療機関から排出される廃棄物には、紙くず類、プラスチックなどの一般的なものから、注射針、血液や体液を含むガーゼや臓器に至るまでさまざまなものがあります。こうした廃棄物は、適正に分別され、処理されることで、安全な運用が行われています。しかし、こうした医療廃棄物が不法投棄されることがあり、防止対策の必要性が高まっています。

また、糖尿病に用いるインスリンなどのように、注射薬を自ら家庭で注射する治療法が普及している一方で、注射に用いられた使用済み注射器・注射針が一般廃棄物と共に廃棄され、回収作業員の針刺し事故が増加するなどの問題も生じています。最近では、特にコロナやインフルエンザの流行に伴い、感染のリスクのある廃棄物を適正に処理することが、私たち一人ひとりに求められています。そこで、今号では、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」(図1)について解説したいと思います。

図1 廃棄物の分類

⒈廃棄物に関する法令の定め

わが国では、1971年に廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)が制定され、廃棄物を「一般廃棄物」と「産業廃棄物」とに区分して定めています。「産業廃棄物」は、事業活動に伴って排出される燃え殻、汚泥、廃油、廃アルカリ、廃プラスチック類等の20種類があります。「一般廃棄物」は、産業廃棄物以外の廃棄物を指します。その後、1992年に廃棄物処理法の一部改正により、特別管理廃棄物制度が導入されました。「特別管理廃棄物」とは、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物のことを言い、その処理にあたって特に注意を要するものとして区分されました。「特別管理廃棄物」は、「特別管理一般廃棄物」と「特別管理産業廃棄物」に分かれます。

⒉排出事業者責任

「一般廃棄物」は市区町村がその処理の責任を持つのに対して、「産業廃棄物」は排出事業者が自ら処理し、その責任を負うことが原則とされています(産業廃棄物法3 条1項)。これを「排出者責任の原則」と言います。このような責任は、汚染者負担の原則から派生する責任の一つで、廃棄物の処理に伴う環境への負荷の原因はその廃棄物の排出者にあることから、排出者が廃棄物の処理に伴う環境負荷低減の責任を負うことが合理的であると考えられることによります。

⒊医療廃棄物とは

いわゆる医療廃棄物と呼ばれるものは通称で、法令上は「医療関係機関等で医療行為に伴って排出される廃棄物」のことを指します。医療機関等から排出される廃棄物は、産業廃棄物と一般廃棄物に分かれます。このうち、人が感染し、もしくは感染する恐れのある病原体が含まれ、もしくは付着している廃棄物またはこれらの恐れがある廃棄物については、感染性廃棄物として処理することとされています。感染性廃棄物は、「特別管理廃棄物」に含まれ、「感染性産業廃棄物」と「感染性一般廃棄物」とに区分されます。これらの区分は、あくまで法律上の形式的な区分であり、実際の医療現場では、この両者を区分して廃棄をするのではなく、廃棄する医療廃棄物が感染性か、非感染性かを判断し、感染性と判断したものを感染性廃棄物として処理しています。

⒋感染性の判断

感染性の判断にあたっては、環境省「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」を参照に、3つのステップ(図2)で判断します。ステップ1〜3のいずれかに該当すれば、感染性廃棄物となります。感染性廃棄物と判断された場合、当該廃棄物を収納する容器は、密閉できること、収納しやすいこと、損傷しにくいことが求められています(廃棄物処理法施行規則第1条の11第1〜3号、同1条の11の2)。また、感染性廃棄物を取り扱う者への注意喚起のため、感染性廃棄物の形状が分かるように、バイオハザードマーク(図3)を使用し、それぞれの形状に適した梱包容器を使用します。

図2 感染性廃棄物の判断フロー

⒌処理の仕方

感染性廃棄物の処理にあたっては、自ら施設内で処理する場合と処理を委託する場合に分けられます。施設内処理で、焼却または溶融設備を使用する場合には、都道府県知事の設置許可が必要となることがあります。また、廃棄物処理にあたって条例の規制がある場合には、その遵守も必要となります。外部に委託する場合には、適法な許可を受けている処理業者に委託する必要があります。廃棄物の処理は、廃棄物を収集・運搬する「収集運搬業者」と、収集した廃棄物を処理する「処分業者」とに分かれており、両者と個別に契約することが必要です。両者を同一業者が兼ねている場合を除き、一方のみの契約は法令違反となります。

感染性廃棄物の処理にあたっては、感染性産業廃棄物の許可を取得している「収集運搬業者」および「処理業者」との2つの契約が必要です。該当する業者の選択にあたっては、行政庁や関係団体が検索システムを公開しています(表1)。

契約にあたっては、許可証の添付が必須となるほか、契約書に含めなくてはいけない必要事項が定められています。モデル契約書(※1)が提示されていますので、参照するとよいでしょう。また、契約書には5年間の保存義務が課せられています。契約後、実際に処理を依頼する場合には、収集運搬業者に産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付する必要があります。マニフェストには、収集、運搬、中間処分、最終処分といった過程を経過するごとに処理業者から送付され、自身の控えと一致する交付したマニフェストが全て戻ってくることで、依頼した医療廃棄物が適正に処理されたことが確認できる仕組みになっています。このマニフェストにも5年間の保存義務が課せられています。また、医療機関等は、1年間のマニフェスト交付の状況を監督庁に提出する義務があります。

表1 産業廃棄物処理業者検索システム
環境省 産業廃棄物処理業者情報検索システム(リンク)

(公財)産業廃棄物処理事業振興財団 産廃情報ネット情報開示支援システム(リンク)

東京都 産業廃棄物処理業者検索システム(リンク)

おわりに

このように、感染リスクの高い医療廃棄物を適正に処理する運用体制が構築されています。平成30年にはマニフェストの虚偽記載等に関する罰則が強化されました。産業廃棄物として医療廃棄物を排出する医療機関、運搬・処理をする収集運搬業者、処分業者のいずれもが高い注意義務をもって、最後まで責任を果たすことが求められています。

一方、近年では、在宅医療を排出源とする一般医療廃棄物の不法投棄が増加傾向にあります。医療系廃棄物の運搬・処理体制を持つ地方自治体は少なく、患者から医療機関へ廃棄物を返して、医療機関が処理にあたる体制がほとんどです。中には、こうしたルールすら定められていない地方自治体も存在します。一般廃棄物についても、医療廃棄物をはじめとする感染リスクのある廃棄物については、統一したルールを定める必要性が高まっています。

※1 東京都環境局ウェブサイト「産業廃棄物処理委託モデル契約書」(リンク)

ドクターズプラザ2021年1月号掲載

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