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介護を一人で抱え込むことで起きる悲劇

介護

NPO法人となりのかいご
代表理事 川内 潤
ウェブサイト限定記事

隣(となり)の介護(2)

介護で虐待をしてしまう6つのステップ

2008年に市民団体として立ち上げた「となりのかいご」は、2014年にはNPO法人化し、「家族を大切に思い一生懸命介護するからこそ虐待してしまうプロセスを断ち切る」をミッションに今日まで活動を続けています。そこで、今回は一人で介護を抱え込んでしまい大切な家族に手を上げてしまった人たちを介護の現場で働きながら垣間見て感じたことを、私なりにまとめた6つのステップで紹介します。

ステップ1 要介護状態となった家族と直面し、元気だった時との落差に苦しむ

例えば認知症の家族が、身を尽くしたケアに対して暴言を吐かれることもあるでしょう。それでも、「ヘルパーに来てもらうのは嫌だ」という親の言葉をうのみにして、家族だからとひたむきに誰にも頼らずに一人で抱え込むと介護する側の心が壊れてしまいます。

ステップ2 仕事を辞めざるを得なくなる

介護生活が長くなるほど、介護状態が進行し、介護の手間もどんどん増えていきます。ですが、一人で介護を抱え込むとそれに気付く余裕がありません。仕事をしていれば、休まざるを得ない時が出てきます。そのうちに職場に居づらくなり、介護離職を選択することになるのです。

ステップ3 経済的安定を失う

介護離職により収入が断たれてしまいます。介護をしている親の年金や貯金を生活費に充てても、終わりの見えない介護生活で減っていく預金額に精神的不安を感じながら介護に向き合わなくてはならなくなります。

ステップ4 介護を人に頼みにくくなる

収入減を失い蓄えが減っていくと、「大変だけど、頑張れば何とかなる」と1~3割の負担で利用することができる公的な介護保険による介護サービスの利用でさえも、利用をためらうようになります。

ステップ5 社会との関係がなくなってしまう

公的な介護サービスなどを利用すれば、それを提供してくれるスタッフとのつながりができます。彼らと会話することでストレスが軽減することもあるでしょう。ですが、一人で介護を抱え込むと、社会との関係がどんどん希薄になっていき、介護が必要な家族との密室の関係が出来上がってしまいます。

ステップ6 介護ストレスが蓄積して虐待につながってしまう

密室の関係の中で、「この家族の介護を私がずっとやらなくてはならない」と思い込むようになり、ストレスが蓄積し、その矛先が介護する人に向かい虐待に繋がってしまうこともあるのです。

上手に介護と向き合うために

一方で家族の介護をしながらでも仕事も続け、上手に介護と向き合っている方もたくさんいらっしゃいます。では、上手に介護と向き合える人と、この6つのステップを踏んで虐待という悲しい結果に陥ってしまった人たちの間にはどんな違いがあるのでしょうか。それは、早い段階から、決して一人で抱え込まず、会社や兄弟・親戚にも相談し、公的な機関(地域包括支援センターなど)を上手に活用しながら介護をしているのです。

特に介護の入口の段階では、介護・福祉に関する公的な相談機関である「地域包括支援センター」の存在が重要となってきます。「地域包括支援センター」とは、全国にある行政が運営もしくは委託した公的な相談機関で、福祉や高齢者のさまざまな相談に対応する専門家が常駐しているセンターです。ぜひ、この機会にインターネットで「地域包括支援センター(スペース)高齢の家族が住んでいる住所」で検索して、自身の親の住まいを管轄する「地域包括支援センター」の場所を知っておいてください(「あんしんケアセンター」「お年寄りセンター」「ケア24」「地域ケアプラザ」などと呼ぶ地域や場合があります)。

この「地域包括支援センター」は、介護予防に関する相談も可能です。電話だけでの相談もできますので、心配なことがあればまずは電話をしてみるのも良いでしょう。遠距離に暮らす親でも、親の住んでいる地域の地域包括支援センターに電話相談することで、センターの職員が自宅を訪問して様子を見てくれることなどもあります。公的な介護サービスを利用するために必要となる介護保険の「代理申請」も行います。

そもそも家族に介護が必要になったら、「身内の介護は、家族がやって当たり前」と思われる方もいらっしゃると思います。ですが、介護の現場で働き、国家資格も含めて介護・福祉に関する資格を有する私でさえも、もし、自分の家族に介護が必要になったら、さまざまなプロの手を借りようと思っています。どうか、介護を一人で抱え込まずに、周りの手も借りながら上手に介護と向き合っていただければと思います。

 

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