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今さら聞けない!? 「認知症」のこと

介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご 代表理事 
ドクターズプラザ2020年1月号掲載

隣(となり)の介護(5)

「認知症」を取り巻く現状

今回は“知らない”では済まされない!? 「認知症」についてお伝えさせていただければと思います。なぜ、今、改めて「認知症」なのか!? それは、これまでは「介護が必要になる主な原因」として、脳卒中などの「脳血管疾患」が多くの割合を占めていましたが、以下のデータからも分かるように、ここ最近は「認知症」がその数を上回るようになりました。

厚生労働省が行った「国民生活基礎調査」〈平成28年(注)熊本県を除いたものである。〉の「65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要になった主な原因」で、男女を合わせた総数では「認知症」の割合が18.7%となり、「脳血管疾患(脳卒中)」の15.1%を上回りました。さらに原因が分かっている中(「その他・不明・不詳」24.9%)では、一番多い割合を占めているのです。ほかにも厚生労働省の推計では、2025年には65歳以上高齢者の認知症患者は700万人。認知症予備軍である軽度認知障害の400万人を加えると、その数は高齢者の3人に1人に及ぶそうです。つまり、もう「知らない」とは、言っていられない現実がそこにあるのです。

「認知症」の基礎知識

誤解されている方も多いように思いますが……
•「認知症」≠“病名”ではない
•「認知症」=その原因となる病気により引き起こされる認知機能の低下や日常生活に支障を来す症状のこと

★「認知症」の原因となる病気

•アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)
ゆっくり症状が進む
女性に多い
•血管性認知症(脳梗塞など)
変動があり、まだらボケのような状態になる
生活習慣病に起因することが多く、男性に多い
•レビー小体型認知症
リアルな幻視が起きる
•前頭側頭型認知症
万引きや怒鳴るなど反社会的な行動をとる
•水頭症による認知症
このケースのみ手術で治る可能性が大きい など

一口に認知症といっても、その原因となる病気により症状も異なるため、それぞれに合わせた対応が求められます。残念ながら今の医療では「認知症」を発症すると、そのほとんどは完治することができません。一方で早期発見・治療により、薬や介護サービスなどでその進行を遅らせることができるケースもあるのです。

「認知症」チェックリスト

そこで、「認知症」が疑われる家族がいる場合は、以下のチェックリストに当てはまるものがないか、確認をしてみましょう。

【認知症を疑うチェックリスト】

□異様に甘いものを好む、濃い味を好む(味覚が鈍くなる)
□機械の操作が分からない
□人との会話を避ける
□人に話を合わせることができずトラブルが起きる
□お風呂のシャンプーやリンスが減っていない(入浴しても髪の毛を洗っていない)
□ティッシュペーパーやトイレットペーパーを切らしたまま
□財布の中に小銭がギッシリ
□小銭を押し入れに隠している
□カレンダーが1カ月以上めくられていない
□待ち合わせや約束そのものを忘れる
□車で出掛けたのにバスで帰宅する
□自宅近所で迷子になる

※本人の元々の性格で以前から起きているのであれば問題はありません。

1つでも当てはまるものがあれば、早めに「物忘れ外来」などで診断を受けることをおすすめします。本人に自覚がない場合や、逆に自覚があるからこそ現実を知りたくなくて診断を拒否された場合は、今後の関係性に影響が出ないように「強引」ではなく、以下の方法などでの受診を試みてください。

•健康診断から認知症の診断につなげてもらう
•その家族のかかりつけ医に先回りで相談して、紹介状を書いてもらう
•ご近所さんなどの友人に病院へ誘ってもらう
•自分の病院の付き添いをお願いし、一緒に検査をする

ほかに「地域包括支援センター」に相談してみるのもよいでしょう。

「認知症」を必要以上に恐れない

診断により「認知症」と分かっても、先に挙げたように「原因となる病気」により対応が異なり、家族は「元気だったころの姿」と比較してしまうため、家族だけで介護をすることは困難を極めます。だからこそ、介護のプロに頼りながらの介護生活が重要になってくるのです。さまざまな支援により、「認知症」になっても、これまでと同じような暮らしを続けている方をたくさん知っています。また、家族が直接的な介護を行うことで疲弊していくよりも、介護サービスの手配などの体制づくりをしっかり行っていけば、社会的問題にもなっている「介護離職」を免れることができます。この機会に「認知症」に対する正しい知識や対応方法を知り、どうか「認知症」を必要以上に恐れないでいただければと思っております。

ドクターズプラザ2020年1月号掲載

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