2017

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医療広告規制

  • 医療法

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竹内 千佳
『医療法』
行政書士。成城大学非常勤講師。
スピカ総合法務事務所・所長。
医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。

ドクタープラザ2017年11月号掲載

連載 医療法(4) 医療機能情報提供制度

広告で注意すべきこととは

第4回では、医療広告規制についてご紹介します。医療は、人の生命身体に関わる極めて専門性の高いサービスであることから、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難です。そのため、医療広告に関しては、「医療広告ガイドライン」「医療機関ホームページガイドライン」を設けて、一定の規制を行っています。

 

1. 広告の対象と規制内容

広告とは、以下の三つ(表1)の要件を全て満たす場合を言います。医療広告は、法令で広告可能とされている項目を除いて、原則禁止する「ポジティブリスト方式」が採用されていました。平成18年の医療法改正において、客観性・正確性が確保される事項については、できる限り広く広告事項とすることが認められることとなりました。これにより、現在では「ポジティブリスト方式」を維持しつつ、広告できる事柄を一定の性質を持った項目ごとにまとめて「〜に関する事項」のように規制する「包括規定方式」が採られています。

 

【広告可能な事項 医療法6条の5】

①医師又は歯科医師である旨
②診療科名
③病院又は診療所の名称、電話番号、所在地、管理者の氏名
④診療にもしくは診療時間又は予約診療の実施の有無
⑤法令に基づき一定の医療を担う指定を受けた病院若しくは診療所又は医師若しくは歯科医師である場合、その旨
⑥地域医療連携推進法人の参加病院等である場合には、その旨
⑦入院設備の有無、病床数、医療従事者の員数、その他施設・設備等に関する事項
⑧医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴、所定の基準に適合した団体による専門性に関する認定を受けた者等
⑨患者や家族からの相談・医療安全確保・個人情報適正取扱いのための措置、その他管理・運営に関する事項
⑩紹介することのできる他の病院等の名称、施設・設備の共同利用状況、その他連携に関する事項
⑪診療録の提供に関する事項等
⑫当該病院又は診療所において提供される医療の内容
⑬平均入院日数、在宅・外来・入院患者数、手術件数、分娩件数、平均病床利用率、セカンドオピニオン実績等
⑭健康保険病院、船員保険病院、国民健康保険病院等である旨、健康診査・保険指導・健康相談・予防接種の実施等

 

2. 禁止されている広告

以上のように、医療法上広告可能とされた事項に関して以外は、原則として広告できません。また、下記の事項については、広告することが禁止されています。

❶広告可能とされていない事項の広告
❷虚偽広告

例えば、「絶対安全な手術」は医学上証明できないため、このような表現は虚偽広告に当たります。
❸比較広告
他の医療機関との比較はできません。例えば、「№1」「最高」等は他との比較の表現となるため比較広告として禁止されています。
❹誇大広告
提供する医療や設備の内容等について、事実を不当に誇張する表現はできません。
❺客観的事実であることが証明できない内容の広告
例えば、患者や医療従事者の主観による広告は禁止されています。
❻公序良俗に反する内容の広告
「命に関わるため今すぐ受診」等リスクを過度に強調することは禁止されています。
❼その他、品位を損ねる内容や他の法令、他の法令に関する広告ガイドラインに反する内容の広告等

例えば、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)等があります。
これらの禁止広告をした場合、立ち入り検査や広告の中止、内容の是正の命令等、処分、及び罰則の対象となり得ます。

近年、とりわけ美容医療サービスによる国民生活センター(消費者庁所管)への相談が増加しています。(*1)医療広告は、患者の診療選択の自由を手助けする一方で、不適切な情報によって患者が被害を受ける危険をはらんでいます。一定の規制ルールを知ることで、患者にとって有益な情報を広告する機会が確保されることが望ましいでしょう。

(*1)独立行政法人国民生活センター参照

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