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丁寧な対応が次の取材につながる

広報室のお仕事

佐 藤 弘 恵
社会福祉法人恩賜財団済生会支部東京都済生会東京都済生会中央病院 広報室 室長
ドクターズプラザ2020年9月号

広報室のお仕事(3)

メディア対応が評判をも左右する

「病院広報室の仕事」は、「企業広報室の仕事」とどこが違うのだろうか……、そのようなことをいろいろと考えてみると、やることは何にも変わらないなと思うのです。ステークホルダーの捉え方が企業とは少し違うくらいで、「診療」や「診療以外の医療サービス」を分かりやすく伝えることが何より重要だと考えています。そのためにあらゆる媒体を利用して情報発信をするのが広報担当者の役割です。

さて、今回は、情報発信する機会として大いに活用している、「取材対応」についてお話ししたいと思います。一言で「取材」と言ってもいろいろなパターンがあります。皆さんが想像しやすいのは、テレビや雑誌のインタビュー取材でしょうか? メディアの方々に来ていただく取材もあれば、広報担当者が取材して原稿を書くパターンもあります。当院は広報室が設置されるまでは、取材はそれぞれ職員個人が受け取材元の担当者と調整していたのが通常でした。ところがこれだと病院として統一しておかねばならない病院概要情報に間違いが生じたり、誤解を招く表現を見落としたまま公表されたり、気付かないうちに病院名(ブランド)に傷がつくといったことが起こります。病院の意図しない誤った情報が、ひとたび世の中に公表されてしまうと訂正するのはとても困難です。ですから広報担当者は病院のブランド維持のためにもしっかりとメディアとの窓口対応をすべきだと思います。ここでは取材元が存在する「取材対応」について書きます。

依頼を受けてから取材に至るまで

現在当院は、取材・撮影協力の対応については、病院ウェブサイト上から申し込みを受けています。こちらには取材の対象者や目的、企画内容も記載していただくので、おおよその内容は把握できますし、そこでお受けすべきかどうかの目安を立てます。数ある医療機関の中から当院を選び声を掛けていただいているのですから、病院としても可能な限り対応できるようにしたいところです。しかし中にはお断りするケースもあります。特に報道や情報番組の担当者からのご依頼は急ぎのケースが多く、「今日この後、○○時から電話で取材をお願いしたい」とか、「今、対応できる人はいるか?」といったリクエストがかなりの頻度であります。世間を騒がす医療系のニュースがあれば、確かに急いでコメント取材をしたいという気持ちは分かりますが、当院のような総合病院になると、多忙を極める医師やそのほかの医療者の時間を急に調整するのは至難の業です。こういったケースは、取材元には申し訳ないですがお断りせざるを得ないですね。

取材の依頼を受けてからまず行うことは、取材対象者が誰なのか確認し該当者への打診です。その際には企画内容や、日程候補、掲載媒体などを取材元にヒアリングし、取材内容について対象者に正しく情報を伝えます。そうして取材対象者から受諾確認が取れたら、院内経営役員にも稟議書で報告と確認を取ります。これも広報担当者の重要な仕事です。どの職員がどういった内容で病院名を背負って情報発信するのかについては、病院ブランドを維持する上でも重要なことですから、経営幹部にも知っておいていただく必要があります。このように準備段階では確認調整作業が重要になりますので、自ずと取材までには時間が必要になります。

取材当日から媒体が世に出るまで

さて、いよいよ取材当日です。インタビュー取材の場合は必ず事前にインタビュー項目をいただき、取材対象者と共有しておきます。取材内容にもよりますが、大体が最新の診療や医療情報に関わる話なので、取材対象者にも事前準備が必要なケースが多いからです。これは、当日スムーズに取材を運ぶためにも重要です。また、テレビカメラでの映像撮りや写真撮影がある取材の場合、取材対象者の身だしなみチェックと写る環境のチェックは事前にしっかり行うようにしています。その人が一番整った状態で写真に納まっていただきたいだけでなく、職場がきれいであるということも病院にとっては重要なPRポイントになりますので、手を抜かないよう心掛けています。

取材が終わったら今度は映像や原稿のチェックです。取材には必ず広報担当者も同席するため、どのような内容の取材だったかは理解しています。確認用に送られてくる映像や原稿は、取材対象者と広報担当者でダブルチェックを行います。特に本人プロフィールや病院紹介部分などは、意外に誤りがあるので、念入りに確認するようにしています。そうして出来上がった媒体が世に公開されると広報担当者としてもうれしい限りです。

このようなプロセスを経て、一つの取材が完了します。広報担当者が取材を通して、取材元の方々と面識を持ち、より丁寧な対応ができると必ず次にまた取材の依頼をいただくことができます。こちらから広告費用をかけることなく、さまざまな取材を通して病院の情報発信をすることができれば、広告費換算額はきっとかなりのものになるでしょう。そのため広報担当者は、いつでも対応良く、段取りも素早く、取材元にも取材対象者にも気持ちよく仕事をしていただけるようアレンジする役割があるなと感じます。しかし現実には思うようにいかないことも多く、修行不足を反省する日々です。

 

ドクターズプラザ2020年9月号

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