2015
01/17
冬の嘔吐下痢症
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薬
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株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長
ドクターズプラザ2015年1月号掲載
小黒先生の薬の話Q&A(29)
抗生物質は効果がなく、対症療法で体力の回復を
対症療法
Q1 家族がノロウイルスにかかってしまいました。先生からは整腸剤しか薬が出ていないのですが、抗生物質は服用しなくてよいのでしょうか?
A1
嘔吐や下痢を主な症状とする胃腸炎には、ウイルスが原因となるものと、細菌が原因となるものがありますが、冬に流行するものの多くはウイルスが原因となっているものです。代表的なものにノロウイルス、ロタウイルスがあります。ノロウイルスもロタウイルスも、患者様の年齢によっては保険適応で検査してウイルスを特定することができますが、医師が確定診断の必要性を判断した場合や、集団食中毒と思われる際に行われるくらいで、通常は全身症状から診断されます。「嘔吐下痢症」や「お腹の風邪」と言われるようなものも含めて、ウイルスによって起こる胃腸炎の症状はどれも似ており、嘔吐、下痢、発熱です。ロタウイルスは乳幼児などの子供に多く、白〜黄白色の便になります。いずれもウイルスが原因となるので抗生物質は効果がありません。解熱剤、整腸剤と吐き気止めなどの対症療法となります。
水分補給
Q2 子供が嘔吐下痢症と言われて水分を摂るように言われましたが、飲んでもすぐに吐いてしまいます。飲まないほうがいいのではないでしょうか?
A2
嘔吐下痢症を含むウイルス性の胃腸炎では、脱水の予防は症状が悪化しないために重要となります。一度にたくさん飲んでしまうと、胃腸に負担がかかり嘔吐や下痢を繰り返してしまうので、少量ずつこまめに摂るようにするのがよいでしょう。小さなお子様ではスプーン一匙ずつくらい、大人ならコップ数センチくらい飲んでみて、30分〜1時間くらいしても吐かなければもう一度、というように様子を見ながら摂るようにしてください。水分は経口補水液やイオン飲料が効率よく吸収されるのでおすすめです。市販のものもありますが、ご家庭でも水1ℓに塩3g(小さじ2分の1)、砂糖40g(大さじ4と2分の1)を溶かして作ることができます。
食事は腸の粘膜が回復するまで消化の良いものを摂るようにしてください。柑橘類を多量に摂ると下痢や吐き気が更新してしまうことがありますので避けた方が良いでしょう。
多くの場合は2〜3日で症状が改善してくるのですが、乳幼児や高齢者では脱水が原因で重篤な症状になってしまうことがあり、点滴が必要となる場合もあります。早めに医師に受診してください。また、3歳未満のお子様で熱もなく嘔吐だけを繰り返している場合には、腸重積などウイルス性胃腸炎以外の病気の疑いもありますので注意してください。
感染予防
Q3 ノロウイルスにうつらないようにするにはどうすればよいですか?
A3
ノロウイルスの感染経路として牡蠣がありますが、ノロウイルスを含む嘔吐下痢症の感染拡大は吐物や便の処理によるものが大きいと思われます。吐物や便には多くのウイルスが含まれており、処理しきれなかったウイルスは乾燥して舞い上がり、周囲の人の口から入って感染してしまいます。特にノロウイルスやロタウイルスは少ないウイルスでも感染してしまいますから、ウイルスを封じ込めることが大切です。
アルコールはノロウイルスに対して殺菌効果が少なく、塩素系の消毒液が有効です。吐物に新聞紙やペーパータオルをかぶせて、上から0.1%の消毒液(ペットボトル500㎖の水+家庭用塩素系漂白剤キャップ2杯)を振りかけ、1分以上置いてから吐物とともにビニール袋に入れて固く結んで捨てます。お部屋の換気も十分にしてください。また、調理器具などは、0.02%の消毒液(ペットボトル500㎖の水+家庭用塩素系漂白剤キャップ半杯)で消毒してください。
インフルエンザと同様、手洗いとうがいをよくすることも大切です。一度感染すれば再び同じウイルスに感染することはありませんが、嘔吐下痢症にも様々なウイルスがあることから繰り返し感染する可能性もありますので注意してください。