menu

介護Uターンという「お宝」人材

介護

高室 成幸
ケアタウン総合研究所・代表
ドクターズプラザ2018年5月号掲載

介護の潮流(1)

はじめに

ここ数年、「働き方」を見直す風潮が高まっています。ブラック企業で常習化した「36協定」を歪曲した「ノー残業代」に注目が集まるだけでなく、そもそもの「働き方」の在り方を問う声が大きくなっているからです。その代表格が「育児中の働き方」。しかし、ここにきて中年・壮年の「中途退職」を引き起こしている「介護離職」が注目されています。この解決のために厚労省が声を上げているのが「両立支援」。つまり「子育てしながら〜、介護しながら〜」働けるスタイル(通称:ながら育児、ながら介護)を目指すものです。

介護離職はなぜ唐突なのか

ここ10年、介護を理由に退職せざるを得ない介護離職の人が増えています。平成24年9月までの5年間に家族の介護や看護を理由に離職や転職をした人は48万7千人です。8割が女性(約39万人)、2割が男性(約19万人)。深刻なことは5割強の人は親が介護状態になってから1年以内に離職しているという事実です(2014年「仕事と介護の両立と介護離職」明治安田生活福祉研究所調査)。離職・退職の最大のきっかけは「自分以外に親を介護する人がいない」というもの。今後は兄弟姉妹数の減少や未婚化・非婚化、離婚の増加により、介護の担い手が減少し、「自分しかいない」状況になる人はさらに増えることが懸念されます。

では介護離職は職場にどのような影響を与えているでしょう。その第1が「唐突さ」です。40代〜50代のベテランが突然の退職となるのはかなり迷惑なコト。そうなってしまう理由は「職場に知られたくない」ためにひた隠しにしてきたから。異動や転勤をきっかけに明らかになることも多いといいます。それ以外は周囲に知られることなく去るパターン。介護は子育てとは異り「よりタブー」な感覚になるようです。

「介護離職」防止だけでなく必要なのは「復帰できる仕組み」

介護離職とならないための対策は「育児介護休業法」で着実に進んでいますが、私が大切だと考えるのは「介護離職しても復職(復帰)できるシステム」づくりと考えます。全国の地域包括支援センターの研修会で介護Uターンを話題にすると異口同音に「とても多いですね」と返ってきます。多くは遠距離介護で頑張ってきた中年期の息子・娘たちが、早期退職やリストラによる失職、離婚、それに交通費や体力も限界などが引き金になっているようです。

30年ほど前から地方活性化のために市町村は若者に「田舎暮らし」や「Iターン」を呼び掛けてきました。しかし、少子化でリアリティーはなくなるばかり。でもかつて故郷を巣立った若者が50代〜60代となって「遠距離介護」をはじめたり、「介護Uターン」してきたわけですから、この層を逃す手はないのではないでしょうか。ただUターンしたくても深刻なのは「仕事がない」こと。失職したままでは経済的困窮というもう一つの危機が襲うことになります。親の年金頼りの生活が始まり、仕事がなければ他にすることはありません。それでは介護ストレスの真っただ中に置かれることになります。

「介護Uターン組」は、高品質な「人材のお宝」

新しい貧困層を生まないために市町村だけでなく、地元の企業や団体が総がかりで介護Uターンしてきた中高年に「働き場づくり」「仕事づくり」をすることが求められています。働けば市町村に税金が集まり、働けば地域の景気が活性化します。ちなみにサラリーマンといえど30年近くの仕事経験で営業から製造・運送まで実に多様なノウハウを身に付けている人がいるものです。四大卒、大学院卒もいますので、「高品質なお宝人材」ともいえます。介護・福祉、農業・林業はいずこも人材不足。超ウエルカムなのではないでしょうか。介護Uターン層の再就職支援が地方の福祉・介護人材の補充と地域経済の新たな起爆剤になるという発想はいかがでしょう。

作成:高室 成幸

ドクターズプラザ2018年5月号掲載

記事一覧へ